fanatic
純の古印葵への執着を表現するのにちょうどいい言葉かなあ、と思った「fanatic」。
純は古印葵のファンってだけで。古印葵の作品に心掴まれてて、ただの純粋なファンってだけだったと思うんだけども。
執着してるのか? 執着ってなんだ? とか思ったりするけども、古印葵を好きで、忘れたくない、忘れない、と思っている気持ちは、執着かな。
ここまでの執着心が生まれたのは、古印葵がA誌に戻ってきて、古印葵らしくない連載作に狼狽して、古印葵の布教活動を始めたものの失敗して、自身の無力と古印葵を認めない世の中に絶望したから、だろうかな、とは思うのだけども。
「世の中が古印葵を認めなくても、私だけは!」みたいな気持ち。
【第13話・前編】の回想の『――と言うことはこの人の惨状を分かっているのは〈この世で私だけ〉?』『私がここから去ったら――干渉しなくなったら――』『この事実が〈存在しない〉ことになる?』というあたりの思考も、純の執着心に拍車をかけたかなーと思う。
「古印葵を助けたい」「古印葵を忘れたくない」「古印葵に生きててほしい」という古印葵ファンの欲望。古印葵を世に広めることには無力だったけども、古印葵である福田矢晴を物理的に助けることに対しては有り余るほどの力(財力)がある。
望海可純は古印葵がいなければA誌でデビューすることもなかった。今の望海可純が売れっ子漫画家になってるのは、古印葵がいたから。今、古印葵にそれを返す。くらい思っててもおかしくないし、【第6話】『私はあなたの前では「たかが」を渡さず口だけ出す偽物なんかにならない』というのは言い換えれば「あなたに対してだけは金も手も出す本物になる」みたいな感じになるか。
【第13話・後編】の『世界は変わらないけど』『世界が綺麗に見える時間はこれから増えていくよ』という言葉が矢晴に対してどう響くのかはわからないけども、純自身の実体験から生まれた、矢晴もそうなるようにという「矢晴への祈り」になるのかなあ、と考えてみたりもする。
「古印葵を認めない世の中を変えることはできなかったけど、今、矢晴がいることで私に見える世界は綺麗」といった感じの純の歪み。
同居1年後には、矢晴は漫画を描いてて、純の望み通り期待通りになってる気がするから純も矢晴も幸せになりそうなんだけども、もし、矢晴が本気で漫画を諦めると言い出したら純はどうするんだろうかなあ……と考えると、だんだんと怖い想像になっちゃうからちょっと思考が止まる。
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