哲学

 【売れうつ】の根底にあるのは「哲学」なのだろうかなあとぼんやり考える。

哲学自体は答えのない問いを考え続け思索し続けるみたいなものだろうけども、そうして考え続けることで思考が自由に広がる、みたいなものなのかな、と【第22話】の『君の話を聞いた後はすごく考える』『処理しきれない時もある』『けどその後すごく頭が自由で世界が美しいんだ』という純の台詞で表されているのかな? と思う。

哲学的思考をできるようになるには、良い哲学者と話すといいらしい。【売れうつ】では、矢晴が哲学者なのであろうな、と思う。

古印葵の作品も哲学的なのだろうし、純が寝室にニーチェの本を置いていたのも古印葵を理解するための哲学を理解するための……みたいに繋がっているんじゃないかと思う。

私には哲学の素養なんてものはありはしないのだけど。

「己とは」「人間とは」なんてのも哲学で考え続けるものなのだろうなと思うし、哲学の分野だっていうなら、答えが出るはずのないものなんだろうと思う。

ただまあ、矢晴が「己とは」と話したうちの半分は納得いくけど、半分は矢晴がこねくり回した「描かない理由」なんだから、どこまで信用していいものか、みたいな気分にはなる。

矢晴と純は、矢晴が教え導いて真理にたどり着く、というよりは、矢晴の話を聞いた純が己で考えて、己の真理に手を伸ばす、みたいな関係かなーと思えるようにはなってきた。

矢晴自身、見失った「自己」を見つける途上であるし。

矢晴の話を理解しようと思えるだけの知性が純にあることと、矢晴の話を余すことなく真剣に聞き続けたいと思える憧れが純にあることが、矢晴にとっては得難いものなのだから、大事にしてほしいなあ。

純は純で、矢晴の言うことを無条件で信じるみたいなところがあるようでない感じの、必要なところではそこそこ反論(というか説教)する感じが、矢晴にちょうどいいなと思う。


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