【感想】第12話 幼生・トランスフォーム
矢晴の世界に純がいっぱい、な表紙から始まる【第12話】。また、タイトルの『うつ病漫画家』がひび割れてしまっている。うう、矢晴……。
前回の転居6日目、笑顔を見せた矢晴のシーンから続く。『やめいっ』と笑顔で純を押し返し、しばしの間とはいえ、純とふざけあって笑い合っていたことがうかがえて、微笑ましくもあるが、『私が1日のうちまともでいられる時間は2時間だけであり』と矢晴の現状が語られる。
翌日、転居7日目(1週間目)は第1話で描かれているため、無声のダイジェスト。先のページでの説明のおかげで、矢晴が純にベッドで歯を磨かれて台車で運ばれているのはほぼ毎日のことのようで、安心した。うん、安心した。
2週間、3週間、はさらっと流されているものの、矢晴の精神状態はほとんど変わらずというか、体の状態も含めて悪化しているような…? という感じ。『今は酒という逃げ道が封鎖されてしまっている』から、酒に酔うことで放棄していた思考がすべて襲ってくるみたいな…? という状態なんだろうなあと。わりとなんでも良くなる前は数段落ちるもんだから、どどんと落ちてもらって、これからの浮上に期待したいところ。
矢晴がうめいているだけで意志を汲み取るという純のお世話が、本当にそれは矢晴の意志なのか…? と疑問を持ちたくなるくらい、わりと独善的でぐいぐいと無理くり引っ張っていく感じがあるんだけど、そんくらいやるほうが矢晴にも合ってそうだし、純も無理してなさそうで良い。『食べてるところ見せてほしいな〜』ってセリフが好き。
純のクローゼットやら部屋を荒らす矢晴に『お酒探してたんだ?』と寄り添う純がいい。縮こまった矢晴の隣で余計に純が大きいのが引き立つ。純おっきい。その後、ルーフバルコニー(?)に連れ出して、日光浴しながらおしゃべりするのもいい。ただここらへん、純が矢晴のことを理解したいからか、一般化しようとしてる感じがすごくして、「矢晴自身のことを知りたい」じゃなくて「矢晴のことを自分の知ってる言葉の範囲に落とし込みたい」みたいに見えて、それを矢晴が『人間は』『今名前のある病気にしかなれないんだよ』と軌道修正してくれてる感じがする。話し始めた矢晴をじっと見つめる純の目が好きだなあ。
そっから1コマと3ページの長尺の矢晴の話をしっかり聞いてくれた純が良い。でも純の言った『ヘビを見るのと操るのとじゃ違うんでしょうね』の真意が私にはわからないのがさみしい。
昼食なのか夕食なのかわからないけども、楽しい食卓だったはずが……という食事シーン。純の山盛り大盛りご飯の量にびっくりする。『それに私は大きい家に好きな人を集めて暮らすのが夢なんだ!』という夢は、わかる、わかるけど、矢晴にとってはどうなのよ? みたいな。純の話を聞いてる矢晴の背景が黒ベタで、すごいショック受けてる風味。
『自分の価値がすごく下がった気分になるのはなんでだ?』という矢晴の心が辛い。そりゃもうこれまでの純は「古印葵が一番大事、何をおいても古印葵」って感じだったのに、「多くの好きな人のうちの1人」みたいに言われてしまっては、見積もってた価値が大暴落だよねえ……。純が古印葵大好きな状態で、じゃあ福田矢晴は…? と思うのもわりと辛そうな気がするんだけど、これどっちがより辛いなんてはかれないな……。
『引っ越してから1ヵ月が過ぎた』スマホなくしたと2階から降りてくる矢晴。2階で何してたんだろ? 2階の物置漁ってたってことかな。リビングで純は友達2人とビデオ通話で盛り上がってて、矢晴が待ってる時間経過は180分を越えて……。180分て何分よ!? みたいな衝撃を受けつつ。矢晴が来る前から話してて180分越えて話してて、だと、3時間半以上は話してると思うんだけど、その間に一度でも純がトイレに立ってくれたら、廊下にトイレがあったら、待ってる矢晴に気づいてくれたろうに。とも思うし、矢晴待ちすぎーとも思う。
180分以上階段で待ってた上に、純からはチクチク言葉で人の悪口聞く羽目になるし、純には自分以外にも長時間楽しく喋る相手がいるし、その相手と今度どっかに一緒に行く約束してるし、矢晴はひとりで階段で待ってたし、矢晴は純の一番じゃないし、みたいなぐるぐるがあったんだろうなあという感じで純に当たっちゃってる矢晴がかわいい。
『純にとって私はチワワ何匹分だよ?』『今、私は結婚相手の喪失を埋める象徴物で己と純の関係を喩えようとしたのか?』ってところがすごい好き。矢晴かわいい。自分の思考に気づいて真っ赤になって吐きそうになるところ。結婚相手=チワワ=愛情を注ぐもの くらいの? 純にとって矢晴はどれだけの愛を注ぐものなのかの量を知りたかったみたいな。BL脳としては、ここらで、おおおお……って盛り上がってくるわけで。
ここで、矢晴が背中に蟲がいるって気づいたというか、感じたというか。前回ラストで爆ぜてるように見えてたのは、溶けて内側に入り込んだみたいなことだったのか、純への気持ちが内側に浸透したってことなのか。蟲が矢晴から純への気持ちなのだとしたら、あの日抱きしめられたときにはすでに純への気持ちが芽生えてたということで…? まあ、矢晴にとって、矢晴のことを(古印葵としてだけど)好きだと忘れないと守ってあげると言ってくれるのは純以外にいないから、そりゃあ最初から絆されててもおかしくないなと。蟲が溶けて変態しようとしているのが、そこから何が生まれるのか、それとも溶けたままになってしまうのかと、ドキドキする。
『身分不相応の家でサイボーグみたいな人間に抱きしめられるのがそんなに楽しいか?』っていう言い方と、絵が、ほんとに楽しかったんだろうなあと、笑顔のふたりがかわいくて。描かれてない2〜3週間でもそういうふれあいがたくさんあっただろうなと思って。そこらへんもじっくり見たくなる。
自分の気持ちを自覚して、怖くなって逃げ出して、PASMA持って夜の街を走って。純でいっぱいになってる矢晴がかわいくてたまらんのだが。純から逃げ出して、どこか遠くに行っちゃうんじゃ…? と思ったらお酒買うだけで、ちゃんと純の家に帰ってきてくれてよかったーーと安堵する。
純の家じゃお酒飲めないからって公園とかで飲んで泥酔してそのまま寝ちゃって朝凍死してたらどうしよう、までよぎっちゃったけど。1年後が確定してるからそれはないというに。
お酒抱いてニコニコしてる矢晴がやっぱかわいいけど、そんな笑顔を純が引き出してあげて欲しい。酔ってるときは血色よくなって目の下のクマとか消えてかわいらしい顔になるところもわりと好き。
同居1ヶ月で、断酒してから1ヶ月で、スリップしちゃって。お酒飲んだことがバレたくなくてペットボトルは窓の外に捨てて恐怖でドキドキしてて死にたくなってて。動けなくて――で、『じゃぷっ』という効果音が、すごい。
- 転居6日目、純とふざけあい、活動時間が切れて一晩泣いて耐える
- 転居7日目(第1話で描写)ベッドで歯磨きされ台車で運ばれる
- 2週間、3週間と過ぎ。毎日後悔をして過去に蝕まれる。
- 純の献身的な世話
- 酒を探して部屋を荒らす矢晴
- 日光浴。矢晴の病気の話を聞く純
- 食事。純の夢を聞きショックを受ける矢晴
- 引っ越してから1ヵ月。
- ビデオ通話をしている純。階段で180分以上待つ矢晴
- チクチク言葉を使って悪口を言う純。純に当たる矢晴
- 自身の背中の奥に幼虫がいてなにかになろうとしていると考える矢晴
- 酒を買い、飲んでしまう矢晴
- 翌朝。起こしに来た純に『昼まで寝させて…』と言う。
- 動けなくて、ベッドで粗相する
矢晴が純への気持ちに気づき始める。それが恋なのか依存なのかはまだわからないけれども、BLなんだから、ねえ。
まだほのぼのライフのはずなんだけども、ほのぼの……?
純でいっぱいになってる矢晴のところのいっぱいの純がかわいい。風呂上がりの純とかホットケーキらしきもの差し出す純とか、本編で見れてないところの純がいたのもうれしいけども、恍惚としてる純とかネーム見てもらっててドキドキして待ってる純とかまでいたのもうれしい。ちゃんと見てくれてたのね、矢晴。
この【第12話】の続きは【第1話】終盤から【第2話】序盤にあるので、【第13話】では、純視点が来るのか、【第2話】に描かれた後のことが描かれるのかと、次の話が待ち遠しい。
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