納得いかない
純の納得いかない世界。古印葵が認められていない世界。
純にとっては、古印葵が世の中に認められて称賛される世界が尤も、ということなのだろうが、古印葵が描き出す世界を認める者は少数派であって、世に広く認められてはいない。
古印葵がA誌で継続して活動していたなら、じわじわと人気が上がる、世に認められるということは「あったかもしれない世界」だとは思う。デビューして2〜3年で短編集を2冊、国内の漫画賞で部門賞、海外の漫画賞で部門賞を穫れるだけの実力はあったのだから、その時点で「漫画の実力は高く、その才能を認める者も多くいた」といえる。
結局のところ、古印葵が姿を消してしまった(B誌に飼い殺しにされてしまった)2年半、A誌に戻ったものの古印葵らしさを殺されてしまった連載、漫画を描けなくなってしまった1年の約4年は、世の中が古印葵を忘れるには十分すぎる期間だった。
【第4話】『なんであなたがこんな目に合わなきゃいけないのか』『納得できない』
アパートの一室でゴミに埋もれて生活する矢晴の、劣悪な環境を見ての純の言葉。矢晴自身にとっても「なぜ自分がこんな目に」というのは日々思うことだったろうとは思うのだが、納得できるかできないかにかかわらず、そうなってしまったのだからそこから抜け出す手立てがない。
純としては、古印葵を認めない世の中に見切りをつけて、古印葵を庇護して自分自身が「古印葵を認める世界」になることにしたように思える。その小さな世界は純の納得のいく世界にはなるのだろうが、ふたりの小さな世界の行く末がどうなるのかは気になる。
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