憧れと理想と

 純は古印葵に憧れてて、古印葵の作品を理想の漫画だと言う。だから、古印葵を生み出した矢晴への感情も憧れなんだろうな、という感じはする。とはいえ、顔がかわいいとかも思ってるから、やっぱり純は自覚してないだけで、矢晴に恋してると思うんだけども。


純は、父親とその友人の関係を、『心底……う』と言いかけて『幸せそうで』『憧れたんだ』と言い直し。

矢晴は、そんな純の言葉に『相手を思い通りに……理想の一部にしたかったって素直に言えよ』と言う。

純の『孤独じゃなくなる約束』ってば、純の話を聞く分には、「骨を拾うと約束したのに、拾わなかった、嘘つき」にも思えるし、「家族じゃないと拾えないけど、父親を安心させるために、約束した」にも思える。純は矢晴を安心させたいという思いから、『孤独じゃなくなる約束』を持ちかけたっぽいわけだから、純の認識では、父親の友人の言動は「安心させるための約束」ということになるのかな?

でもやっぱり果たされない約束はダメだと思うのよ、矢晴には。

矢晴はこの話を聞いたときには、ちょっと頭ぐるぐるしてて、話半分みたいなところもあったかもなあ、と思うんだけども、純の話からは、「父親とその友人の関係への憧れ」を「矢晴と純とで再現したい」みたいには聞こえてるのかな。

純の話しぶりだと、約束ができる相手なら誰でもいい、みたいには思えるから、「純の理想を再現するための相手役にされている」感じはする。

矢晴が大好きだから、安心させたい。と言っているわけでもない感じに聞こえるし、矢晴が大好きでずっと一緒にいたいから『死ぬまで孤独じゃなくなる約束』をしたい、という感じでも無さげに聞こえる。

だから、矢晴が『理想の一部にしたかったって素直に言えよ』って言っちゃうのもわからんでもない。「私じゃなくてもいいんじゃん! 誰でもいいんでしょ!」という叫びが聞こえそうな気がする。

純にとって、父親とその友人の関係は、実際、理想なのかどうか……、というと、純は自分を騙して「理想の関係である」と思い込んでるような気も、しちゃうんだけど。たぶん、その友人のことを「約束を守らない嘘つき」認定しちゃうと、父親のことを「死の間際でも友人に騙され続けた可哀想な人」という認識になっちゃうだろうから、そういうのは受け入れ難いんじゃないかな? と思える。

自分自身が矢晴と(それ以外の人とでも)、『死ぬまで孤独じゃなくなる約束』を果たして、一生仲良く一緒にいられれば、父親と友人の関係が良いものだったと証明できるし、自分自身の孤独も癒せる、という感じではあろうかな、と思うけども。

矢晴にとっては、「矢晴のことが好きだから」という理由じゃない、純の個人的な理想と事情に巻き込まれてるだけ、というのが我慢ならんのだろうなとは思える。

ただやっぱり、純は、矢晴と理想の関係になりたい、と思っているとは思うんだけど。一生、死ぬまで、死んでも、仲良くずっと一緒にいられる、理想。


純は絶対矢晴のことずっと大事にしてくれるからさー、身も心も委ねちゃいなよ、矢晴ー。


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