二次創作:1ヶ月記念日

  上薗純の家に住み始めて、1ヶ月。
 醜態を晒し、どうにでもなれと爆発してしまった夜。雨降って地固まるといったところか、純との関係を、純への気持ちを、改めて見つめ直す契機にはなった。
 馴れ馴れしく触れてきたり、ベッドに誘ったり、純の行動のすべてが私に性的な下心があるものだと思ってしまったのは私の勘違いだったのか、私の純への気持ちが見せる幻覚だったのか。
 ただ、純が古印葵の漫画を好きだということと、私が純の漫画を嫌いではないことだけは確かだと知った。

 夕食の席についた食卓。いつもと少し様子が違うことに気づく。
 いつもより、おかずの量が多い……気がする。多い、というよりは、豪華? あと、なにか……。
 違和感の正体がつかめないまま、食事をするために茶碗と箸を手に取る。視線を上げると、食事時にはいつもニコニコと嬉しそうな純の表情が、いつもの“腹を満たせる食事が楽しい”とは違う雰囲気を纏っていることに気づく。その手に持つ茶碗はいつも使っているものと違って真新しい、ような……?
 何が違うのか、と自身の手の中の茶碗を見る。純の手の中の茶碗によく似た、色の違う、これまた真新しい茶碗だと気づいた。
 手に持つ感触が、いつもの茶碗よりも馴染む感じがする。
「矢晴が私の家に来て、ちょうど1ヶ月だろ。だから記念に、茶碗と箸を新しくしたんだ。それは矢晴専用だよ」
――私専用の、食器。
 特に使う食器が決められていたわけではないこれまでと、専用の食器が用意されたこれからと。この家に私の居場所が確約されたような、くすぐったい気持ちが湧き上がる。
「色違いのお揃いでね、少食の矢晴には小さいの、たくさん食べる私には大きいので、ちょうどいいなと思って!」
 無邪気に笑う純の手にある茶碗は、手の大きさの違う私の持つ茶碗と見比べて、手の大きさに対する比率が同じように見えた。それは純の持つ茶碗が大きい、ということだ。
 身体のサイズや食べる量に合わせて食器の大きさを変えるのは、ごく普通のことだろう。でも、大きさの違うお揃いのご飯茶碗というのは……、世間一般では“夫婦茶碗”と言うんじゃないか……?
 意図せず加速する思考に、首の後ろが熱くなる感じがした。











着手:2022/10/16
第一稿:2022/10/17


コメント