好きとかわいい

 純は矢晴(古印葵)が好きなのだけど。

【第9話】では『好きな人が目の前で死にそうだったからあれこれ悩む暇がなかったんです』と、さらっと「好きな人」と矢晴のことを言い、『あなたの世界が好き けど描けとは言いません』と古印葵として描き出す世界を褒めていて。

【第12話】では『それに私は大きい家に好きな人を集めて一緒に暮らすのが夢なんだ!』と語るから、現在一緒に暮らしている矢晴は純の好きな人、だけど、やっぱりここの言葉は、「矢晴が好きだから一緒に暮らしたい」というよりは「一緒に暮らしたい好きな人たちのうちの一人が矢晴」というふうには聞こえてしまう。

【第13話】で『私は矢晴のフィルターが好きだよ』と言うのは、【第9話】の『あなたの世界が好き』と同じ部類で、矢晴の古印葵である部分にのみ、という感じもあるかしら。

案外、純は「好き」という言葉を使ってなかったな、と思った。

純は矢晴のことをかわいいと思っているんだけど。

【第3話】『先生は古印葵ってかわいい名前ですけど理由あったりします?』とペンネームすらかわいいと思っているらしく。

【第9話】の表紙では『かわいい顔して壁、床、窓、水回り、配管まで全部破壊の限りを尽くしてたのか…』と小悪魔チックな矢晴を想像してて。

【第13話】では、純が座ったことで傾いて寄りかかった矢晴に『あらかわいい』と思い。話し出して少し笑顔を見せた矢晴に『あ笑ってくれたかわいい』と思い。

数えてみると、「かわいい」という言葉もそんなに使ってなかったな……。

とはいえ、純は古印葵の描き出す世界(漫画)が好き、という気持ちが強いとはいえ、矢晴の外見(笑顔)もかわいくて好きで、矢晴の行動もかわいいんだろうなあと思う。そして、古印葵は矢晴の脳内フィルターであるから、古印葵=矢晴が好きになってると思うわけで。

庇護欲とか慈愛とか、実際のところ純の愛がどんな感じなのかは明示されてないけども、純が古印葵のファンってあたりは間違いなくガチファンだし。矢晴のこと「かわいい」って思ってくれてるし、矢晴に対する恋心を古印葵のファンである部分が抑え込んでたりする……? とか思い始めた。

授賞式で生身の古印葵見て漫画だけでなく生身にも恋しちゃって、でも彼女いたからって諦めて、ファンってだけでいようと思ってたら、死にかけててズタボロな生活してて、古印葵に死んでほしくない一心で助けて同居して、「彼女とは別れた」って矢晴の口から聞いた今、アタックチャンスではないのか、純!

とか、滾ってきちゃうんだけども、そもそも生身の古印葵に恋したかどうかも明らかにはされてなかったな……。私にはあの瞬間恋しちゃったよね!って思えるんだけども。


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