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信頼できない語り手

 「信用できない語り手」とも。 【売れうつ】は矢晴の一人称視点で語られ、3人称視点で描かれる。 矢晴自身がうつ病で妄想に苦しめられ、アルコール依存症もあり、アルコールと薬の影響で記憶が曖昧。現状、断酒を決意したことでアルコールという逃げ道も塞がれて、1日のうちまともな思考ができる時間も短い。 これまで矢晴が語ったことがすべて事実であるのか、なにもかも包み隠さず語っているのか、と考えると、物語はまだ序盤で、まだまだ語られていないことも多いと思うし、意図的に隠していることもあるような気がする。(望海可純の漫画についての矢晴の気持ちなんかは特に語られていない) 矢晴の語ることのすべてが事実である、とする証拠もないが、すべてが妄想ということもない。どこまでが事実でどこが妄想なのかはわからないし、何を語って、何を語っていないのかもわからない。 そしてまた、物語構成上、この時点では語らないことや、語らせないことなども考えると、物語の語り手である矢晴も漫画という形式で描いている作者も「信頼できない語り手」と言えるのかもしれない。 この場合の「信頼できない」は、「語り手から得られる情報について、すべてを鵜呑みにできるほどの信頼がない」ことであって、語り手の人間性が信頼できないということではない。 ミステリであれば、「どこが噓か」「隠しているのはなにか」ということを推理していくことになるのかと思うが、【売れうつ】はミステリではないから、語られたことをそのまま受け取り、後で覆されても「そうだったのか!」と楽しめるだろうし、覆されるような内容だったとしてもどこかで「これは…?」と疑問を持てるような描写が挟まれるはずなので、安心して読める。 作者が読者を騙して、語られても匂わせてもいないことをいきなり開示して「実はこうでしたー」と読者をあざ笑うような仕掛けにはならないだろうという点では、「信頼できる語り手」だと思っている。

■【売れうつ】の二次創作(8)(小説)

 矢晴のバイトがこうだったらいいなという、もしもの話の続きの続き。前回分のすぐ後の話。 前の話は、二次創作 (2) と、二次創作 (5) 。 ■

忘れる

 【第1話】『そしてみんなすぐに忘れる』『まあ漫画なんてただの娯楽だし』『私だって観て楽しんだのにタイトルを思いだせない映画が山ほどある そりゃそうだ』 年々、流行の消費ペースも早くなり、一瞬話題になってすぐに終わる、忘れられるということが多くなっているように思う。 古印葵の場合は、流行の消費とはまた違うのだけど。 短編集を2冊出して、小さな賞をとれて、多少は話題になって、とはいえ、そこまで人気が出たわけでもなく売れたわけでもなく。 その後、B誌に移ってしまって姿を消した状態になってしまっているから、露出がなければ忘れるのは容易いことで。忘れ去られるに足る状況を自ら招いてしまったように思う。 せっかく小さいとは言え賞を獲った作家を手放してしまったA誌もどうかとは思うのよ? むしろ古印葵を売り出すのにこれからじゃない? 賞獲って、それを看板にして待望の連載開始! みたいに持って行きたかったところじゃないの? と思うのだけど。 その当時のA誌編集部の古印葵への対応を知りたい……。作家の意志が固いから泣く泣く手放したのかどうか……。そしてまた、古印葵がなぜにB誌に移ったのか、移りたくなったのかの理由が知りたい。

コンコルドの誤謬

 「サンクコストの呪縛」とも。 矢晴がB誌に移ってから、2年半も掲載に至らず、それでもしがみついてしまったこと。これまでにかけた時間(コスト)が回収不可能なほどであるけども、なんらかの成果をあげなければ、とサンクコストの呪縛になったんだろうなと思う。 今ちょっと二次創作で書いてて、こういうのをなんか言葉があったはずだったけどなんだっけ? と調べたところで。 B誌の編集もほんとひどいなあ……と思う。 「来年、4月に掲載するつもりで準備しましょう」ということは、年内12月だったとして、そこから2ヵ月修正すすめて翌年2月くらい? で、やっぱり全ボツ。 「コミックスの印刷費がけっこうかかるから、原稿料まけてくれ」ってのは、コミックスにするという前提があってのことのはずなのに「コミックスにするとは言ってない」 「描いてもらったやつ確定って言ったけどあれ全ボツね」とか。 ほんとひどい仕打ちしかされてなくて。それでもいつか掲載される、漫画家として作品を発表できる、しなければここまで我慢した意味がない、としがみついちゃったんだろうなあ……。 ただ、2年半もしがみついちゃったのはいろいろ辛いところだけども、そこでA誌に戻るという決断ができたのはすごいなと、思う。そっからもかなり厳しい展開ではあったけども。ちょっと戻ってよかったのか悪かったのかわからん状態にはなったけども。 A誌に戻ったから純と出会えることになったんだからよかったんだ、たぶん。 矢晴自身、「コストに見合った成果を出さなければ」っていうのがありそうな? 純の家に住んで世話されてて【第10話】『こんなに贅沢な暮らしを送っているのに治らないなんてもう絶望的じゃないか』と考えてるわけで。そんな考えは捨ててくれたらいいのだが。

たかが金

 【第6話】で描かれた居酒屋での映画の話。酒に酔い饒舌になった矢晴が『でも絶対助けてくれる主人公が…』『やっと手に入れた大金を盗まれたのに「たかが金」って言ってくれるなら…』『希望じゃぁないですか』と語る。 矢晴自身は、その「たかが金」がなくなって悲惨な人生になっているわけで。 純は『金さえあれば解決できるものは多い』『「たかが金」で解決するものがこの世には五万とある』『私はあなたの前では「たかが」を渡さず口だけ出す偽物なんかにならない』と、矢晴と同居して矢晴の世話をすると決めた。 【第9話】で純は矢晴を助けたことに対して『好きな人が目の前で死にそうだったからあれこれ悩む暇がなかったんです』『気負わないでください』『たかが金じゃあないですか』と語る。 純としては、矢晴=古印葵を助けるためなら、どれだけでも金が出せる。売れっ子漫画家になったことで、金持ちになってるから、「金という力」だけは潤沢にある。それが売れなかった漫画家の矢晴に劣等感を抱かせる原因にはなるのだけど、純としては矢晴の「希望」になりたいんだろうなと、思う。 今のところ、矢晴のために使ったお金は「矢晴の引越し代と、住んでたアパートの原状回復費用(けっこうな額)」「矢晴の生活費(衣食住)」で、将来的に矢晴が純の家を出ることを決めたらその時の引越し費用と初期費用は純が負担するはずではあるけど、矢晴が純と幸せになるなら、仲睦まじく一緒に暮らしていくんじゃないかなあ? と思う。矢晴が漫画家として復帰してお金稼げるようになったら食費とかは矢晴も出しそうだけど。 矢晴の住んでたアパートをそのまま借りておくほうが、費用的には出費が少なくて、矢晴が純の家を出るとなったときに、元のアパートにそのまま戻れる、みたいな感じでよかったんでは? と考えんでもないけども、純の家を出て元のアパートにってのも辛そうな感じはあるし、純としては「戻れる場所」は持っておきたくなかったかもな、とは思える。 もし、矢晴のアパートを清掃だけして荷物運びだして空っぽの状態でも持っていたら、矢晴は純の家を飛び出して酒を買ってアパートに逃げ込んでたかもなあ……とは思える。なにもない部屋でお酒飲んで丸まって寝てるところを探しに来た純が見つけて純の家に連れて帰るとか、ちょっと見てみたいシーンではあるけども。ああうん、見たい……。 話がそれた。 純は...

作品が好きか、その人が好きか

 というのは、たしかに重要なところだなあと。 たまたま読んでる別作品のなかで「自分の作品とは正反対の作品に惚れて、作品と本人とのギャップに興味を持って、付き合って結婚したけど、お互いに相手の作品にしか興味がなくて、離婚した」というエピソードがあって。なんでも自分が今一番好きなものの話に引き寄せて考えてしまう癖があるので、このエピソードを【売れうつ】で考えてみると。 純は、たしかに「古印葵の漫画」に惚れてて、でも矢晴のことはどうなんだろう……? くらいのところがある。 矢晴は、望海可純の漫画が好きかどうか謎で、純には今依存だか恋だかわからん感じに惹かれてて。 現状だと、先のエピソードのようなことにはならない……かな? でもこの先、望海可純の漫画のことが好きになったら……? と考えてみても、矢晴にとっては、上薗純が先にあって、望海可純の漫画は純のついでみたいになりそうかな。 矢晴が純に恋したとして、一番のライバルが自分の漫画になるんだなぁ……と思った次第。矢晴の恋が茨の道に……。 「作品は好きだけど、その作家には興味ない(嫌い)」とか「その人自身は好きだけど、作品はどうでもいい(嫌い)」とかあって。「作品もその人も大好き」というのが一番いいんだろうけども、「作家の人間性を知って作品が嫌いになる」という事例もあるだろうし。だから矢晴は【第4話】で『私のこと知れば知るほど幻滅すると思います』『だから過干渉っていうんですか? やめた方がいいですよ』と言ったわけで。 結局のところ、純は、矢晴がどんな人間だったとしても古印葵の漫画に対する評価は変わらん感じでよかったなと思うけど、矢晴のことどう思ってるんだろ……?

ルームシェア

 純の言う「好きな人集めて一緒に暮らしたい」という夢は、わりとふつうに誰もが思う夢な気がするし、私もできることならそうしたいと思ったりはするんだけど、気の合う仲間が集まって一緒に暮らそうっていう立ち上がりならうまく行きそうには思うし、最初からルームシェア、ハウスシェアみたいな形で集まった人間同士ならうまく行きそうに思う。 純と矢晴の同居は、純のわがままで矢晴に同居を申し入れて、矢晴は現実逃避も手伝って純の話に乗っかった形だから、そこに他人が入ってくるってのは、矢晴には耐え難いことになるよなあ……と容易に想像できちゃうなと。 純は「自分の好きな人を集める」って方向な気がするから、それぞれの相性とか人間関係は度外視か? と思うと、絶対破綻しそう。気の合う仲間だったとしても、同居となるとそれぞれの生活の作法やらなんやらで厳しそうな気がしちゃうし。 純が誰かと暮らすにしても、古印葵好きとじゃないと厳しそうだし、古印葵好きと暮らしたとしても同担拒否みたいになりそうだし……? かといって、古印葵が嫌いか無関心な人とは同居できなさそうに思う。 たぶん、純は矢晴としか暮らせないと思うんだ。

純の愛

 純が愛を捧げてるのは古印葵なんだろうなとは思うのだけど。古印葵である福田矢晴のことはどういう認識になるんだろうな? とは常々考えていたりはする。 基本的に「福田矢晴は古印葵」もしくは「福田矢晴は古印葵だったもの」ではあろうかと思うんだけども、矢晴のなかでの古印葵の比率と、純が思う古印葵の比率が違いすぎるとは思って。 純の認識の中では「古印葵である福田矢晴の全て」に愛を捧げてそうな気がするけども、矢晴にとっては「福田矢晴の一部分の表出である古印葵だけ」に純が執着してるように見える気がする。実際のところ、「古印葵」を抜いてしまった場合にふたりの関係はどうなるんだろう? とは思うけど。ここはちょっと真剣に考えてしまうけど。 授賞式のスピーチ聞いて、更に古印葵に執心してる純というのを考えると「福田矢晴という人間が生み出した古印葵の漫画が好き、福田矢晴が古印葵として描き出す世界が好き」なんだろうなあ、とは思える。 純の「古印葵への愛」はそれはそれは重そうな気がするんだけども。【第5話】【第6話】を見る分には。【第9話】での恍惚としてるシーンもだけども。ただ、あんまりにも重い愛を表出すると矢晴には恐怖にしか見えなくて引かれてる部分は大きくて。 ただ、同居を開始してお互いの存在に慣れてきて、純はあまりに重い愛を表出すると引かれるからと思ってか抑えめにしてる感じはあるにせよ、「好きな人を集めて一緒に暮らすのが夢」だとかの「古印葵だけじゃない」を出してきちゃったのは「全部が10」だと思ってたのが「全部は100だったうちの10」みたいなことで、矢晴にとっては「純の中での自分の位置(価値)」が大暴落なのは仕方のないことで。これがただのすれ違いならいいんだけどなあ。 純は古印葵が好きで、古印葵に愛を捧げてるとは思うんだけど、それが古印葵=福田矢晴への恋愛感情なのかどうか、は今のところわからないというか、表現はされてないなと思う。ただ、【第9話】で純が矢晴を助ける理由を話した時に1カット挿入されていた矢晴と隣に立つ女性の後ろ姿に「純の失恋」という解釈は成り立つかなとは思ってて。 同居迫った時みたいなマジの目で矢晴に愛を告白して欲しーなーと、思ったりはするんだけど、また引かれたら泣いちゃうな。 なんかこう、比較的土曜日に更新されてる率が高いな、と更新された日を記入したカレンダーを眺め...

会話のズレ

 ときどき感じるんだけども、矢晴と純の会話にズレがあるなと。 天才同志の会話だと、相手の言いたいことを察してか速解してか、数段階ずつ飛ばしてるようでいて会話が成立するみたいなところがあるように思うんだけど。共通認識の部分は省いちゃうから常人がはたから聞いてると発端からいきなり結論に至ってて途中はどこへ行ったんだ? みたいになるやつ。 純への矢晴の返答に対する評で「うつ病の被害妄想からか返事になってない、会話が成立してない」みたいなことを見かけてて、その時の会話としては、私からは普通に会話になってるように見えてたから謎だったんだけども。【第12話】の純からの例示と問いかけから矢晴の病気の話、それに対する純の言葉の流れが、数段ずつ飛ばしてて私には純の言葉が理解不能という状態になって、こういう感じだったのかな? と思い至った。違うかもだけど。 【第11話】で『お前の口は速くて話がコロコロ変わる』『手も速くて絵もポンポン 出てくる』『こっちの脳はまだ5駅前で停まってるのに』と純の思考速度について行けないみたいなこと考えてるけど、まともな時の矢晴の話は3駅飛ばしでワープしてるみたいなとこがあるような気がするんだよなあ。 そこらへんが純が矢晴に惹かれる所以な気がするけども。 ただ矢晴は、噛み砕いてわかりやすい話をすることもできる人だから、数段飛ばしてても飛ばしてることを気づかせない気がする。本人も気づいてないかもしれない。 矢晴と純の会話のズレが、頭いい矢晴とポンコツな純みたいに見えるのかなーと、ちょっと思った。純はそんなにポンコツじゃないはずなのに、矢晴の前だとなーんかポンコツに見えるんだよなあ。

矢晴がいない間の純の行動を考えてみる

 矢晴がPASMA持って外に行った時の純は何をしてたんだろうかなあ、と気になる。ここらへんが次の話で明かされるといいなと思うのだけど。 お金は持ってないから遠くに行けないと思ってるかなーとは思うんだけど。追いかけたり家の周囲を探したりはしてなさそう、かな。 家のなかに居ないことがわかったときは電話してそうな気はするんだけど。電話してみたら家のなかから着信音がするから物置でスマホ見つけたってことかなーと、思う。それか、矢晴が部屋にいないから家中見て回ってスマホ見つけたか。 矢晴に「おかえり」って言ったときはパジャマに着替えてたから、矢晴がいない間にお風呂入ってたかなーとか思うんだけど。矢晴自身、純に見つからないように家に入りたいから、純がお風呂入ってる時を狙って家に入ったかもなあと思えるし。 矢晴が家を出たって気づいてからしばらくは悶々としてたらいいなとは思うんだけど。追いかけたら追い詰めちゃうから行っちゃダメ、とか、普通に過ごしてないと矢晴が余計に気にするだろうから普通にしてよう、とか。チクチク言葉使ってたの矢晴に咎められたから反省してたり。純が考えなきゃいけないことはたくさんありそう。 「チワワ何匹分」については特にじっくり考えて欲しいし、純が導き出した矢晴の気持ちが知りたい。 矢晴が朝になっても帰ってこなかったら純は探しまくってくれただろうなとは思うんだけど、夜の間に帰ってきてくれたことに安堵してるところとか見たい。 純が矢晴を大事にしてる・一番に考えてるってところを見て、安心したい。それが矢晴に伝わって矢晴も安心してるところを見て一緒に安心したいってのが一番の希望だけども。

純のデビュー時期

 純がデビューしたのは22歳で。その年の年末にE・B大賞の授賞式があって。授賞式で矢晴にサイン貰いに行ったときには、すでに漫画家デビューしてるはずだから、サイン貰う時に「新人の望海可純です」とか挨拶しててもよかったんだよな…? ということに気づいたんだが、編集部で会った時に『初めまして! 私――――』『望海 可純です』って挨拶してるってことは、やっぱり授賞式のときに純は古印葵のサインは貰ったけど会ってないのかな。 純のデビューが年末頃で、授賞式の直前か直後くらいだったら漫画家として挨拶するってのはなさげかな? 牧野先生のアシスタントとして連れてきてもらったって形だし。 矢晴が2冊目の短編集出して賞をもらった年に、純がデビューしてるってのは確定なんだけど、その時期がいまいちはっきりしないなあと思いつつ。 そこらへんは置いておいても、矢晴と純が授賞式で会ってるのかどうかは知りたい。4年前。24歳と22歳。純の勢いならサイン貰ってツーショットで写真撮っててもいいじゃないかと思っちゃうんだけども。

【感想】第12話 幼生・トランスフォーム

 矢晴の世界に純がいっぱい、な表紙から始まる【第12話】。また、タイトルの『うつ病漫画家』がひび割れてしまっている。うう、矢晴……。 前回の転居6日目、笑顔を見せた矢晴のシーンから続く。『やめいっ』と笑顔で純を押し返し、しばしの間とはいえ、純とふざけあって笑い合っていたことがうかがえて、微笑ましくもあるが、『私が1日のうちまともでいられる時間は2時間だけであり』と矢晴の現状が語られる。 翌日、転居7日目(1週間目)は第1話で描かれているため、無声のダイジェスト。先のページでの説明のおかげで、矢晴が純にベッドで歯を磨かれて台車で運ばれているのはほぼ毎日のことのようで、安心した。うん、安心した。 2週間、3週間、はさらっと流されているものの、矢晴の精神状態はほとんど変わらずというか、体の状態も含めて悪化しているような…? という感じ。『今は酒という逃げ道が封鎖されてしまっている』から、酒に酔うことで放棄していた思考がすべて襲ってくるみたいな…? という状態なんだろうなあと。わりとなんでも良くなる前は数段落ちるもんだから、どどんと落ちてもらって、これからの浮上に期待したいところ。 矢晴がうめいているだけで意志を汲み取るという純のお世話が、本当にそれは矢晴の意志なのか…? と疑問を持ちたくなるくらい、わりと独善的でぐいぐいと無理くり引っ張っていく感じがあるんだけど、そんくらいやるほうが矢晴にも合ってそうだし、純も無理してなさそうで良い。『食べてるところ見せてほしいな〜』ってセリフが好き。 純のクローゼットやら部屋を荒らす矢晴に『お酒探してたんだ?』と寄り添う純がいい。縮こまった矢晴の隣で余計に純が大きいのが引き立つ。純おっきい。その後、ルーフバルコニー(?)に連れ出して、日光浴しながらおしゃべりするのもいい。ただここらへん、純が矢晴のことを理解したいからか、一般化しようとしてる感じがすごくして、「矢晴自身のことを知りたい」じゃなくて「矢晴のことを自分の知ってる言葉の範囲に落とし込みたい」みたいに見えて、それを矢晴が『人間は』『今名前のある病気にしかなれないんだよ』と軌道修正してくれてる感じがする。話し始めた矢晴をじっと見つめる純の目が好きだなあ。 そっから1コマと3ページの長尺の矢晴の話をしっかり聞いてくれた純が良い。でも純の言った『ヘビを見るのと操るのとじゃ違うん...

降るもの

 第1話冒頭から、紙が舞い降る。 この作品では「何かが舞い降り、落ちる」という演出があり、かなり印象に残る。 【第1話】では、紙(原稿)が舞い降る。 【第2話】では、本が降り落ちる。 【第4話】では、矢晴の涙がコマを越えて降り、純の肩を濡らす。 【第5話】冒頭には本が降る一コマがあり、【第6話】では原稿の舞う一コマがある。そして、海が波立ち水が散り降る。 【第12話】では枯れ葉が散り、舞い降る。 多少省略したかと思うが、数え上げると案外少なく、少ないことに驚くくらいに印象が深い。 【第1話】の紙が降る、私は最初のシーンも好きなのだが、『褒めようがそれが嘘だろうが本心だろうが』『関係ない』のシーン、矢晴の顔を半分隠して降りかかるところがかなり好き。目元が隠れて、横顔の鼻と口が見えるところ。この口元と顎のラインが特に好き。 【第12話】ではモチーフとして枯れ葉が多くあしらわれていると思うのだけど(枯れ葉の龍とか)、29ページの一番下のコマ、散らばった服と枯れ葉のところだけ、心象なのか現実なのかわかりづらく。このページを構成する他の要素は、純に抱きしめられたり、純と手を重ねてたり、純に背中を撫でさすられたり、純に『妹だときっとかっこつけちゃうから同性の方がいいなって』と言われているシーンだったり、心臓だったり、で。純とのふれあいの思い出と、自身の心臓だろうかなとは思うものの、散らばった服は矢晴が家を出ようとしてか何かを探してか荒らして散らしたとしても、枯れ葉はなんだろ? と思ってしまって。 現実で、PASMAをズボンのポケットから抜き取るシーンには枯れ葉が散っているわけではないから、先のシーンはなんらかの心象だろうなあとは思うのだけど。 違う話だけども、そのページの『妹だときっと〜』の『妹』だけ、大きな文字で強調されてるのが何なのか気になるなーと思っている。

日光浴とサプリ

 純は本当に、矢晴のためにいろいろ調べて勉強してるんだなと。 同居1週間目には、朝食を温室で、と自然と日光に当たる場所を選び。 同居3週間が過ぎた頃には、ルーフバルコニーに連れ出して日光浴をしている。ふたりで寝っ転がってのんびりできる寝椅子(なのかベッドなのか)まで用意してある周到さ。 たぶん矢晴が引っ越してきてから毎日とまではいかずとも、折々で矢晴を日光に当ててそう。 矢晴の病気にはセロトニンが生成される日光浴が良いというのを調べて知ったんだろうなと思う。 栄養バランスとかもしっかり考えて、不足してそうなものをサプリで補い、薬との飲み合わせまでしっかり調べて。 甲斐甲斐しいったらありゃしない。同居前に矢晴が純の家に来たときにも用意したコーラはノンカフェインだったりもして。矢晴の家を掃除した時に見つけた薬がどんな病気に処方されるものなのか調べたのかしら? 矢晴を療養させるために同居してもらっただけあって、介護の仕方がハンパねえなと、【第4話】で『いくらでも世話します』って言ってたのをしっかりと実行してるのが、またすごい。すごい人だよ、純。

■【売れうつ】の二次創作(7)(小説)

ほのぼのとした純と矢晴が見たいので、ファンレターの話を考えてみた。 純が古印葵のファンだというなら、ファンレターのひとつくらい送っておいてほしいなという欲望から。  ■

好きと嫌いと無関心

 「好きの反対は無関心」とはよく言われることで。 純は古印葵が好き。だから、矢晴は【第4話】で純に対して『正直に言います 私は純さんの漫画 読んでないです 私はあなたに無関心です』って言ったわけで。自分自身に対して興味を持ってくれない人間に対しては、人は興味を持たないだろうから、興味を失わせようという意図があったかと思うんだけども、純には関係のないことで。 【第4話】のこのシーンは矢晴の言葉をしっかり聞いてて、順番に対応して話していくところが好きだなあと思っている。 「好き」「嫌い」「無関心(興味がない)」と並べると、「好き」から「嫌い」へは感情のグラデーションがあって、「無関心」には感情がない。「好き」の反対は「無関心」だろうけど、「嫌い」の反対も「無関心」。だから、私は「好きじゃないもの・嫌いかもしれないもの」のことも考え続けちゃうんだよなあーと、思ってる。 矢晴にとって望海可純の漫画は「読んでないから好きか嫌いかもわからない」「無関心だから読まないわけじゃなくて、漫画全般読んでなかったから読んでない」「過去に読んだ分だけで言えば、望海可純は漫画がうまい」あたりかな? 漫画が好きな人間の言う「漫画がうまい」って「相当好き」みたいには思えるんだけど…? これから先、矢晴が純の漫画読むことあるのかなー? と期待するんだけど、粗相して洗われた後、ソファーに横になってて目の前のテーブルの上に純の漫画が置いてある(付箋のついた3巻が置いてあるから純は今描いてるあたりの伏線にしようとしてるのかもしれない、と推理してみる)から、その場で何気なく手にとって読み始めたりするのかな…? どうだろな…? と、これまた期待してしまう。 矢晴が「純の漫画は面白い」とか「純の漫画は好き」とか言ったら、純は自分の漫画が好きになれるかもしれない。

死人に口なし

 【第12話】で矢晴の長尺セリフのなかにあった言葉なんだけども、この言葉を読んだ瞬間に私の頭に浮かんできたのは、【第6話】の純の過去話だったりはする。 嫌い・好きではない事柄についてもずーっと考えてしまうのだけども、【第6話】の純の過去話からの『消えた人間から無能の烙印を押されたのだからせめて上からモノを言うのをやめろ』というのが、純の身勝手な思いを消えてしまったクラスメートに仮託してるように思えて。その時からすでに「死人に口なし」とは思ってたので。 それとこれとが関連しているなんてことは全く思っていなくて、無関係な事柄が、ふと自分のなかで共通のキーワードで思い出された、というだけの話ではある。 矢晴の話のなかでの「死人に口なし」は「表に出てこない症例」は「なかったことにされる・ないものとして扱われる」ということになるのかな。

ループしちゃうんだけど

 現時点での最新話【第12話】がそのまま【第1話】の終盤につながるので、そのままやっぱりループしちゃうんだけど。 いい加減、セリフをかなりの割合で覚えちゃってるから、画面眺めて雰囲気で読んでしまうところもあり、ちょっと勿体ない読み方になっている気がする。 それでも面白いし、矢晴はかわいいし、純もかわいくてかっこいいなと思う。 書き記しておきたいなと思いながら霧散してしまったこともあるから、書き記したいことすべてを書き記せているわけじゃないけども、それにしたって現時点でのこのブログの記事数(140↑)を考えると、どれだけ語るん? とは思う。 たぶん新しい話が来るとそれだけで数件、それまでの話と合わせて数件、みたいな感じで10記事は書いているし、書くだろうし。 さすがにTwitterでは長文で語ってくれる人は少ない(たまに数ツイート分語っている人はいて、噛み締めながら読ませていただいている)ので、この作品を好きな人の感想に飢えつつある、ような気がする。Twitterの短い文章だと、どの方面からどの方面に向かってる感想なのかわかりにくくて、読解に悩むものもありはするし。 自分の知り合いに布教して語り合えばいいのか…?と思わないでもないが、それは違うんだよなあ……という気分で、知り合いにこの作品を紹介したことはない。匂わせることもしたことがない。 たぶんこれからもその状況だろうから、このブログもずっとひとりで壁打ちし続ける気がする。(同好の士のコメントをもらえたらうれしいだろうなとは思っている。) 純と矢晴が幸せになるその日まで、ひそかに応援し続けたいと思う。 ほんの1週間前に40ページもの新話が来たばかりだというのに、はやくも続きが読みたくて待ち切れない気分になっている。

みんなそうだもの

 と言われたところで、「だから、何?」と返すしかなく。 「みんな同じ」「誰しも思ってる」と、一般化されたところで、「今現在個人的に感じていること」への解答にもならなければ解決にもならないな、と。 むしろ、なぜそんな一般化を純が矢晴にしてしまったのかが、けっこう疑問。純はなんだかそういう一般化を嫌ってそうな感じがしたんだけど……と考えながら、そういえばアシスタントとの会話では【第5話】『人間ってあるあるネタとかモノマネ芸人が好きじゃない?』『共感することを好む生き物でしょ』『どのシーンで共感して感情が昂ったのかリサーチしとかないとって思ってさ』と言っていたのを考え合わせると、純自身は「なんでも一般化してわかった気になる」タイプかな? 「世間一般が思うこと」がわからないからこういうリサーチしてるのかなと思ってたんだけど。どっちだろ。 【第12話】は、純が矢晴の内面を理解したいと思っているのか、分析したいと思っているのか、一般化したり、例を考えたりしてて、それに対しての矢晴の話が、たぶん純が聞きたかったことの3段階くらい先の話になってるな、という感じがして。 『人間は』『今名前のある病気にしかなれないんだよ』という話が、「人間は何でも名前をつけて分類したがる・名前をつけたことで安心したがる」という話にも聞こえてくるのだけど。 矢晴はやっぱり頭がいいなあというのと、言語化が凄すぎってのと。 矢晴の話を聞いた後の純の『ヘビを見るのと操るのとじゃ違うんでしょうね』の言いたいことがよくわからなくて。見当違いにも思えるけど、見当違いか?と思ってしまう私が見当違いなのかもしれない。

枯れ葉の龍

 【第12話】で矢晴が病気の話をしているときの、コマをまたがって、ページ全体にいる枯れ葉でできた龍の絵が、なんだかうわぁーという気分になって。 【第3話】で純が古印葵の漫画を褒めた時の『ここでこの絵を挿入するなんてどうやって思いつくんだろうってところが本当たくさんあって何を参考にしてるのかってすごく気になります』という言葉を思い出すというか、実感を込めて言いたくなる。 純が古印葵の漫画を褒めた時の言葉の数々が、この【売れうつ】全話にもものすごく当てはまってて、作者は古印葵なのか…? という気分になるわけで。物語としては、古印葵が描いた忘れたくない記憶の話だから、作者は古印葵といえるわけではあるけれど。 吹き出しの中のセリフを読んでいるときは、コマとして区切られた一部分の絵しか視界に入らなくて、次のコマ、次のコマと移動するごとにピースが増えて、最後のコマまで読み終わって、ふとページ全体を眺めたときに龍の全貌が見える、みたいな。 ただ、その龍の姿がなにを象徴してるのかまでは、わたしには読み解けないのだけども。

下描きだから

 現在連載されているのは下書きだから、作画的にペン入れしたときには変わることがあるんだろうなあと思うから、あまり、「ここの絵がこうで、ああで」と考えないようにはしてるのだけど。 純の家の外観と内部構造が合致しないな……とか、L字型ソファーの謎とか、気になるは気になる。たぶん2階で矢晴が荒らした部屋は和室とつながってて、窓はこっちで扉はこっちで……と考えてて、どこだ…? みたいな気分になったり。和室側から純が来てるから、和室が別の部屋に通じてるか、廊下につながる扉があるだろうけど、どこだ…? みたいな気分には。 とかなんとか、なるべく深く考えないようにしようとは思っているのだけど、【第1話】の同居1ヶ月の矢晴の部屋の「ベッドの脚とそばのゴミ」と、【第12話】の矢晴がズボンからPASMAを持っていったときの「ベッドの脚とそばのゴミ」は完全一致だなあ、と読み返してて思って。 【第1話】のそのシーンでは、ゴミのそばに四角い薄いものが落ちている感じがして。最初はスマホ落としてるのかな? とか思ってたけど、【第12話】で純は物置で見つけたスマホを置いていったんだから、床に落ちてるわけもなく……。と考えると、もしかしてこの薄い四角いものはPASMAでは…? と思えるわけで。 そんな目立つところに落としてたら、窓の外のペットボトルを見つけるまでもなく「酒を買った」ことがバレてしまうな、と思ったわけで。 最初から最後まで決めてから描かれる方というのはわかっているのだけど、そんなに細かいところまですでに決めて第1話から…? と思うと、作家さんの物語の構築力が恐ろしくて。 同居1週間目がすでに描かれたことだからダイジェストになっていたことを考えると、同居1ヶ月の粗相したところの話は【第1話・第2話】ですでに描かれているから、別視点からか、その後が【第13話】になるのかなーと思う。

■【売れうつ】の二次創作(6)(小説)

 純が寝台列車の中で漫画雑誌を読んでたことについて「普通は旅行中に雑誌なんか買わない、荷物になる。だからこの描写はおかしい」というような意見を以前に見かけていて、え? ふつうに買うだろ? と反証例を考えていたら浮かんできた話。 旅行中に本を買うかどうかについては、・私は旅行に出かける時は文庫を数冊必ず持っていくこと。・毎週買っている雑誌の発売日だったら、旅行先でも買うだろうこと。・寝台列車は利用したことはないが、他者がいる状態で静かに夜を過ごさなければならないのなら、翌朝捨てる予定で漫画雑誌を買うのもありと思うこと。などなど、旅先でも本屋には吸い込まれるタイプの人間なら、ごく普通に、本やら雑誌やら買うだろうなと思う。 先の意見を出してた人は、普段から本・漫画・雑誌を読まないタイプなのだろうと思う。本を読まないタイプの人間の常識と本を読むタイプの人間の常識とでは、違っていて当然なのだけど。 で、今回書いた二次創作は、同居して数年経過してる設定。 書き始めの予定ではラブラブなカップルがじゃれ合ってるだけ、みたいな気持ちだったのに、なんか着地の方向が違った……という感じの話。 ■

タイトル考

 私自身はタイトルや名前を考えるのが超絶苦手で、詰まるところが「タイトルについて考えるのが苦手」ということなのだけども、なんでこのテーマを選んでしまったのかと悩みつつも、【売れうつ】のタイトルも各エピソードのタイトルも好きだなあと思っているから、ちょっと考えてみたかった。 古印葵の漫画のタイトルは、今のところ2つ出ていて、純が雑誌で読んだ短編『春眠の底』と2冊目の短編集のタイトル『Unexpected Encounter』。古印葵はたぶん漫画の内容もさることながら、という感じでタイトルもけっこう凝っている気がする。(古印葵がタイトルにも凝る人・こだわる人でもいいんだけど、商業的に横文字の小難しいタイトルは売りにくいと思う。覚えらんないし口頭で注文しにくいし) 望海可純の漫画のタイトルは、雑誌に載った分(同人時代は省く)だと、デビュー作『鬼弾児』、連載作『シヴァ・アンバー』。ペンネームの付け方も考え合わせると、タイトルや名前をつけるのが苦手か、単純に安直につけてるか、と思える。(少年誌的なところから考えると主人公の名前か属性かな?って感じにも思えるから、『シヴァ・アンバー』はシヴァとアンバーの二人組かも? とか思ってみたり) で。 【売れっ子漫画家×うつ病漫画家】というタイトルは、キャラクターの属性とカップリングが一目瞭然でわかる、安直なタイトルと言えるけども、だからこそ興味を惹かれる良いタイトルだと思う。好き。 各話タイトルは、矢晴視点のエピソードは「漢字・カタカナ」という形式で統一され、純視点のエピソードは「上薗純、曰く」(第6話の表紙では「上薗純の視点」になっているけど)とされている。 矢晴視点のエピソードでは、そこで語られる話の根幹をタイトルにしていると思うのだが、なにかしら特別な意味合いを含んでいるとしても、私にはわからない。辞書的な言葉の定義から考えてみる。 【第1話 虚・プライド】「虚」は中身がないとか、実が伴わないとか。「プライド」は誇りとか、自尊心とか。 【第2話 後悔・プライド】「後悔」は失敗だったと悔やむこと。「プライド」は誇りとか、自尊心とか。  【第1話・第2話】はまとめて1つともとれるかな? と思うので、過去を悔やむ、自身の行動と周囲の仕打ちで傷ついたプライド、うつろな現状みたいな感じかなー? とか考えてみる。 【第3話 攻撃性・マ...

矢晴の涙

 純への気持ちがあふれつつある矢晴が、「純の一番になりたい」と純の胸に顔をうずめて、純の腕に包まれて、ボロボロ泣いて縋るシーンが見たい今日このごろ。 矢晴の涙ってなんでこんなにきれいでかわいいんだろうかと。 【第4話】の最後のページ。その前のページの最後のコマで純がぬぐった矢晴の涙が、純の指に光ってるところが好きなんだけども。 『あなたの亡骸は私が拾いたいんです』って言う純が不気味にグラデトーンに沈んでるだけに、矢晴の涙が煌めいて。シーンとしては純が怖くなるシーンなんだけど。やっぱり、このセリフ怖いよ? 最上級の愛の告白みたいではあるけれど。 とはいえ、【第12話】を見ると、純にとっての古印葵=福田矢晴が「大勢いる好きな人のほんの一部」みたいに思えてしまって、【第5話・第6話】で見せた「古印葵への執着」とか【第9話】で純が矢晴に告げた『こういう幸せをくれたのはあなただけ』という恍惚とかが、埋もれてしまうというか実は幻想だったみたいな気分になってしまう。 純にとって古印葵は一番じゃないのかな? どうなんだろう? 薄暗い物語が好きだったりする私としては、いっそのこと、純が矢晴を監禁してくれてもいいくらいだし、矢晴とふたりきり外界から切り離されてほしいくらいではある。毎日泣き暮らす矢晴の涙をすすって生きる純が見たいような気もする。 【第4話】の最終ページの純の指に光る涙を、舐め取る純が見たかったりはする。

そろそろ純視点が欲しい

 というか、矢晴が家を飛び出してから部屋に戻るまでの数十分だか数時間だかの純の行動や思考が見たい。 たぶん、チクチク言葉いっぱい使ったことは反省してるんだろうとは思うんだけど、矢晴の『純にとって私はチワワ何匹分だよ?』ってのに対して、何を思ったのかが、知りたくなる。 【第2話】冒頭の『体の外側のことはいくらでも見せてよ』『内側はいくらでも隠せるんだし』ってセリフがどういう思考から出てきたのか、矢晴のことをどう考えて導き出されたのかが、知りたい。 矢晴が純の家に住むようになって、2日目には財布を預けられて頼られて、5日で古印葵の輝きを見て、6日で矢晴が笑顔見せてくれるようになって、矢晴の世話をすることが日常になって安心していったとは思うんだけど。 同居して1ヶ月経って、すっかり慣れて、矢晴の世話が負担になってるって感じはしないけど、矢晴の心の機微には鈍感になってたよなあ? みたいな感じはして。 たぶん、純は矢晴と暮らすためにいろいろ調べてたとは思うんだけど、【第12話】の矢晴の病気の話のなかで語られた『どれだけ本やネットや人の話を漁ろうが体験しようが』『知った気になるだけで全知は不可能だ』って言葉も噛み締めてほしい。 ああ、たぶんこの言葉噛み締めた上で【第2話】冒頭のセリフかな? あと、純が矢晴が来てから編集部に打ち合わせに出かけていたのかどうかも知りたい。 ストーリーの構成的には、そろそろ純視点が来てもいいと思うんだけど、来るかなー?

■【売れうつ】の二次創作(5)(小説)

 本編の純の行動と、矢晴の気持ちが矢晴を追い詰めていくのが不穏で不安でたまらないので、二次創作をする。 いつもいつも、溺英恵さんの描き出す【売れうつ】の新話は予想を遥かに超えて、そして予想もつかない、想像が及ばないくらいに飛び抜けて面白くて、すごいのだけど、感情移入し過ぎなのか、大好きすぎなのか、胸が苦しくなって駆け出したい衝動にかられて、居ても立っても居られない気分になる。 そして、なにか、書きたくなる。 今回は、以前に書いた「二次創作(2):矢晴のバイトがこうだったらいいなという、もしもの話」の続き。 ■

各話時系列をざっくり整理

 【第1話】 ・同居1年後:2年ぶりに漫画を描く ・過去回想:同居1年後の2年前、最後に漫画を描いた頃。27歳当時から21歳でデビューしてからの6年間を振り返る ・同居開始当初:同居1年後の1年前、同居してから1週間後(第9〜11話の続きにあたる。【第12話】同居1週間目の詳細。) ・同居1ヶ月目:動けず、ベッドの中で粗相していたのを純に見つかる(第12話終盤からの続きにあたる、第2話に続く) 【第2話】 (第1話の続き) ・同居1ヶ月目:純に風呂に入れてもらう(第1話の続き、第12話の続き。第13話後編の矢晴視点) ・同居1ヶ月目:風呂上がり、ソファーに臥して、ガラステーブルに置かれたシヴァ・アンバー3巻を眺め(第14話へ続く)ながら、過去回想へ。 ・過去回想:21歳デビューの頃から28歳 ・過去回想:28歳秋の終わりに編集部からの連絡をもらう ・28歳、編集部に行った当日:編集部で望海可純こと上薗純と出会う(第3話に続く) 【第3話】 (第2話の続き) ・編集部に行った当日:編集部で望海可純こと上薗純と出会う(第4話に続く) 【第4話】 (第3話の続き) ・編集部に行った当日:上薗純と散歩しカフェ・居酒屋に行き、泥酔して自宅に送ってもらう(第6話の矢晴視点) ・編集部に行った翌日:上薗純に部屋を掃除され同居を持ちかけられる(第6話の矢晴視点。第7話に続く)   【第5話】上薗純視点   ・大学時代:旅行中、寝台列車の中で古印葵の漫画と出会う   ・数年後、22歳:E・BOOK大賞授賞式に行き、実物の古印葵を見る(サインをもらったらしい)   ・22歳:A誌の月例賞に応募し、デビューする   ・3年後、25歳、夏:古印葵のA誌連載を喜ぶ。古印葵の布教活動を開始する   ・1年後、26歳、秋:編集部。15巻の献本を受け取る。古印葵と会う機会に恵まれる(第2話、矢晴が編集部に来るきっかけとなった連絡の裏側。第6話に続く)   【第6話】上薗純視点   (第5話の続き)   ・26歳:編集部。担当と食事に行く。   ・編集部に行った数日〜後。26歳、古印葵と会った当日:古印葵と散歩。カフェ、居酒屋に行く(第4話の純視点)   ・26歳、古印葵と会った当日:古印葵を自宅へ送り届け、古印葵の部屋を掃除する(第4話の純視点)   ・過去回想、高校時代:同級生の自殺  ...

安心と慢心

 【売れうつ】は基本的に、矢晴視点から描かれているから、純の気持ちや本心はわからないのだけど、矢晴が一緒に住んでくれて、矢晴が笑顔を見せてくれて、純はすっかり安心しちゃったのかな? と思ってみたりする。 「自分はちゃんと矢晴の世話ができてる」と慢心しちゃってるところもある気がして。矢晴が部屋を荒らした時に『お酒 探してたんだ?』って声をかけるのはまだいいと思うんだけど、食事の時にもお酒の話題を出したり、矢晴の顔が赤くなってるからって『酒飲んでないよね?』って疑うようなこと言ったりは、アウトな気がする。 3時間以上もビデオ通話に夢中になって、矢晴ほっといたのもどうかなー? みたいな気はしないでもないけど。四六時中、矢晴のことを気にかけて世話をしてってのはまったく望んじゃいないし、純は純で友達との付き合いも大事だけどさ。 180分ずーっと楽しそうに誰かとしゃべってる純の声を聞き続けちゃった矢晴もどうかな? みたいな気はしてるけどね。ちょっと前までの矢晴だったら「後でいいや」って自分の部屋に戻って寝てた気がする。 ここはもう、どっちもどっちで絡み合って悪い方へと転落してしまった感じで。 チクチク言葉にしてもそうなんだけど、ほんと純は、考えなしにしゃべると失言大魔王だなあ。そういう性格だから仕方ないのかもしれないけども。 そうして矢晴の地雷の上を華麗にステップしてくのが上薗純なのかもしれないけど。 矢晴が純に惚れ始めてる感じがしてきて、お、いいぞ、と思ったりもしたけれど、なんだか今は、そいつはやめとけー!って気分にもなってきたりしてる。 いやいやいや、これは『幸せにする話』だから。たぶんきっとだいじょうぶ。 …………だよね?

ぼっち

 純は大きい家に一人ぼっちで住んでたけれど。社交性はあるし、友達多いし、アシスタントいるし。 仕事中はアシスタントのライングループだとかグループ通話しながらとかで、おしゃべりしながら作業してる。 打ち合わせに編集部に出かければ、楽しく会話して、他の編集部員にも挨拶して、時間の都合で担当と食事にでかける。 プライベートの時間は、ソファーで横になってくつろいで、スナック食べながら友達とビデオ通話することもある。(矢晴がいなかったら友達と食事とか夜遊びとかしてるのかもなあ、と思えるけど、どうだろ) 家族には献本とお菓子とか送るくらいしかまだ出てきてないけど、そういう交流がある程度には良好な関係。 純は「大きい家に一人ぼっちで暮らしてる」けど「孤独」じゃない。 矢晴は、ゴミ屋敷にしてしまった狭いアパートで一人ぼっちで暮らしてた。 漫画が描けなくなって編集部とも連絡取らなくなって。 もともと仲の悪かった家族とは険悪な状態になって。お姉さんもいるけど何年も連絡とってなくて。 7年付き合った彼女とも連絡を取らなくなって。 矢晴は「近しい人、親しい人がまったくいなくて」「孤独」になってた。 今は、純が『死ぬまで孤独じゃなくなる約束しませんか?』って矢晴に言ったことから、矢晴は純といることで孤独ではなくなったけど、矢晴の世界には純しかいない。 純の世界には矢晴以外に友達とかたくさんいて、矢晴は純が他所を向いたら孤独に戻っちゃうし、今たぶん、純の世界にも矢晴しかいない状態になってほしいと、潜在的に思っちゃってる気がする。 【第12話】の表紙が、「矢晴の世界に純しかいない」ってのをあらわしてるなあと、しみじみ眺めながら思う。 『きっと私みたいなのが家にたくさんいたら純が話を聞いてくれる時間はなくなるのだろうな』って思ってるところと、「食卓での純の話と、純が通話してるのが聞こえてくるところを思い出してるシーン」が、切ないなあと、うるっときちゃうんだけども。 これは矢晴の独占欲っていうのかなあ? 純に依存してるから純が離れる可能性に恐怖してる感じかなあ? 今回は純でいっぱいになってく自分への恐怖から逃げ出しちゃってお酒買ってってなったけど、これが純の気を引くためになにかしらするようになったらヤバそうだなあとは思って。 純が好きなのは「古印葵」だから古印葵になればいい、ってのが動機で漫...

サイボーグ

 矢晴の気持ちが切ない、辛い。 元の生活に戻るのも怖いけど、純でいっぱいになるのも怖くて、純から離れたほうがいい理由を一生懸命考えてる感じがする。 『どうして元の生活が怖い??』『ひと月ばかりの呆れた夢から覚めて今まで通り生きるだけだろ』『身分不相応の家でサイボーグみたいな人間に抱きしめられるのがそんなに楽しいか?』 って考えてるところで頭に浮かんでるのは、ふたりでふざけあって笑いあってお互いのほっぺをむにむにしてて。ふたりの全開の笑顔がかわいい! 絶対このとき幸せを感じつつあったはずなのに。 純のことを『サイボーグみたいな人間』って思おうとしてるのは、「人間的じゃない」とか「あのぬくもりは虚像」とか自分の感じてた上薗純を否定したいってことだろうなあとは思うんだけど、わりとたぶん純ってサイボーグみたいなとこありそうで、言い得て妙みたいな気分にもなったはなった。 『抱きしめられるのがそんなに楽しいか?』って楽しかったんだろうなあ、愛しくなってたんだろうなあ、安心したんだろうなあ、と、わきあがってきてしまう。 そのまま純でいっぱいになって幸せになってほしかったなあと遠い目をしてしまう感じになるのだけど、これから純がどう巻き返すのか、楽しみでもある。 【第1話】冒頭の1年後の矢晴の思考を思い返すと、かなり厳しい道程だよな、純にとっても。

純の家、広すぎ問題

 別に問題ではないが。 純の家がこれまたとことん広すぎて。 仕事部屋 寝室 資料室 趣味の部屋 筋トレ部屋 グッズの保管室 物置 客室1階(矢晴の部屋) 客室2階(1) 客室2階(2) キッチン ダイニング リビング 小上がりの和室 風呂(ジャグジー付き) 脱衣所兼洗濯室 洗面所 トイレ 温室 ルーフバルコニー(?) 車庫 階段 で全部なのかどうかもわからないのだけど。作りたい部屋全部作ってあるかどうかもわからないのだけど。 リビングのソファーで純がビデオ通話をしてるのを待つのに矢晴が階段にいて、その画角からは玄関とリビングダイニングにつながる扉が見えて。 玄関入って右手すぐの扉がリビングダイニング。リビングダイニングに入って右手、ダイニングテーブル、テレビとソファー、小上がりの和室と続き、左手はキッチン、多分その奥に洗面所・脱衣所兼洗濯室、風呂かな。小上がりの和室は西日があたたかいから、玄関は西向きと思う。 階段は踊り場付きの曲がり階段で、階段横の扉は階段下で天井の形が歪になるような気がするから、ここが物置かもしれないし、トイレかもしれない…? トイレがまだ1回も出てきてないからわかんないのよね、場所。 矢晴の部屋は玄関から扉が見えない位置、ということになるから、玄関入って階段前を通っての奥だと思うのだけど。窓の光の差し方からして東向き。 矢晴が荒らした部屋は物置にしてる部屋になるのか、資料室やグッズ保管室とか趣味の部屋なのか(でもそんな部屋荒らされたらさすがに激怒しそう)、販促用のキャラ立ち絵のパネルみたいのも見えるから物置にしてる部屋っぽくはあって。扉から入ってすぐ大きめクローゼットの扉があって、部屋は扉入って左手。フローリングの部屋が畳の部屋につながってる。 この洋室と和室が2階の空き部屋で客室だとしたら、あと見えてないのは資料室・グッズ保管室・趣味の部屋・筋トレ部屋…? 純の仕事部屋は重厚な扉に鍵がかかるんなら、他の部屋とつながってはなさそう。資料室にはつながってるかも? 純の家、ファミリー向けマンションの部屋なんか比べもんになんないくらい、広すぎだよー。『お前はもっと広い家に一人ぼっちで住んでたろ』ってどんだけ寂しい状況なんだか。 あと、ついでにやっぱりL字型ソファーの場所がわかんない。矢晴がテレビの前を通ってL字型ソファーに座ったけども……。

矢晴の服とか荷物とか

 たぶん2階の物置に置かれてるのかな? 1階かもしれないけど。でも部屋の並び的に1階そこまでスペースなさげには思えるのと、2階に行ってる間にスマホなくした=スマホは物置に落としてた、から、たぶん物置2階だと思うのよねえ。 服とかはちょっと大きいクローゼットに入れてるのかな? 大きいクローゼットが洋室につながってて、洋室はすぐ和室につながってるみたいな。物置にしてる洋室とクローゼット荒らして、自分の荷物ひっくり返して、みたいな気がする。 自分の持ってきた服そこら中にばらまいて、自分の荷物の中に酒がないか探したか。物置の中になにかないか探したか荒らしたか。 で、ばらまいてた自分の服の中にICカード入ってたの発見して、自分のジャンバー着込んで、と。 最初にクローゼットと物置荒した日と、矢晴が逃げ出した日は別の日だとは思うんだけど、矢晴が荒らしたままにしてあったか、日課のように荒らしてるか。どうなんだろ。 ICカード自体は純が脱ぎ散らかしたズボンに入ってた可能性はあるけど、自分のズボンじゃないかなあ? これ、どっちかってことで、矢晴の病み度が加速する気がしないでもなく。 矢晴が荒らして、純が片付けて、矢晴が荒らして、純が片付けて……とかやってるなら、純もがんばってるな、って感じがするけど。でも、矢晴だけが“特別”じゃないんだもんなあ……(だいぶ矢晴に気持ちが寄っている……だってねえ……)

駆け出したい

 言葉にならない思いが渦巻いて、駆け出したい衝動に駆られるも、そこまでの体力はないので、散歩するに留まるが、帰る時に階段を踏み外しそうになった。 だらだらと思いつくままに今回の【第12話】について書いたり、考えたり、さかのぼって【第1話】からを考えたりしている。 【第12話】の終盤、同居1ヶ月経過。【第1話】の終盤で粗相した矢晴につながるわけで。【第2話】冒頭の、お風呂に入れてもらって、『体の外側のことはいくらでも見せてよ』『内側はいくらでも隠せるんだし』と言われるわけで。 矢晴はいつの間にやら酒のボトルを窓の外に捨ててたけど、いつだろ? 純ってノックしても返事待たずに入ってきてる気がするんだけど、実はちゃんと待ってるのかな。純がノックして入ってくる前に窓からボトル捨てて布団に潜り込んだかな? 純の家の間取りがよくわかんなくなってるわけだけど、矢晴の部屋は日光浴してたルーフバルコニー(ベランダ?)の真下なのかな? とするとガレージがすぐそこで。純が車に乗ろうとしたら、窓の下のペットボトルなんかすぐに見つかっちゃうけど。 純が見つけるのか、矢晴が証拠隠滅に成功するのか。 純が見つけたとしたら、なんて言うんだろう? 「飲んじゃったんだね。じゃあまた今日から1日目」みたいに受け止めてくれるんならいいんだけど。わかんないなー。前日の矢晴が飛び出す直前の会話を反省してれば、また矢晴に寄り添った言葉が出そうだし、お風呂での言葉は反省して出てきた言葉な気がするし。 とはいえ、寄り添った言葉をかけてくれても、矢晴は心閉ざしちゃうよなー。だって今は純でいっぱいになりたくないんだもん……。 それにしても、時間経過の描き方がとてもうまくて。矢晴の部屋のカーテンの隙間から差し込む光が、朝のうち低めだから光が長く伸びてて、昼になると太陽が高いから光が短くなってて。で、そうやって差し込む光を考えると、矢晴の部屋は東向き(リビングダイニングに続く和室と逆位置にある)かなー? リビングダイニングの扉があの位置で玄関があって? んー?

まんが盛り

 というか、日本昔話盛りというか。 純の山盛りご飯と、矢晴の小盛りのご飯の量の差がやべえな。みたいな気分になったり。純、どんだけ食べるんだ? おかずは大皿から取り分ける方式っぽく、でも、見た目二人分にしては多そうな雰囲気がしてしまうのだけど、あらかた純が食べるんだろうな。 ドレッシングの名前が楽しい。 もう矢晴が住み始めてから1ヶ月は経ってるから、2〜3回は家事代行の人来たかなー。矢晴の好みにあわせておかずのリクエストとかしたりするかな? 矢晴が呻くだけになってるお昼か朝に、茶碗蒸し食べさせてるのもいいなあ。つるんとして食べやすそうだし、矢晴がだし巻き玉子好きなら茶碗蒸しも好きそうだし。 とはいえ、なんかこう、純の家に来てから、明らかに病状が悪化しているというか、これはたぶん断酒の影響な気がするけども。純の家に来る前はもうちょっと活動時間長かったよね…? どうにか動けて何も考えずバイトして、っていうそこそこの時間の活動時間と、かなり冴えた頭でいろいろと難しいこと言葉にできる短い活動時間と。たぶん、今の短い活動時間のほうが快方に向かってるのかもしれないけど、頭が冴えてきた分余計に考えちゃってて厳しいことになってるんだなと思うと、どっちが矢晴にとっていいことなのかわかんないな。

矢晴の気持ち

 矢晴の純に対する気持ちは、恋なのか、依存なのか。 でろでろに甘やかされてて、居場所を与えられてて。でも、その“居場所”はその他大勢が来るかも知れない一角でしかなくて。 『今、私は結婚相手の喪失を埋める象徴物(チワワ)で己と純の関係を喩えようとしたのか?』って考えて、赤面して、吐きそうになって。 自分が純の一番じゃなかった、ってことに気づいて「価値が下がった」と考えたり。 『この家が お前が 大きな繭だ』って考えてるのは、純に包まれてるのが幸せで気持ちよくてってことだろうなと思うし、純のことで頭いっぱいになって『寄生虫より浅ましくなるだろ』って考えてるのは、BL脳な私から見ると、やっぱり“恋”としか思えないんだけども、“恋”であってほしい。頭いっぱいの純のなかで風呂上がりか首にかけたタオル持ってちょっと紅潮してて髪の毛バサッとなってる純がかわいい。 「寄生虫」ってのが純の世話になるだけの現状として、それより「浅ましい」ってのは、純からの一番の愛が欲しくてってことだよねえ…? ただ、これが“恋”だったとしても、矢晴にとっては純は「上薗純」で、純にとっては矢晴は「古印葵」なところがまた、すれ違いヤバそうに思えて、先が怖い。 自分の気持ちや現状から逃げ出したくて酒に溺れて、酒に酔ってる時の矢晴がやっぱりなんかこう、アルコールで紅潮して目元のクマが消えてやたらと可愛く見えちゃうのと、ベッドの中で酒を抱いてる時がなんか幸せそうに微笑んでるのが、現実逃避とはいえ、矢晴をいい気持ちにさせてるアルコールは偉大、とか思えちゃうけど、アルコール以上に矢晴を幸せにしてあげてよう、純ー。

180分

 って何時間だ? と一瞬わからなくなるくらいの衝撃だったんだけど。 たぶん純は、しゃべってても矢晴が自由に出入りすると思ってたんじゃないかなあとは思うんだけどもさ。 すぐそこ玄関の階段に180分って寒すぎない? 寒いよ! 冬だよ! 半纏も着てないし! と矢晴の体が心配になる。ついでに純の通話終了を待ってる間に持ち時間(2時間=120分)消費しちゃうじゃん!? と思ったけど、それは大丈夫だった。大丈夫じゃなかったけど。 いよいよもって純の家の構造がわからないんだが、リビングダイニングに入るのに廊下は歩かなかった……orz 矢晴がPASMA持って、自分のジャンバー着て、お酒買いに行った時の背景にある月が満月っぽくて、と、月齢見に行ったら12月19日あたりが満月で、その前後くらいの日程で…? と考えると、出会ったの秋の終わりとはいえ、11月初旬だったかな? 秋の終わりに編集部から連絡が来て、編集部に出かけたのは12月入ってて、同居から1ヶ月後は1月中旬から下旬にかかるあたりの満月前後かな? んんん? てのはまあ、あとからまた考えるけど、12月にしろ1月にしろ、むしろ1月なら、玄関前の階段で180分は寒すぎるよおおおって気分になっちゃうんだけど、家中床暖房でぽかぽかなのかなー。 純が180分べらべらと友達としゃべってた結果(たぶん矢晴が声かけようと思う前からしゃべってたんじゃないかと思うと、3時間じゃきかないな…?)、めっさチクチク言葉ばっかり使って「嫌な奴の話を面白げに」話してたことを考えると、純の普段というか矢晴と会う前というか、なんか純がむっちゃ嫌な子に思えて。 それぞれの付き合い方で見せる面が違うだろうとは思うのだけど、なんかこう、純に対する印象がまた転換する話だったなあと。

優先順位

 【第12話】で、矢晴が「純のなかで自分は多くの“好きな人”のうちの一人に過ぎない」と知ってか気づいてか思い込んでか、自分のなかの純の存在がどれだけ大きくなってるか、心を占めているかに気づいて、怖くなって逃げて、というのが、切ない辛い。そして赤面と泣き顔がかわいい。 で。それで。 【第6話】の私があまり好んでない挿話の『絶望してる時に自分を優先順位の一位にしてくれない人間しか周りにいなかったらどうなるか知ってるか?』が効いてきてる気がするんだけども。 純は! また! 同じ轍を! 踏んで! と怒りたくなるんだけども。 矢晴が心開いてきたのに、『私は大きい家に好きな人を集めて一緒に暮らすのが夢なんだ!』とか『仲のいい友達が中年になっても生活に困ってたら一緒に住みたいし』って、「矢晴が特別だから一緒に住んで世話をしたい」わけじゃない的なことを言ってしまうから、『自分の価値がすごく下がった気分になるのはなんでだ?』って矢晴が落ち込んで。 矢晴は純が「古印先生好き好きオーラ」バシバシ出してるから、「自分を一番認めてくれる・一番大事にしてくれる人」って思って、心開きかけてただろうし、純に馴染んできてただろうし、って思うのに、別に純にとっては「好きな人の一人」ってだけだった、って知っちゃうのは辛いよー。「優先順位の一位じゃない」んだもの。 たぶん、最初の「夢なんだ!」のあとに、「だから、一番大好きな古印先生が一緒に暮らしてくれて嬉しい!」とか言ってたら、もうちょっと違っただろうに……と思っちゃうんだけど、言わないよねえ……。 【第7話】の『ルームシェアで暮らすの夢なんですよ』ってのが、矢晴を籠絡するための嘘じゃないとは思ってたけど、方便だとは思ってたのに……。 ううう。 矢晴だけ大事にしてほしいようぅ……。

だい12わ!

 きたー! って、大喜びで読んだけど、作家さんのコメント(キャプション)でびっくりというか自分の浅ましさを恥じるというか。とはいえ、読んでた時に、なんだか純の顔が変わった…? という疑問は解消されたので、安心。いやなんか、違うけど。 え、でも40ページのボリュームは嬉しいし、転居1週間目どころか1ヶ月後(粗相した日)までいくじゃないの。わお。嬉しい。 『私が1日のうちまともでいられる時間は2時間だけであり』という短い説明で、朝はまともに活動できてないことがわかった。転居1週間目の朝ベッドで歯磨きされて台車で運ばれては、毎日のことだったんだ、安心した。 矢晴が「自分は純にとって大勢のうちの一人なんだ」みたいな感情持ち始めてて、これはもう矢晴が純のこと好きになってていよいよBL!と滾りつつも、『自分の価値が下がった気分になるのはなんでだ?』って矢晴の気持ちが切ない。泣ける。 あと純がちょっと嫌なヤツになってるところ(チクチク言葉使いまくり)が、同居して1ヶ月も経って慣れたから本性隠しきれなくなってきた? って感じもして。 矢晴の背中のなかの蟲を矢晴が自覚してるのも恐ろしくて。 『そんなに楽しいか?』って言いながら、ふざけあって笑い合ってるふたりがむっちゃかわいいのに。 矢晴の頭のなかいっぱいの純がむっちゃかわいいし、ちゃんとそこ見てくれてたんだ〜ってシーンと見たことない純のシーンと。あああ、かわいい。切ない。矢晴の純を好きになりたくない気持ちが、つらいよー。 交通系ICカード持ち出してたから、家出してどっか行っちゃうかと思ったらお酒買うだけでよかったーと思いつつ、全然よくないよーと思いつつ。純のカード盗んだのか、自分のカードなのか気になるんだけど。物置漁ってて、自分の持ってきてた服散らかしてポケットにICカードあったの気づいたから、自分のってことかなあ? 純の部屋も漁ってた感じしたから、純のかなあ? ここがちょっとはっきりしないけど、純のだったらもっと厳しい状況になりそうで。 1ヶ月目の純が昼に来たのは、矢晴が朝に来た純に『昼まで寝させて…』って言ってたからだったし、やっぱりちゃんと純はノックするのね。 飲んじゃって動けなくて『じゃぷっ』ってのが、擬音もすごい。【第1話】の最後に描かれた『最低限度の一線を超えてしまったのは望海 可純の家に住み始めてから1か月目の...

●第11話までのエピソードざっくりまとめ

 単話感想でざらっとまとめていたのを、まとめて。 【第1話 虚・プライド】 2年ぶりに漫画を描いた矢晴 矢晴の漫画を読む純。『漫画への思いは漫画で描いて返す』 矢晴の過去。2年前。27歳当時。古印葵のデビューから6年間のこと 最後に描いた漫画のこと。病んでいく過程 矢晴の過去。1年前。28歳当時。純の家に引っ越してから1週間目 ベッドで歯磨きされ、台車で運ばれ、温室で朝食を食べさせてもらう矢晴 純の家に引っ越してから1ヶ月目 粗相する矢晴、慰める純 【第2話 後悔・プライド】 第1話ラストからの続き。同居1ヶ月。 過去回想、デビューから漫画を描くのをやめるまでの経緯。 現在に流れて、担当から連絡をもらい編集部へ出かける。 編集部で四階と遭遇。 望海可純と出会う。 【第3話 攻撃性・マインド】 四階をやりこめる望海可純 古印葵が受けた賞の授賞式にいたことを話す望海可純 古印葵にファンだと告げて早口になる望海可純 帰ろうとする古印葵を散歩に誘いサインをねだる望海可純 【第4話 荼毘・アルコール】 散歩する純と矢晴 居酒屋で吐くほど酒を飲む矢晴 アパートに送られる矢晴 矢晴の部屋(ゴミ屋敷)を掃除した純 矢晴に同居を持ちかける純 本音を吐露して泣き出す矢晴 矢晴を抱きしめて祈るような哀願するような説得をする純 【第5話 上薗純、曰く(1)】 古印葵の漫画との出会い E・B大賞授賞式 純のデビューといなくなった古印葵。3年ぶりの古印葵の漫画 純の布教活動 アシスタントとの会話、純の自分の漫画に対するスタンス 布教しても一向に古印葵を認めてくれない世の中 編集部。菊池担当の小説の挿絵に古印葵をすすめる 古印葵が編集部に来るときの日時を教えてもらう約束をする 一人で活動している漫画家が人知れず死亡している事例があることを担当から聞く 担当が最後に古印葵に会った時の状態を聞く 絶対に会えるように不安要素を取り除く 【第6話 上薗純、曰く(2)】 担当と食事。古印葵のことと四階についての話 喫茶店でサインをねだる純 散歩中、古印葵が目に止めたミント色の錆びた鉄柵 居酒屋。映画の話 古印葵の部屋に愕然とする純。掃除をする純 純の高校時代の出来事 矢晴を抱きしめ、「約束」をもちかける純、怯える矢晴 【第7話 誘惑・ユートピア】 純の言葉に怯えて部屋の隅に逃げてる矢晴 内省しわか...

出会ってから同居生活のざっくりまとめ

 純と矢晴が編集部で出会ってからのいろいろ。【第11話】までのまとめ。 矢晴 純 1日目(水) 編集部で出会う 秋の終わりの水曜日 望海可純に助けられ、褒められたが自尊心がズタズタになる。なぜか純と散歩している。 カフェで純にサインをする。純に酒をおごってもらい泥酔 古印葵に挨拶し、四階をやりこめる。古印葵をほめる。散歩に誘い出すことに成功。 カフェで矢晴にサインをもらう。矢晴に酒を奢り、自宅まで送る。矢晴の自宅に衝撃を受け、掃除する 2日目(木) 翌日 木曜日・缶ビンの回収日 純に部屋を掃除されていた。純に同居を持ちかけられる。純が帰った後布団に潜り込み、何もしないで1日が終わる 徹夜で矢晴の部屋を掃除していた。矢晴に同居を持ちかける。また来ると告げて帰る。 3日目 翌々日再訪 同居を持ちかけられ、口約束なんて破り放題だとフラッシュバックし思考放棄状態に陥る。風呂を借りに純の家に行く。1日半ぶりの食事が弁当とピザ。巨大ビーズクッションで微睡む。 矢晴に差し入れを持ってくる。同居を持ちかける。同居に際して矢晴に有利な紙の契約書を用意すると約束する。矢晴に自宅の風呂を貸す。ゲームなどして遊ぶ。夕方買い物に出かけ6時過ぎに戻る。矢晴と夜まで一緒に過ごす。 4〜9日目 10日目 1週間後引っ越し当日(転居1日目) 純の家に引っ越す。風呂上がり、純の用意したパジャマを着る。睡眠薬を多めに飲む 矢晴が引っ越してきたことに喜ぶ。矢晴とおそろいのパジャマを用意している。 純さん、矢晴さんと呼びあい、ほぼ敬語での会話 11日目 転居2日目 昼に目覚める。身体疲労がとれて気持ちが上がる。純に財布を預かってもらい、断酒することに決める。15:31酒を探してキッチンを徘徊。サイダーをもらうが味がしない。ロボット掃除機にゴミを捨てたと咎められている気分でソファーに上がり、鼻をかむ。鼻をかんだティッシュを投げ捨てようとして純にキャッチされて戻される。その後は活動しない。 矢晴の財布を預かる。矢晴の断酒に協力する。仕事部屋で仕事。キッチンでみりんを飲んでる矢晴をたしなめ、みりんを流す。矢晴が投げ捨てようとしたティッシュをキャッチして矢晴に戻す。夜、泣いている矢晴をなだめる。 断酒1日目。料理酒と本味醂を飲んだ。すぐに純に見つかって隠された。 12日目 転居3日目 純の部屋の前まで行く、...

感想を書き終わってしまった

 現在までで出ている話数11話分の単話感想を書き終わってしまったため、ちょっとこれからどうしようかな、という気分になっている。 感想自体は10記事毎くらいのペースでやってたけども、今後はたぶん次の話が出るまで何記事書いてるんだろう?レベルになりそうだし。11話更新からかれこれ1ヶ月経過してて、私はこのブログを1ヶ月に50記事前後書いてて。 なにをそんなに語ることがあるのかって感じに書きすぎな気がしないでもないけども。ちらっと思ったことをさらっと書きたいのと、それぞれ一応1つのテーマで1つの記事にするから細切れではあるのと。 でも、まだたぶん語り足りてないと思う。 二次創作も書きたいなーと思ってる。「矢晴のバイトのもしもの話」はいくつかネタをメモしたものの、かなり散漫でまとまるのかどうか、といったところ。 【売れうつ】本編のほのぼのライフはあと3話、そこから最終回までは30話前後はあるはずで。まだまだ先は長いなあ。続きを読むのが楽しみだ。

【感想】第11話 蜘蛛・オキシトシン

 表紙がセンシティブ判定されたらしくの、表紙差し替えというびっくりなことが起こった。前屈する純と矢晴がかわいくて良い。 以前の表紙が見れるところ 【第11話】は表紙や本編あらすじのフォントが少し違っている。フォントも表現に使うかたなので、意図的だろうと思う。なにより、これまでの話ではひび割れていた『うつ病漫画家』の文字がひび割れてなくて。まだガタガタはしてるけども、快方に向かっていることがうかがえる。 さて、本編。 転居6日目の夕方から。【第10話】で描かれた5日目の翌日。純のネームを見て、純にいろいろ漫画のことを話したことを『ずっと恥ずかしくて後悔してて』と言ってるし、被害妄想のなかでは上半身裸でうつ伏せになってる矢晴に馬乗りになった純に背中にマジックで『えらそうに売れっ子漫画家にご高説を垂れて恥ずかしくないのか』なんて書かれて泣いちゃってる矢晴がかわいいし、現実でふかふかの布団にくるまって泣いてる矢晴もかわいい。 時計は17:13。ジョギング帰りの純が矢晴に野良猫の空中バトルの証拠写真を見せに来る。純は矢晴の部屋に入るとき、ノックはするけど返事待たないな? 【第1話】の1ヶ月後だとノックすらしてなかったな…? 省略されたのかもしれないけど。 矢晴は落ち込んで泣いてたところだから、楽しげな純に『純さんはいつも楽しそうでいいですね…』って嫌味を込めてるんだろうけど、純は素直に『はい』って答えるのがかわいい。でも、『最近落ち込んだことあったかなぁ』って話を続けるから矢晴が言葉にしなかった言葉は通じてるのかな? って感じがする。 『今度から担当に出す前のネーム見てもらえませんか?』っていう純に『嫌です』って即答する矢晴がいい。『なにより漫画を描けないやつが』と泣き出す矢晴がかわいい。純に『漫画に未練あるからですか?』って言われた瞬間の矢晴の表情が好き。 直後に純が矢晴の顔をはさんで変な顔にするところは面白いんだけど、もしかして表情筋のストレッチでも兼ねてるのかな? 自然な流れで矢晴の体を起こして、コタツに誘導してるところ、純ったらやるわね。 言われたとおりにコタツにいる矢晴。ただ、なぜに「いつも純が座るところ」に座っているのかが、気になってしまう。でも、そこに座ってるおかげで純が矢晴を抱くように座るのが自然に見えるから、そういうことなんだなと納得はするのだけども...

中学2年生向け

 望海可純が自身の漫画に対して言ったこと。 とはいえ、この世の中、創作物やら解説書やら基本的には「中学生でも読める」「中学生でもわかる」ように書くべし、となっているかと思う。難しい専門用語を羅列せず、どんな人にもわかる・楽しめるようにの基準が中学生。 王道バトル漫画だから中学2年生(いわゆる中2病)向け、というわけではなくて、「わかりやすさ」の点で、中学2年生向けにしてるかと。(それがセリフが長くて野暮ったいと純が自身の漫画を嫌う理由だろうけど) さまざまな知識レベル、読解レベルがあるなか、ターゲット設定を中学2年生あたりに持ってくると、下は小学生(ちょっと背伸びして見る)から上は上限なしですべての人を対象にできる。 それだけの広範囲のターゲットのうち、漫画を読む人8割のうち、バトル漫画が好きな人8割のうち王道が好きな人8割のうち……と、「望海可純の漫画を好む人」まで範囲を狭めていっても相当数の人間が残る。結果、望海可純は売れっ子になる。 古印葵の漫画は、そういった面では、ターゲット層がそもそも狭いと思う。大学生レベルか玄人向けか、みたいな。 B誌は「古印葵が国内・海外のコミック賞で部門賞を獲った」から、話題性や外部評価のみで声をかけて、古印葵らしくない漫画を描かせようとして、古印葵の漫画をことごとくボツにしていった。 A誌に戻ったときの新担当の菊池さんは、古印葵の漫画が好きだったけども、より多くの人に読んでもらえるようにと、流行りのジャンルをすすめて、古印葵らしさを削っていった。 編集として一番古印葵を理解していて有能だったのは、古印葵の最初の担当さんだよなあ、カムバック担当さん、って気分になる。

読者への信頼

 【第10話】での純のネームに関しての古印葵の提案と解説について思うこと。 古印葵は「人間」を知ってる・多角的に想像できるのだなあ、ということ。視覚情報が記憶や思考に与える作用とか、さらには身体反応に至るまで。心の機微とかまで、すべて知った上で理論的に紙の上に表現できてしまう。まさしく天才。 そしてまた、その表現をすることによって、どのように読み取られるのか、ということについて、かなり読者を信頼していると思う。「わかる人にはわかる」「わかる人がわかればいい」というレベルではあると思うけども。 対して、純は、読者を信頼してないんじゃないかなーと、思う。だから、自分が表現したいことを読まれたいように読んでもらうために、言葉で事細かに説明してしまうのではないかと思う。 それが、矢晴からの評価では【第10話】『言葉で説明してもらわないと理解できない人は大勢います』『純さんの漫画は言葉が親切です』となるけども、純自身は【第3話】『セリフ長いし理屈っぽいし古臭いし野暮ったくてダサくなるし』【第10話】『長編って設定が複雑になる分説明も多くなるし』『ゲームのチュートリアルみたいなキャラが多くなればなるほど雰囲気が野暮ったくなるじゃないですか』と、言葉を多く使ってしまうこと、絵で語れないことを「野暮ったいと嫌う」んだろうなと思う。 【第5話】【第6話】の純視点の話からして、純は人間が嫌いだよなあ……と思えるのだけど。「古印葵を認めない人間が嫌い」なのか「そもそも人間が嫌い」なのかと考えてみると、「そもそも人間が嫌い」でその中でも「古印葵を認めない人間はもっと嫌い」な気がしてくる。そして「古印葵は神」みたいに思ってそうだなと。 古印葵との漫画談義のなかで、純が「読者を信頼すること」に気づくか知るかできたら、望海可純の漫画は純の理想の漫画に近づくだろうなと、思う。

Unexpected Encounter

 古印葵の2冊目の短編集のタイトル。 国内、海外のコミック賞でそれぞれ部門賞を獲得したのもこの本で、純がサインをもらったのもこの本で、菊池が四階にすすめたのもこの本で、四階が古印葵を酷評したのもこの本で。 タイトルを訳すと「予期せぬ出会い」となるのだけど、タイトルから想像すると、表題作はちょっとSFチックな恋愛漫画かなー? という気がしたりもする。 メタ的というか、【売れうつ】という作品においての象徴としては、矢晴が純と出会ったことが、矢晴にとっての「予期せぬ出会い」にはなるのだろうと思える。純が矢晴に会えることになったことは純が引き寄せた必然とは思うのだけど、純にとっては古印葵の漫画との出会いが「予期せぬ出会い」かな。 望海可純の連載漫画のタイトルは「シヴァ・アンバー」なのだけど、こじつければ、シヴァ=再生と破壊の神 アンバー=琥珀・琥珀色 純は茶髪で琥珀色の髪と言えなくもなく?くらいの、矢晴を再生する神=純、みたいな感じになるのかなー? と考えてもいいけど、さすがにそれはなんだかしっくりこないな、という気はしている。

説明パートと技術的な話のシーン

 私は【売れうつ】が大好きだけども、全部を絶賛してるわけではない。 全体通して面白いんだけども、私が読んでて多少ダレる部分があるな、と感じるのが説明パートと技術的な話をするシーン。あと、純の学生時代のエピソード。(この純の学生時代のエピソードはどうにも納得できないというか、腑に落ちないというか、なんだかなあって思うので、誰か解説してくれまいかと思っている。) 説明パートというのは、物語上必要な設定の開陳ではあるのだけど、ストーリーに乗り切ってなくてちょっと浮いてるな、と思えるところ。「引越し当日夜の食事やロボット掃除機の説明部分」、「矢晴の部屋のクローゼットについて」。とはいえ、クローゼットの説明をすることでお揃いパジャマ姿の純が矢晴の部屋にいる必然性が出てくるので、必要なわけだけど。 技術的な話をするシーンというのは、第10話、第11話の漫画の話をするシーン。それはそれは重要なシーンなのだけど、たぶん、こう、べらべら喋るだけで動きがないシーンになるから、多少ダレる気分になるのだろうな、とは思う。あと、こんなふうに古印葵が漫画について語る、古印葵と漫画について語り合うシーンでは、純がちょっとポンコツ風味に見えるのが、個人的に好みではない、というのが強い。 可愛らしい純は好きなんだけど。好きなんだけども、純の得体の知れなさがまったく出なくなるのが、さみしいのかもしれない。 古印葵が漫画家として復帰する過程で、こうして漫画について語り合うシーンは増えると思うのだけど、どうなるのかなあ(自分の感想が)というのはちょっと不安がある。 【第1話】の『漫画への思いは漫画で描いて返す』って言ってる純はかっこよくて好きなので、古印葵と漫画の話するときもそんな感じのかっこよさが出てきたら嬉しい。 そして、前回の更新からちょうど1ヶ月なので、そろそろ次の話が来て欲しい……と切に願ってはいる。(再投稿からだともう数日で1ヶ月だけども)

純は矢晴のことが好き

 じゃなきゃ、こんなことできないよなあと思える献身。 とはいえ、純自身は自分の生活を犠牲にしたりしてないところが良い。あまり構われすぎても矢晴がさらに潰れそうな気がするから、ちょうどいいバランスになってるんじゃないかなーとは思う。 「福田矢晴」という個人が好きなのかどうか、というと、やっぱり「福田矢晴は古印葵だから好き」だろうなあとは思うのだけど。 矢晴が古印葵に戻れなかったとしても「矢晴は古印葵だったから」で、好きだと思うし。矢晴が古印葵に戻れたら「矢晴は古印葵だから」で好きだろう。どっちにしても、好きなことに変わりがなくて。ただ、もしも、矢晴が「古印葵を抜きにして、福田矢晴個人を見て欲しい」って思った場合に、どうなるのかな? と考えてみると、まったくもって想像できない。純がフリーズして機能停止しちゃいそうな気がする。 純は古印葵の漫画に初めて触れたのは20歳前後で、そっから3年くらいは雑誌に載る読み切りを読むだけで。古印葵を直接見れたのはE・B大賞の授賞式で。純がアシスタントしてた牧野先生は、古印葵を「作風と絵柄から女性だと思ってた」っていうから、純も古印葵の性別までは知らなかったかもなあ、と思うと、ここまでは純粋に「古印葵の漫画」だけが好きだったかなとは思うんだけど。 古印葵の見た目が純の好みにドンピシャだったりするのかなー? とか。授賞式のスピーチむっちゃ詳細に覚えちゃってるくらい、生身の古印葵も好きになってるよなあとは思うのだけど。ただまあ、憧れ強すぎな気はする。 憧れ強すぎて、現実の福田矢晴に幻滅しないか? 大丈夫か? っていっつも思っちゃうんだけども、いまのところは、矢晴のこと大事にしてくれてるし、同居1ヶ月目のあの言葉を考えると、矢晴に幻滅するってことはたぶんない……とは思うんだけど……。 慈愛とか変なこと言ってないで、普通に矢晴のことを好きになってほしいなあ、純。

■【売れうつ】の二次創作(4)(小説)

 ふたりの関係と暮らしぶりをちょこっと考えてみたり。 こんなだったらかわいいかなーという妄想だけ。 ■

運の良さ

 作中で、たびたび純は「運がいい」と言っている。降って湧いた幸運であるのか、自らが引き寄せた必然であるのか、純が努力や詳細を説明するのを避けるために「たまたま」「運がよく」と言っているのかは定かではない。 【第5話】アシスタントとの会話で『だから正直なんで売れてるのかよく分かんない私って運がいいからなあ!』と言っているが、実際は「売れるものしか描いてない」と思っているかもしれないなとも思える。この時点で、純はアシスタントとのライングループを退会した後なので、アシスタントに対して表向きの顔をしているようで本音は絶対言わなそう。 【第8話】矢晴の通う銭湯が休業で矢晴を家に連れて行けることになった際『こればっかりは私の運が強いとしか言いようがなーい』と、僥倖を喜んでいる。この言い方と比べると、アシとの会話での「運がいい」は「本当は運がいいとは思っていない」ように感じられる。 【第3話】『この世に中学2年生向けのマンガを読む人が多くて』『私がたまたま得してるだけですよ』これは、古印葵の前での謙遜でもあるし、正直な気持ちでもあるのだろうと思う。謙遜も下手だな、と思えるのだけど、悪い言い方をすれば「この程度のもので喜ぶ人間が多くて世の中チョロい」みたいな雰囲気を感じてしまったりもする。 「古印葵を認めず、望海可純の漫画をもてはやす低俗な世の中」に純が納得いかないのも、純自身が「チョロい世の中相手に売れるメソッドだけ詰め込んだ、低俗な漫画を描いている」という自覚があるからかもなあ? とも思えて、売れていることに関しては本当は「運良く売れた」とは思っていないように思える。 とか考えていると、純のメンタルがむっちゃ心配になってくる。これ、普通に病まない? 漫画描くの楽しい? ねえ…? そこらへんの、純の内面の正解がまた「純の視点」で描かれてくれたらいいなあ。はよう続きが読みたい。

天才か秀才か凡才か

 矢晴と純の才能について。 私は、このふたりは「種類の違う天才同士」と思っている。 「矢晴を天才、純を秀才」と考えている人もよく見かけるし、「純は天才、矢晴は凡才(凡人)」と考えている人も見かける。作中では【第2話】で純のデビュー作のアオリには『22歳鬼才現わる!』とされてはいる。 矢晴が、デビューしてから2冊目のコミックスで、国内、海外のコミック賞でそれぞれ部門賞を獲っていることから、「なんだ、結局才能がある人間の話か」とがっかりして読むのをやめた、という方も見かけたことがある。「なんの才能も取り柄もない凡人な自分」に引き寄せられなかった、共感できなかった故だろうと思う。 「なんの才能も取り柄もない凡人がある日突然、超ハイスペックの人に愛されて」、というのは、ハーレクインや少女漫画では王道の、マジック・フーフー系の物語ではあるけれど。夢気質の高い方が好みそうな物語かな、と思う。 もしも、矢晴が凡人だったとしても、「望海可純にとっては、古印葵である福田矢晴は天才」なわけで、結局は「天才×天才」の物語ではあると思うのだけど。 【第10話】【第11話】で、矢晴の漫画家としての才、人間性が描かれていて、そこに「古印葵(福田矢晴)の才能」の片鱗を感じている人は多い。【第3話】の編集部で純の本質を分析し対処を考えていたところからも、矢晴の聡明さがわかる。 エピソードが進むにつれて、むしろ望海可純=上薗純のほうが、「要領と運がいいだけの凡人」に見えてきて、古印葵=福田矢晴の才が際立って見えるようには思う。 それが「天才を表現するために周囲を無能にする」という技法でなければいいなと思うのだけど、どうなんだろう…? とは考えていたりする。純自身、古印葵の前だと舞い上がってしまってややポンコツになる、くらいだとかわいくて仕方ない気分にはなるなと、思う。