サイボーグ

 矢晴の気持ちが切ない、辛い。

元の生活に戻るのも怖いけど、純でいっぱいになるのも怖くて、純から離れたほうがいい理由を一生懸命考えてる感じがする。

『どうして元の生活が怖い??』『ひと月ばかりの呆れた夢から覚めて今まで通り生きるだけだろ』『身分不相応の家でサイボーグみたいな人間に抱きしめられるのがそんなに楽しいか?』

って考えてるところで頭に浮かんでるのは、ふたりでふざけあって笑いあってお互いのほっぺをむにむにしてて。ふたりの全開の笑顔がかわいい! 絶対このとき幸せを感じつつあったはずなのに。

純のことを『サイボーグみたいな人間』って思おうとしてるのは、「人間的じゃない」とか「あのぬくもりは虚像」とか自分の感じてた上薗純を否定したいってことだろうなあとは思うんだけど、わりとたぶん純ってサイボーグみたいなとこありそうで、言い得て妙みたいな気分にもなったはなった。

『抱きしめられるのがそんなに楽しいか?』って楽しかったんだろうなあ、愛しくなってたんだろうなあ、安心したんだろうなあ、と、わきあがってきてしまう。


そのまま純でいっぱいになって幸せになってほしかったなあと遠い目をしてしまう感じになるのだけど、これから純がどう巻き返すのか、楽しみでもある。

【第1話】冒頭の1年後の矢晴の思考を思い返すと、かなり厳しい道程だよな、純にとっても。


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