失敗

 【第23話】の矢晴の言う『描いても描いても否定される失敗を経験しすぎて「己」の中が否定で埋め尽くされてる』の、「失敗」って、矢晴の失敗ではないよなあ……と。

矢晴の最大の失敗は、B誌に行ったことだけど。それ以外に矢晴が人生で失敗したところは今のところ出てきてない。

矢晴自身の行為による失敗ではなくて、情勢が悪すぎての失敗であって矢晴は特段、悪かったところはない、という「失敗」だよなあ、この状態は、と思う。

B誌ったら、古印葵の漫画を評価してたんじゃなくて、とりあえず賞獲った作家を囲って、売れ線描かせて儲けよう、くらいだった気がするし。だから、古印葵の漫画の良し悪しや才能なんて関係なくて、B誌の意向に沿うものにならないから否定し続けてきたってわけで、ひどいのはB誌。

というのを、矢晴は認識してなくて、自分の漫画が面白くないから否定される、つまらないから否定される、どれだけ描いても面白いって言われないから自分には才能がない、って思うようになったんだよなあ、と思う。

B誌に行くなんていうことがなければ、A誌で安定してた気がするんだけど。

とはいえ、もともと「売れなきゃ」「連載とらなきゃ」って漫画家としての自分を追い込んでる感じはあるから、A誌で安定して読切を掲載し続ける、ってのも矢晴の野望なり願望なりに合致しなくて歯がゆい思い、みたいなのはあったかもなあ……って感じはする。

まあなんだ、矢晴は焦りすぎだよな、ってのがずっと。そんななのにB誌で2年とか気の長い……なんで……? 1年掲載がない時点で見切りつけてよかったくない? それこそ1本目流れた時点でA誌戻ってよかったくない?


ああ、でも、A誌での連載は、担当の言いなりで自分の漫画じゃないもの描いちゃったのは矢晴の失敗にはなるかなあ。

B誌では自分の漫画描いてたら担当やら編集側から否定され続け、A誌では担当の言う通りにしたら面白くないクソ漫画になっちゃって、と。周囲が悪いよ……?

矢晴のいうところの「己」についてはいまだ理解が及ばないんだけど、矢晴が築き上げてきた「己」をB誌が完膚なきってくらいまで壊して、A誌での連載で跡形もなくってくらい壊してきた、ってのはわかる。


真っ当な評価じゃないものに影響受けすぎて自分を見失ってる矢晴に、純がこれからどんだけ真っ当な評価を浴びせてくれるのかと思うととても楽しみだけど、純がどれだけ本気で褒めてもあのメンタルじゃなあ……と、先行きが心配。


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