美醜

 外見的な美醜について、ちらっと考えてみる。

矢晴の外見は、ごく普通、平凡、みたいな雰囲気があるところに、目の下のクマやら痩せ細っての頬の痩け方だとか、人を信用できなくなってしまったがゆえなのかなんなのかの目つきの悪さなんかを考えると、お世辞にも良い面相をしているとはいい難く。

とはいえ、純には矢晴の笑顔はかわいく見えているらしいし、パーツは整っている形をしていて、かわいいし美人だしと惚れた欲目がえらいこと仕事する。こういう暗めな面相が好きな層にはクリーンヒットな感じもある。

純の外見は、高身長の美形のおしゃれさん。胡散臭い陽キャと言われるくらいだけども、明るく社交的。自分のことを美形と思っているのかどうかは謎なんだけど、美丈夫で大金持ちだから合コンなんかに参加しちゃったら欲深い女が群がりそうな感じはある。

これだけ顔がいいなら大学時代もモテたんじゃ……? とも思えたりするけど、子供時代から学生時代、デビュー前の顔が執拗に隠されているところから、これだけ顔がいい状態になったのは、売れっ子になってからでは疑惑を持ってしまう。中高あたりは太ってて女子にモテない感じでもありそうだし、純自身が他人に性的興味を持たないようなのだから、モテていても気づかないのかどうなのか。

矢晴は純の顔については笑顔に対して『優しい顔……』とは思うものの、美形だとかハンサムだとかは考えてなさそうな雰囲気があり、ふたりとも、相手の顔について世間一般の美醜で判断してない模様。

矢晴の感性は美しいものが好きそうだし、描き出す世界は美しいらしいし、純は古印葵の描き出す美しい世界が好きなのだから、ふたりとも美しいものが好きらしいし、ふたりが美しいと感じるものはかなり近いところにありそう。

そういった面では、ふたりとも同じ価値観をしていると思うんだけどなあ。

ただ、矢晴が美しいと感じたものに対して、純は「矢晴が美しいと言ったから」と妄信的にこれが美しいものだ、と思い込む状態なのなら、矢晴にとっては価値観の相違甚だしい状態ではあろうかな、と思える。

人の顔の造形に対して美醜で判断してなさそうな純と矢晴だけども、心の中や思考については、ふたりとも醜いことを嫌悪しているような感じはある。純がなにをもって自分のことを『醜い純』というのかもわからないし、矢晴が純に認めさせたかった『私達の醜さ』はなんなのかもわからないのだけども。

そこらへんは追々わかってくるのかしらん。


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