正義感と道徳と

 純のこれまでの行動を振り返ると、正義感を振りかざし、道徳的であろうとしている感じがある。

【第22話】で矢晴が『もっとこう……正義感が過ぎて自分のやることに疑いを持たない印象だったよ』と言うように、編集部で古印葵を罵倒した四階をやりこめたことは、古印葵を助けなければ、守らなければ、といったところから出てきた正義感であろうし、純の謎の自信に裏打ちされて正当化されたものだったろうな、と思う。

正義感、で考えると、【第6話】の挿話から第4の壁を破壊して訴えかけてくるような一連の感情も、かなり納得できる。私があの挿話からの一連に拒絶反応が出るのも納得。

人命第一、が心から、というよりも、道徳的に、という感じも強くて。

【第17話】の純の脳内での『命よりも自分が正しいマンはここに立つな』とか、矢晴に立ち聞きされた【第19話】の『人の命より重い漫画ってこの世にないので……』とか。

【第20話】の『私が見離してあの人が死んだら私は世界に敗北する気がする』というあたり、一体何と勝負してるんだ、という気もするけれども、ここらへんは道徳と古印葵信者としてのなんじゃもんじゃが格闘している気がする。

ついでに、担当が純の言った『人命優先ですから漫画を忘れますよ』『どんなに気持ち良くても漫画は私しか救わない無能の紙屑だし』という言葉を大笑いしている時に『人として当たり前のことを言っただけなのにどうしてこの人は笑ってるんだ?』と疑問に思っているところがかわいい。担当が笑ってるのは純が「無能の紙屑」と言ったことに対してだけだから、ちゃんと寝た方がいい。

矢晴を助けたいのは古印葵だから、でしかないだろうけれど、人命を優先すべき、とか【第15話】の『同情だけで他人の腹や心は満ちない』という思いだとかは、純の正義感と道徳心から、口だけのニセモノじゃなく、行動するホンモノになりたいという思いでもって出てくるんだろうなあ、と思ったりする。


純の“慈愛”は慈愛じゃないし、純は博愛精神でもって矢晴に手を差し伸べたのではないし、純の基本はかなり利己的だったところを、矢晴と同居してからこっち対話を続ける中で変化してきている。のが、矢晴に好意的に受け取られていて、希望とまで言われているのが良かったな、純。

毎日古印葵浴びて古印葵に染まってるってだけかもしれないけれど。純の脳内ワードローブに古印葵の言葉がむっちゃ増えてる感じはとてもする。


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