価値
【第22話】で矢晴が母親との電話で『あんたにとって私はインチキ言っときゃいい程度の価値なんだろ!』と感情を昂らせていて。
性格が変わって怒りっぽくなった父親に殴られた、そのとき母親は助けてくれなかった、家族の思い出は特にない、というあたりで矢晴は両親に愛されているだとかの実感はほとんどないまま育ってきてて、家族にとって自分の存在が無価値だとか、殴ったり騙したりしてもいい“程度”と認識しちゃってるのかなあ、とは思う。
ただ、お母さんも事件からの逃避で縋って信じ込んじゃってる感じはあってインチキ言ってだまくらかそうって雰囲気ではないから、矢晴の余裕のなさとかいろいろ重なり過ぎだよなあ、みたいなところはある。子供だから無条件にお母さんが好き、みたいなところもあるのかもだけど、矢晴むっちゃお母さん好きだよなあ、と思ったりした。ただちょっと、お母さんにはできないことを母親だったらやってくれと期待してる部分が大きすぎな気もしたりした。余談。
で。
矢晴の思う自身の漫画家という価値も連載の失敗とか、それ以前にB誌での扱われ方とかから漫画を描くことが苦痛になってしまったりというあたりから、矢晴自身の価値がなくなったとも思っている感じはある。
純に大切に扱われてちょっと自己肯定感が上がったか優越感的に調子に乗ったか、みたいなところで純にとっての矢晴は「大勢のうちのひとり」と価値暴落を感じつつ、自分が無価値な人間だったと思い出してて、ここらへんで純の特別になりたい気持ちとかめっさ出てそうな雰囲気だけど、そもそも矢晴は純の特別なんだけどなーと思う。ほらもーずっと前から両想い。
純は誰かの特別になりたい気持ちが昔からある感じはするけど、自分の性質のために恋愛・性愛的な付き合いをする人を持てないし、持たないし。
中学時代っぽい自殺したクラスメートの挿話では、自分含めてメガネ君が心の内を喋る価値のない人間だった、と考えている感じがあるから、今回、矢晴が身の上話をしてくれたことで、純自身が矢晴が話をしてくれる価値があると認められた・特別になれたと大喜びしてるのかなあと思う。
矢晴の身の上話自体、なかなかにハードだし、人によっては“犯罪者の息子”ってことで差別的なり侮蔑的なりってなりそうなもんだから、矢晴自身も純に話していいものかと逡巡しつつ、話しても純は大丈夫、と意を決しているわけだから、純が矢晴に対して注いでいる愛情なりなんなりは、ちゃんと矢晴に届いているんだなあ、と安心する。
ただまあ、価値があるか・ないか、を判断基準にすると、有益だから付き合う・無益だから付き合わない、みたいな方向に進んでしまうだろうから、ふたりには価値がどうのってところを超越してほしいなあと思っている。から、この先のふたりがどうなるのかとワクワクしながら更新を待つ。
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