嫌なこと

 【第13話・後編】で矢晴が『嫌なことを何度も反芻してるとどんどん怖い記憶になるんです』と言うからには、【第7話】の後半部分の純の再訪は「嫌なこと」だったということに……?

「嫌なこと」がどんな種類に属するのかがわからないけども。

【第7話】の矢晴の記憶と【第13話・前編】の純の記憶とじゃ、相当の違いがあって、矢晴の記憶はすでに何度も反芻されたがゆえにかなり怖い記憶に塗り替えられたとしても、もともとの矢晴の「純の再訪時の体験」自体が、矢晴にとって「嫌なこと」だったということにかわりはないということにはなるのかな。

そもそも、純の第一印象は『優しい顔…』だったけども、四階に対する一件で、かなり怖い人間だとはわかっていて。ファンだと言われて褒められたけども自尊心はズタズタにされてて。そんなにいい印象はなかったけども、飲み屋で話した分では『身の上話とかつっこんでこなくてすごく気が楽だった』くらいに浮上してきたけども、翌朝、同居を迫ってきた純には、恐ろしい圧で迫られて恐怖を感じさせられてて。

たった1日で、上薗純の色んな面を見てるわけだけど。

会った翌日、部屋を掃除されてて『あのゴミ山の7割が酒って異常ですよ』とか『こんなところにいたら病気になりますよ』『あなたをこんなところから出したい』『なんであなたがこんな目に合わなきゃいけないのか』『納得できない』『とにかくここにいちゃダメだ』『じゃあここで死ぬんですか?』と、矢晴の現状・境遇を散々に言ってくるわけだし。

矢晴の現状、この環境を矢晴自身が嫌だったとしても、そこから抜け出す術を持ってなかったのに、前日会ったばかりの恵まれた人間に、そんなに散々に言われるのはキツイし、この時点で矢晴にとって純は「何も知らないくせに口だけ出してくるイヤなやつ」ではあったかなあ? とは思える。純は掃除するっていう行動も示してはいるけども、矢晴にとっては溜め込んでしまった恥の部分を漁られたみたいなものだと思うし。

泣いちゃって抱きしめられて、優しい言葉かけられたけど、最後に言われた言葉が怖すぎて。

こんな怖い思いしての翌日、ほとんど寝てない、なにも食べてない状態で、矢晴が純の話したことを正確に記憶できてるとも思えないけども、「また、純が来た」ってだけで「嫌なこと」だったのかもしれないなあ? とも思えるし、純に説得されて現状から助け出されたことも、「自分に優しくする人間が現れて救い出し、幸せをくれる」なんてことが現実に起こるわけがない、という思考からあんなふうにどんどん塗り替えていくのかな。そう思ってたら、後で元の環境に戻されても、「ああやっぱりあれは嘘だった」って安心できるもんなぁ。


とか考えてると、やっぱりあの振り向いた矢晴が見た純の顔と、それを見たときの矢晴の気持ちが知りたくて知りたくて! あと、あのシーンでの記憶のすり合わせの会話が見たい、聞きたい。いちいち突き合わせて訂正していったわけじゃない気もするんだけど。それやると、矢晴の言うことを否定し続ける会話になっちゃうし。

どんなだったんだろ。


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