欲望
【第14話】でちらっと出た純の漫画『シヴァ・アンバー3巻』の一節。
前半は、かつて矢晴が『似たような言葉で似たようなことを書いた覚えがある』らしく、後半は『後半の文章は違うな野心的で前向きに発展させた内容…』らしい。
材料が少なすぎるが、それだけを見ると、矢晴は「人間は欲深く、手近な幸福で満足しないで際限なく求めるけれど、青天井で届かない、手に入れることはできない」と言っている感じ。
それを純は、「手の届かない空(幸福)は人間の無限の可能性」と言っている感じになるのかな。『手が届く幸福は低い天井の狭隘な賜物だ』って言葉が難しいんだけど、「手近なところで妥協するな」と言っているような気はする。「もっと求めていいんだ」と言っているような気もする。
これが純の素直な気持ちなのか、漫画のキャラクターの言うことなのか、はちょっと気になる。
矢晴は純との暮らしの快適さと純への気持ちを【第12話】で『私の頭がお前なんかでいっぱいになったら』『寄生虫より浅ましくなるだろ』と、今よりもっと純を求める気持ちをどうにかなくしたい感じがあるんだけども、「欲を出す」ということに抵抗があるのかしらん? とは思える。
でも、純のことが恋愛的に好きになったけど純のほうは違ったら叶わないから、好きになりたくない、感情を寄せたくない、という感じもあり。現に純は“慈愛”とか言い出しよるから矢晴怒っちゃったし。
矢晴は特に大きな欲を出さず『正直に矮小なものでいたい』。『大人というのは働いて誰かに認められ対価を与えられている』から人並みの幸福を得るには社会的に活動できないといけない、みたいにも考えてそう。大きな欲望を持ったりとか欲を出したりするのを抑圧してる感じはするような……?
それは賞をとってB誌に移って漫画家としてダメにされた境遇を、「欲を出したからこうなった」と思って、ということではないんだなあ、と『シヴァ・アンバー3巻』の一節を見て思ったりする。それ以前に書かれたものだから。
もともと矢晴は、人間の欲望に対してネガティブに考えてる感じがある。それが『使命感から逃げたい人生だったし』にも関わってくるのかどうなのか。使命感から逃げたいのは、自由に生きたい、だろうと思うのだけども、それは自身の欲に忠実になににも縛られず自由に、かなあ? とは思えて。でも欲を出しちゃダメ、と思っているなら自由にも生きられそうにない……。ううん。
でもとりあえず、矢晴は人並みの幸福を得るには、現状の純に依存して生かされているという状態ではダメだと思っている気がする。
人並みってなんだよ? という気もするんだけども。
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