たかが金

 【第6話】で描かれた居酒屋での映画の話。酒に酔い饒舌になった矢晴が『でも絶対助けてくれる主人公が…』『やっと手に入れた大金を盗まれたのに「たかが金」って言ってくれるなら…』『希望じゃぁないですか』と語る。

矢晴自身は、その「たかが金」がなくなって悲惨な人生になっているわけで。

純は『金さえあれば解決できるものは多い』『「たかが金」で解決するものがこの世には五万とある』『私はあなたの前では「たかが」を渡さず口だけ出す偽物なんかにならない』と、矢晴と同居して矢晴の世話をすると決めた。

【第9話】で純は矢晴を助けたことに対して『好きな人が目の前で死にそうだったからあれこれ悩む暇がなかったんです』『気負わないでください』『たかが金じゃあないですか』と語る。

純としては、矢晴=古印葵を助けるためなら、どれだけでも金が出せる。売れっ子漫画家になったことで、金持ちになってるから、「金という力」だけは潤沢にある。それが売れなかった漫画家の矢晴に劣等感を抱かせる原因にはなるのだけど、純としては矢晴の「希望」になりたいんだろうなと、思う。

今のところ、矢晴のために使ったお金は「矢晴の引越し代と、住んでたアパートの原状回復費用(けっこうな額)」「矢晴の生活費(衣食住)」で、将来的に矢晴が純の家を出ることを決めたらその時の引越し費用と初期費用は純が負担するはずではあるけど、矢晴が純と幸せになるなら、仲睦まじく一緒に暮らしていくんじゃないかなあ? と思う。矢晴が漫画家として復帰してお金稼げるようになったら食費とかは矢晴も出しそうだけど。

矢晴の住んでたアパートをそのまま借りておくほうが、費用的には出費が少なくて、矢晴が純の家を出るとなったときに、元のアパートにそのまま戻れる、みたいな感じでよかったんでは? と考えんでもないけども、純の家を出て元のアパートにってのも辛そうな感じはあるし、純としては「戻れる場所」は持っておきたくなかったかもな、とは思える。

もし、矢晴のアパートを清掃だけして荷物運びだして空っぽの状態でも持っていたら、矢晴は純の家を飛び出して酒を買ってアパートに逃げ込んでたかもなあ……とは思える。なにもない部屋でお酒飲んで丸まって寝てるところを探しに来た純が見つけて純の家に連れて帰るとか、ちょっと見てみたいシーンではあるけども。ああうん、見たい……。

話がそれた。

純は「お金だけ出して終わり」にはしてないのがいいのだけど、矢晴は純に世話になってる現状を【第11話】『純さんって私を働かせるつもりもないのに住まわせてるんですか?』『これじゃ私ただのヒモじゃないですか』【第1話】『私は働きもしないで赤子のように世話された』『こいつの瞳に反射して見える自分の姿は腐臭がするほど愚かで網膜を爛れさせる』と考えていて、人としての尊厳だとかプライドだとかが常に傷ついてる感じがする。療養期間だと割り切って、純に身を任せて安心して過ごして欲しいものだと思う。


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