【感想】第1話 虚・プライド (再)
感想読み返してみると、第1話はなんだか感想になってなかったな、と思うので、ちょっと書き直してみようと思う。
『二年ぶりに漫画を描いた』1コマ目の一人がけソファーに座る矢晴の姿が、なんだか死刑宣告でも受けるかのように見えたり、2コマ目の目元のアップがしっとりかわいいと思ったり。
何周もして第1話に舞い戻ると、純が古印葵の前だというのに「男性」な感じなのがけっこう違和感出てきたな……って気分になるのだけど、1年も一緒に暮らしてたから矢晴にすっかり慣れたからの変化なのか、第1話だからキャラが定まってなかったからなのか、と、ちょっと本筋に全く関係ない疑問を持ちつつ。
矢晴としては『ブランクでボロボロの絵』『鈍った感覚で構成された緩急のないコマ割り』とうまく出来たとはまったく思ってなさげの漫画を『やっぱり矢晴は…』『古印葵先生は天才だ』から始まって『少なくともあと5周はして』『作品の感想をたくさん言いたいけど……』と古印葵ガチ勢の純が言うってことは、ちゃんと「古印葵の漫画」が描けてるんだなあ、と感慨深く。読んでみたく。
『漫画への思いは漫画で描いて返す』って純が、むっちゃ「男」の顔しててかっこいいんだ、これが。その後の展開が怖くなる予感しかしないけど。
『こいつが』『どれだけ』『褒めようが それが嘘だろうが本心だろうが』『関係ない』というモノローグが、けっこう好きで。初読時からここの流れがかなり好きだったと思うのだけど。純のこと信用してない雰囲気とか、なんかいろいろ。うわぁって気分になったところで、すごい美人な純の顔出てくるから余計に、うひゃぁってなる。美人すぎだろ、純。
『二年前 私は漫画を描くのをやめた』からの自然な流れで過去回想が27歳当時。髪も短くて目の下のクマもない矢晴、かわいい。
『まあ漫画なんてただの娯楽だし』のシルエットと風の吹き方がすごい好きなんだけども、ここも、うわぁってなる。
『最後に描いた漫画は初の連載の第4話』から担当の菊池さんとの打ち合わせ。菊池さん、ちょっと細い。こっから1年ちょっとで、矢晴はガリガリに(もとから細いけど)、菊池さんはもちっとしてしまうのね……。
この過去回想だけ見ると、菊池さんが古印葵を潰したように見えるけども、後からB誌で受けた仕打ちとか出てきて、菊池さんだけじゃなかったなあ、とは思えるんだけども。それでもこう、担当としての菊池さんの仕事の出来なさというか空回りというかと、意見言えなくなっちゃってた矢晴を思うと、潰れてく古印葵が辛い。
『これからする話は』『2年ぶりに漫画を描くまでの間にあった 忘れたくない記憶の話』
漫画を再び描く1年前。純の家に同居開始して1週間目。直前のページが自殺しようとしたのかなんなのかズタボロな矢晴と散乱する薬だもんで、ベッドで歯磨きされて台車で運ばれてる矢晴が、死ぬ一歩手前で発見されて純の家に引き取られたとかかしら? とどういう経緯でそうなったのか知りたくなる。冒頭で『あんな生活から無理矢理引っ張り出してよかった…』とゴミに埋もれた矢晴も描写されてるから。
ここのモノローグの『転居させられた』『支配されている』とかが矢晴の屈折した思考をあらわしててかなり好き。甲斐甲斐しく世話をする純と泣いてる矢晴と、「安楽死の薬がほしい」と叶わないことを言って純を困らせようとしてたり自嘲してたりする矢晴と。このふたりの生活の先行きの不安しかない。助けようとしてる純が矢晴と一緒に、矢晴の地獄に堕ちていくんじゃないのかと。物語のはじめにそれは否定されてるんだけども。え、でも、不穏。不安。
同居1ヶ月目。粗相しちゃって泣いてる矢晴の泣き顔がかわいい。純が布団めくろうとして、矢晴がめくられまいとしての攻防の2コマもかわいいんだけど、掛け布団ごとベッドから落とされる矢晴の足が好き。
泣いてる矢晴を慰めてる純がやさしくていいんだけど、ちょっとなんだか矢晴にとっては追い詰められるようなセリフではないかな…? と一抹の不安を抱えながら。
- 2年ぶりに漫画を描いた矢晴
- 矢晴の漫画を読む純。『漫画への思いは漫画で描いて返す』
- 矢晴の過去。2年前。27歳当時。古印葵のデビューから6年間のこと
- 最後に描いた漫画のこと。病んでいく過程
- 矢晴の過去。1年前。28歳当時。純の家に引っ越してから1週間目
- ベッドで歯磨きされ、台車で運ばれ、温室で朝食を食べさせてもらう矢晴
- 純の家に引っ越してから1ヶ月目
- 粗相する矢晴、慰める純
泣いてる矢晴がやっぱりかわいい。
第1話と、第2話冒頭の純は、かなり「男性」って感じで、第2話ラストの乙女な感じの優しい笑顔の純とは、けっこうなギャップがあるなあと思ったり。と書いてて、たった2話でそこまで行ってたんだ!? と何度も読んでるのに毎度思い至るたびに驚いてる気がする。
やっぱり同居して「憧れの古印葵先生」から「生身の福田矢晴」に認識がシフトしていった結果かなあ?
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