【感想】第10話 経験・アンデッド
前回、ラストが『いつもより多めに睡眠薬を飲んだ』という超絶不穏な終わり方で、「矢晴が死なないのは確定してるけど1週間後に台車で運ばれてるくらい動けなくなってるんだけど、ここで…?」とやきもきしての更新までの1ヶ月半が長かった思い出。
【第10話】は初のカラー表紙。白い髪、青い顔で赤い舌を出す純。カラーリングはシヴァ神。破壊と再生の神ではあるけども。矢晴を再生してくれたらいいけど、破壊まではしてほしくない。とはいえ、純と暮らしてく中で勝手に矢晴が破壊されそうな気はする……。矢晴の被害妄想の中で舌に矢晴を責め立てるような言葉が書かれてた純はこんな感じで出てきそう、って感じの怖い顔だなとも思う。
さて、本編。
転居2日目。深夜に多めに飲んだ睡眠薬の影響からか、矢晴が起きたのは昼12:18。『心労は一ミリもとれていないが』『肉体疲労はすさまじくとれた』と、さわやかな目覚め。『スーパーフカフカベッドすげえ!』とはしゃいでる矢晴がかわいい。元気でよかった。
断酒を決意して、お昼食べたときに純に財布を預けてる。その財布があまりにもボロボロで、純はそのうち誕生日とか同居○ヶ月記念とかで矢晴に財布をプレゼントしてやってくれと思ってしまう。『分かりました協力します』って純の笑顔がかわいい。矢晴に頼られてうれしかろうて、と勝手に思っちゃうんだけど、うれしい…よね?
純が仕事してて、ちょっと伸びをして。矢晴の部屋の時計で15:31と時間がわかり。台所にやってきたのは、純か矢晴か。とめくった次のページで冷蔵庫内から見たかなりヤバそうな表情の矢晴。アルコールの禁断症状っぽく。冷蔵庫漁って、台所漁って、料理酒を水割りにしてイマイチで、本味醂を水割りにして喜んでるところで、純登場。この手の大きさの違い、いいわあ。矢晴を抱きとめて、コップの中身を流しながら矢晴にかける言葉が優しくて、責めなくて、いいわあ。
矢晴が泣きながら飲んだサイダーの缶を床に置いて、それにロボット掃除機が当たって、轟音とともに暴走して、矢晴はソファーの上に避難して、という一連がかわいい、面白い。
鼻かんだティッシュをそのままそこらに捨てようとする矢晴もどうかと思うんだけども、その背後でキャッチしてしまう純の運動能力がぱねえって慄く。捨てたはずのティッシュが手に戻ってきた瞬間とか、それが純によってと気づいた矢晴の恐怖の顔と真顔の純が、ホラーで怖い。こわいこわい。
『この日は捨てた』恐怖体験3つもしてて、そりゃあもうこの日は活動するのも辛かろう、と思える。
転居3日目。酒を探して家中徘徊してるっぽい矢晴。歩き回れる元気があるだけよろしい、って気分になっちゃう。純の仕事部屋のドアの様子が描写されてるけども、家の中なのに玄関扉みたいなドアで鍵がついてて、ってあたりに純の心理的な闇が反映されてたり……? と考えてみたりもするけども、仕事とプライベートのオンオフをきっちりするためとかかもしれないな。どうなんだろ。
転居4日目。マウスウォッシュを飲んでて即バレしてる矢晴がかわいい。リビングで映画観てって言われても気力がなくて観れてなくて、部屋に戻ればフカフカの布団があって、環境が良ければ良いだけ、矢晴の精神に反動が来る。
『夜の隅から魍魎のように湧いてでてくる』純に言われてない言葉と純から言われた言葉、編集部で四階に本当に言われたのかどうかもわからない怒号、被害妄想。表現がうますぎて真に迫り、矢晴の精神状態が「わかる」。どんどこ勝手に追い詰められてく精神状態もわかるけど、「純の家に住み始めてまだたったの4日なんだぞ!」と矢晴の肩を揺さぶって頭ぶんぶんさせたくなる。
転居5日目。純が実家に送る荷物を詰めるところを見てて、話の流れで純のネームを見ることに。純は見てもらえると思ってたのかどうなのか。断らなかった矢晴に読んでる私もびっくりしたけども。
ネーム受け取って読み始めた矢晴と、そそっとこたつに入る純。ネーム読んで視線の動く矢晴と、こたつに埋もれて赤面し汗かいてそわそわどきどきしてる純がかわいくて。『ここ』って言われた瞬間にビョン!とでも効果音がつきそうなくらい勢いよく体を起こす純がかわいくて。目をおっきくして、赤くなって、汗かいて、前半パートの怖い感じの冷静で真顔な純とのギャップが。もうほんと、古印葵のこと大好きだな、純。
けっこう饒舌に語ってくれる矢晴は、ほんとに漫画家なんだなあと思えるし、それを聞いてる純はかわいいし。『まんまと流されて一年ぶりに漫画を読んでしまった…』って考えてる矢晴が、この後も漫画の話してくれたのがびっくりだったけど。
『純さんは』『ご自身の漫画のセリフを野暮ったいと嫌いますが』と話してくれた内容は純が嫌う「野暮ったい」漫画でも、人気が出ているのはなぜか、を解き明かして、「それが求められてる望海可純の漫画だから」と純の漫画を肯定し、変容しないで欲しいと願うような感じで、「古印先生ーーー!」と叫びだしたくなるくらい素敵な話で。
ラストページの部屋を出ていく矢晴と見送る純のキラキラした瞳と顔と、『まだ古印葵は死んでない』が、感動の嵐みたいな感じで。矢晴が古印葵としてまた漫画家に戻れそうな予感というか確信を感じる。
- 転居2日目の目覚め。
- 断酒を決意し、純に財布を預ける。
- 台所を漁って酒を探す。料理酒と本味醂を飲むが即、純にバレる。
- ロボット掃除機に怯える矢晴。
- 転居3日目。『この日も捨てた』
- 転居4日目。マウスウォッシュを飲むが、即、純にバレる。
- 乾燥機から出したばかりの殺人的な気持ちよさの布団に包まれ、妄想に苦しむ。
- 転居5日目。純のネームを読み、漫画の話をする。
- 『まだ古印葵は死んでない』
純と矢晴のほのぼのライフ。前回の超不穏な終わり方から一転しての、元気になれそうな矢晴がかわいい。
アルコールが欲しくて泥棒まがいの嘘つきになってしまったところも、矢晴の精神を追い詰めてしまうんだなあと。純が変にカウンセラーみたいなことをしてなくて、でも、ちゃんと矢晴に寄り添ってくれてるところがいい。
純が古印葵を好きすぎて、かわいすぎる。
古印葵がどんな漫画家だったのか、福田矢晴がどんな人間なのかがわかってくる。そりゃもう純が惚れますわ。
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