汚い思想
矢晴は純をあの夜に精神的に言葉で殴りつけたと思っていて、さらにその殴りつけたことによる純の反応にいくばくかの快を見出して、『私の苦しみを和らげるアヘンくらいにはなっただろうか?』と考えるものの、その考え自体を「汚い思想」として、さらに自分を苦しめてしまう。
難儀だな、矢晴。
でも、この思考の感じだと、朝に「お互いぶちまけて殴り合わなきゃ」とかなんとかってのは、かなり方便だった気もする。半分本気、半分方便みたいなもんだったかしらん? 誤魔化してるよなあ、って思ったのは、あながち間違いでもなかったっぽく。
【第16話】で『自分より弱そうな人間や見下したい人間を攻撃する人間に!』と言っていたのが、たぶん、純に支配されているように思える現状(衣食住の面倒を見てもらい、純に生かされている)のが嫌で、純と対等になりたいか純より優位に立ちたい気持ちだったんだろうなあとは思うんだけど。古印葵としては純なんか足元にひれ伏す程度に讃えられちゃってるんだけど、それは矢晴じゃないもんな……って感じだったかなあ。
そりゃまあ、そうなんだけど。
だから言葉で殴りつけて、純の優位に立ちたかったみたいな気持ちがありつつ、それを実行すると、攻撃的な自分が嫌いだから苛まれ、と。でも、そうやって考える汚い思想も止まらない。
純が薄い本たちにスライディングしてきたときの風圧がやばくて、むっちゃ珍しく矢晴のおでこが全開になってるのが可愛いなと思いつつ、純に『あ!もしかしてお前が描いたエロ本もあるからそんなに慌ててんの? どれだ! 見せろ!』と悪い顔して笑ってるのを、『つい、汚い心がとびだしてしまった』と考えているところもかわいい。
“汚い思想”ではあんなに苛まれているけど、“汚い心”ではそこまで苛まれはしてない感じ。後者では気の置けない友達同士の遠慮のない感じとか、冗談、みたいなところがあるからかしら? これで、見せることを強要して、無理やり見てたら、苛まれそうな気はする。
【第18話】で矢晴が思い返したのは【第16話】の部分だから、【第17話】の部分については、どんなようなことがあったと認識していて、どんなような感情をお持ちだったのか、ぜひに詳しくお教えくだされ……という気分にはなる。
コメント