希望

 【第6話】で純と居酒屋でしたたかに酔っ払いながら話した映画の話で矢晴が『でも絶対助けてくれる主人公が…』『やっと手に入れた大金を盗まれたのに「たかが金」って言ってくれるなら…』『希望じゃぁないですか』と言っていて。たぶんこの話をしたことを矢晴は覚えていないのだけど、純はしっかり覚えている。

純は矢晴の希望になりたくて【第9話】で『〈たかが金〉じゃあないですか』と言っているんだろうけれど若干通じてない感じが切ない。

【第22話】で『あのお前が変わった事実は』『今の自分から変わりたい私にとって……たぶん』『かなり希望かも』と、純の変化に自分の希望を見出して。純は嬉しかっただろうなと思う。矢晴が純に良い影響を与えるように、純が矢晴に良い影響を与えている、と矢晴が言ったみたいに聞こえたかな?

【第23話】では、矢晴は『創作すればするほど嫌な時間が減るわけで創作そのものが人生の希望になる』と語るけれども、これはどこまで本心かわからない。そして、矢晴の語る絶望を裏返して『君の一番の希望は「面白いアイディアが浮かぶこと」ってわけだ だろ?』と純が言う。

『君の不安も希望も正体は同じものなんだ』と純の言葉は矢晴にどんな思いを抱かせたんだろうかな。すとんと腑に落ちる、とかあるかしらん?

矢晴は『面白いものが一生思い浮かばないままだったら私は死ぬまで無の人間になるから絶望してる』と矢晴の絶望について語るけれども、矢晴の絶望は面白いものを考え続けて死んだときにしか証明できない。本当に杞憂でしかない。

結局、矢晴は漫画のことを考え続けたい、けれど、面白いものが浮かばないかも、という不安でもって、考えることを拒絶してるから、なにも浮かばないから絶望、みたいなやらなきゃ結果の出ないことを、やらないでやらなかった結果だけを見てる。瓶の蓋を閉め続けるだけして、瓶の蓋が開かないって言ってる感じ。

変化した純が矢晴の希望になったように、純はアシスタントとして矢晴を雇って自立(収入を得る)への道を示しつつ、漫画家として再起させようとしてくれるのが、矢晴の未来を輝かせる希望だなあ、と思える。

望海可純ったら、ほんとに名前の通りに矢晴の希望の海なのね。


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