ブレるブレない

 「己」を構築するのに必要なのはブレない芯、というか自我とかいうやつなのかしら。と考えていて。

矢晴はすでにアイデンティティを捨ててプライドを捨てて自己肯定感を失っててうんちゃらもんちゃらのぐっちゃぐちゃ状態だから、芯だの自我だのなんだのいちばん大事なところが、今はない。

【第23話】で矢晴の言った『「己」フォルダの中に入れてた学習データが増えたり変わったりすれば』『己そのものが揺らぐことだってあるよ』というのはわからんでもないけれど、学習データによって成長したり変化したりは普通のことで、己の中心にある自我が纏うものによって道も変われば周囲も変わるとかはあるわけで。でも、たぶん矢晴が言ってる「己が揺らぐ」は「自我を保てなくなる」なんだろうなと思う。

矢晴はいろんなことで自我を保てなくなって、芯がブレてる状態かな、と思う。

対して、純は、矢晴の影響によって善良な方向へと変化し始めているけれども、芯はブレない。芯がブレないから自分の我儘を押し通せる。

純は矢晴の古印葵として発露してきた自我のエッセンスに強烈に惹かれてると思うんだけども。一番根っこのところは、純も矢晴も「漫画が好き」で共通してて、漫画が読みたい・漫画が描きたい気持ちは同じはずだけど、矢晴はあれやこれやと自分の好きで描いた漫画を否定されて読めなくなって描けなくなって……。純は憧れの作家と同じ雑誌にとがんばってデビューしたら憧れの作家がいなくなったという悲しい出来事がありながらも、連載することになって連載続けてて。

純はデビューして同じ雑誌だ〜って喜んだのも束の間で、目標としてた作家がいなくなったことでがっくりきて漫画が辛くなってもおかしくなさそうなんだけど……、人間に欲情しない性質の逃避先に漫画があるから漫画をやめるみたいな選択肢はそもそもないとは思うんだけど。どうだったんだろうな、当時の純の気持ちが知りたい。

プロット、ネームとやってるときは脳内物質ドバドバで気持ちいいけど、ペン入れとかめんどくさいとか言ってるのは、ネームまでは現実逃避できて楽しいけれど、ペン入れから先はただの作業になっちゃっててつまんない、みたいなことなのかしら。どうなんだろう。

とはいえ、ペン入れ作業はめんどいとか言ってても漫画を描くことは大好きで楽しいっていう芯の部分はブレないんだから大丈夫なのかな。


矢晴は芯は強い人だと思うんだけど、今はうつ病やらなんやら脳の病気で不安で怖くて否定されたくなくてとかのてんこもりが芯の土台をなくしててブレブレになってる感じじゃないかなーとか思う。

純が矢晴の有能さを教えてくれて土台固めてくれるんだろうと期待してるんだけど、売れっ子漫画家の純の存在自体が矢晴の芯を食い荒らして土台を崩している感じもあるから、どうなるんだろうな、このふたり! とワクワクしている。


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