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7月, 2021の投稿を表示しています

【感想】第4話 荼毘・アルコール

今回は、編集部から散歩に連れ出されたところから。肌寒そうな風の吹く住宅街をだらだら歩いてる。 ペンネームの由来を聞いたりして、純はさくっと矢晴の本名ゲットするあたり、さすが純。 これ以上の同行を断るために矢晴が所持金の話をしたところにつけこんだ純も純だけども、夕食も奢るって言われてアル中で震える手と相談して、純の年齢にもつけこんで『酒が飲めるなら…行ってもいいかな』ってズルい矢晴がわりと好き。 居酒屋でかいがいしく世話をする純とか、ニコニコと矢晴の話聞いてる純とか、かわいい。矢晴のアパートの部屋(ゴミ屋敷)見て、怒りをたぎらせる純とのギャップがいい。『掃除するんで』ってむっちゃ怒った顔の純がかっこいい。 あんだけのゴミの量を、一晩で片付けちゃう純がすごいんだけど。寝てる矢晴を気遣って電気つけてないだろうし、そもそも電気つくのかどうかわかんないけども。 普段夜更ししないでちゃんと寝る生活してる純が徹夜で肉体労働してけっこう顔に疲労が出ちゃってるところの目元が好きだし、セットした髪も乱れちゃってるところが好きで。 どんなシーンでも表情でも好きしか言えない。 『私と一緒に暮らしません?』と人の布団に乗ってきちゃう純が必死でかわいい。面食らって白目になってる矢晴と、『え… マジの目じゃん…』って怯えてる矢晴と、と枚挙にいとまがないが、ここ一連、全部のコマが好き。 『なんであなたがこんな目に合わなきゃいけないのか納得できない』のシーンとか、矢晴の前では恋する乙女な表情が多い純が、このエピソードではかなり「男の顔」をしている気がする。その分高圧的で、矢晴の反発を生んじゃうのかなーという感じはするけども。 純の干渉をやめさせようとする矢晴の上っ面の説得から本音が漏れ出てくるところ、裏側の悲痛な叫びまで聞こえてくるようで、画面全体の構成もかなり好きなのだけど、多くの方が「矢晴の涙が下のコマの純の肩を濡らしているところが好き」と言っているけども、私もこのシーンはかなり好き。漫画だからできる表現。 『古印葵が死んだとしても』からの一連の口説き文句は、忘れられたくない見捨てられたくない矢晴からしたら福音というのか救いの言葉だろうし、一番言われたい言葉の数々だったはずで、すぐにでも絆されて純に縋り付いちゃうような雰囲気を出しつつ、ラストのページの純が怖いったらありゃしない。 なんだか純が矢...

■【売れうつ】の二次創作(小説)

 【第10話】の転居5日目の様子から、【第1話】の転居1週間のあの様子になるのに、いったい何が!? という気持ちが高まりすぎたので、二次創作を書いた。 第11話が更新されて答え合わせをするのが楽しみ。(絶対こんなことにはならんだろうという趣味全開で書いたから、かすりもしないのはわかる。) 二次創作は書く気がない、と言っていた舌の根もかわかぬうちに、というぐらいの感じだが、書きたくなっちゃったし、今以外にこの話が書けるタイミングはないからさー…ぶつくさ。 ファンアートはTwitterでいくつか観測してて、【売れうつ】のキャラクターの性格分析した文章はpixivで見かけてる、けれども、たぶん小説の二次創作はこれが初めてみたいな状況ではないかと、思っている。検索しても出てこないし。 BL方向に全振りしてて、コレジャナイ感丸出しでもいいならどうぞ、って感じの。 ここから→  ■

家族について

 矢晴は、家族構成はわからないけども、家族とはもともと不仲で、うつ状態に陥ったときには『人生で一番険悪な状態になって』いた。たぶん、連載用の漫画を描く時間を捻出するのにバイトしてる時間すらなくなって、『金も底をついて』家族に金の無心とかしなきゃならなくて、みたいな状態だろうなあと思える。矢晴には頼れる家族はいない。 純は、家族構成はわからないけども、両親の姿は【第6話】で少し出てくる。その回想で廊下を歩く足元は少年っぽいから小学生くらいの頃の記憶かな? 父親はけっこう痩身で、案外歳いってる感じだから、純自身、遅くにできた子供なのかもしれないし、数人上の兄弟がいる末っ子かもしれない。 献本を10冊実家に送って親戚に配らせることができるくらい、親戚含めて家族が多い、感じ。仲の良さはわからないけども、『親戚に配らせます』という言い方が気にかかる。人気作家となった純は、家族のなかでは出世頭で一番偉い、みたいなことになってるのかもしれないけども。 純が実家に送る荷物の中には緩衝材も兼ねてかいろいろ詰め込んでるけども、「気に入ってるものだから家族にも食べさせたくて」で詰めてるのか、「お取り寄せで買ったけどイマイチだったから実家に送っちゃえ」で詰めてるのか、というのはどっちなのか気になってしまう。 とはいえ、純は漫画家として成功していて収入もじゅうぶんにあるし、自分の家も持ててるから、家族に頼る必要がない。 頼れる家族がいない矢晴にとっては、純が手を差し伸べてくれたのは地獄に仏だったなと思う。純の実家は遠そう(近かったとしても宅配を使うくらい縁遠い)だから、矢晴を引き取ったことに純の家族が口出ししてくるとかもなさそうだし。

純はどこまで受け入れるのか

 純は古印葵である福田矢晴のすべてを受け入れている、とは思う。とはいえ、純だって人間だろうから、限界はありそうな気もして、いつかどこかで矢晴が負担になるのではないかと。それが地獄巡りになるのではないかと、ドキドキする。 純は、矢晴のズルさを受け入れた。編集部で出会った後、食事も奢りたいと純が言った時に、矢晴は純が年下であることと矢晴と仲良くなりたい純の気持ちにつけこんで、酒までねだるズルさを見せた。 純は、矢晴のゴミ屋敷をつくる怠惰な性格を受け入れた。ゴミ屋敷に対しては、矢晴の境遇への怒りからひと晩かけて掃除までした。同居してからは、矢晴が無意識に投げ捨てたティッシュをキャッチして、そっと手に戻す程度で、叱りつけるなんてことはしない。 純は、矢晴の断酒の意志を受け入れた。矢晴の申し出により財布を預かり、協力すると約束した。矢晴が禁断症状から料理酒や味醂、マウスウォッシュを飲んでいても、叱りつけるわけでなく、冷静に止める。矢晴の手の届くところにアルコールの含まれたものを置かないように配慮した。純だけで暮らしていれば、矢晴がアル中でなければ、する必要のない生活の不便が発生している。 純は、寝込んで泣いている矢晴を受け入れた。夜にはしばらく付き添って声をかけ安心させている。 これまで純はひとりで気ままな生活をしていたところに、憧れの漫画家である古印葵だとはいえ、他人が同居することにはかなりのストレスがかかりそうな気がする。健康であったとしても他人がいるストレスは発生するかと思うのだが、矢晴はうつ病やアル中を抱えている。 純自身は、それらも含めて、面倒をみて、世話をする覚悟で同居に踏み切っているのだろうけども、ある程度の期間が経過すると、矢晴の態度も変わってくる(純を試し始めるなど)のではないかと思われ。理不尽なことを言い出すようになった矢晴に対して純が今の状態を貫けるのかどうか……と、ドキドキする。 【第1話】で同居1週間目の安楽死の薬がほしいと言う矢晴の『純』『買ってよ金持ちだろ…』に対しての純の無言が、そんな雰囲気を醸し出していて…。っても、同居1週間でこれは、早すぎない? まだ同居5日目で「純さん」「矢晴さん」って呼び合ってるのに。いったい6日目になにが…………。気になるー! とはいえ、現状、同居5日目に矢晴のなかの古印葵が純にもたらしたもの、というのが大き...

ボーイズラブとして

 【売れうつ】がボーイズラブとして展開できるのかどうか、は、やっぱり気になる。 このふたり、純がゲイだとしても、矢晴がノンケ(7年付き合った彼女の存在は重い……)なわけだし。同居開始の夜には、矢晴は「襲われる?」とビビり散らかしてたのもかわいかったけども。妾にしないって言われたでしょ。 まあ別に、肉体的接触はなくてもいいかなーと思うけども(あってもいい)。 ちらっと見かけた程度では、矢晴のことを女性と思っている方もいて。ボーイズラブに馴染みのない方々へも届き始めているんだな、と思った。現状、純が矢晴を崇拝してて、矢晴が純を利用してるようなものだから、ボーイズラブといわれてもそういう気配もなく、雰囲気もなく、接触もなく。ボーイズラブ苦手な方でも男性でも、読んでほしいと布教されてる方も多く。 ゆくゆく、どうなるんだろう…? という懸念はある。 攻め受けに関しては、タイトルが示すとおりのはずだけども、「表紙の並びが逆!」と怒りをあらわにされている方もいたり、困惑されている方もいたり。 左右って、「横書きで名前を並べた場合」からの文法だった気がしないでも…? と思ったり、もともと私自身はスラッシュ方面(カップリング表記に上下左右の概念が込められない)にいたため、そこらへん(日本のBL)の暗黙の了解の変遷には疎いので、「左右が逆であることが生死にかかわる方々」がいることは重々承知のうえで、「イラスト構図における左右まで厳密にして表現の幅を狭める必要はないのでは?」と思っている。 ついでにいえば、「スパダリ(スーパーダーリン)」に関しても、私の知っている頃から現在で、定義が変わっているような気がする。え? それがスパダリなの? と驚いたことも何度かあった記憶があるような、ないような。とはいえ、純が古く言われるスパダリの要件も、現在におけるスパダリの要件も十全に満たしているとは思う。

古印葵の漫画

 古印葵は自分が理想とする漫画を描けていた。読切の短編ばかりとはいえ、単行本が2冊(約400ページ)発行できる本数を描き上げ、24歳で発行した2冊目の短編集『Unexpected Encounter』では、国内・海外の漫画賞で部門賞を受賞するほどの実力であった。 B誌に移り編集の言うことが二転三転して一向に掲載されない漫画を必死に描きながらも画力は向上していた。けれども、A誌に戻り連載枠をとれたものの、新しい担当とつくりあげたものは古印葵らしさの失われた作品となり、漫画家としての古印葵=福田矢晴は病んでしまった。 古印葵が描く漫画はどのようなものであったのか。作中で古印葵の熱烈なファンである望海可純が語る。 【第3話】『古印先生の作品ってセリフが洗練されてて必要最小限で全部がちゃんと話にハマってて空気ができあがってて…』『絵が映画みたいでページ全体のデザインがセンスがあって線はシンプルだけど確実に正解を選んでてカットの選び方とストーリーへの組み込み方と描き方…一番すごいと思ってます理想です』『ここでこの絵を挿入するなんてどうやって思いつくんだろうってところが本当たくさんあって何を参考にしてるのかってすごく気になります』『小窓から宇宙をみせるような/漫画の中で 一番かっこいい』 【第5話】『異質だった』『恋愛を扱ってるけどA誌によくあるラブコメではない/コマ割りは少女漫画の技法も取り込んでいる/線はシンプルめでカラーも線画も透明感のある絵柄/だけど少女漫画とも青年向けとも違う/ジャンル分けできないからサブカルにあたるのだろうけど乱暴に括ってそこで思考停止するのはあまりにももったいない…』 『きれいで寂しい世界の中で情動が夏のアスファルトの陽炎みたいに揺れてる』 望海可純こと上薗純は、初めて読んだ古印葵の読切漫画をその場で10周してしまうほどに心を掴まれている。『今まで触れられたことのない場所を触られたような…』と、ファンと言うには、あまりにも深く古印葵の漫画が純を虜にした。 古印葵自身は、授賞式でのスピーチで、【第5話】『――きれいだな忘れたくないなと思ったものをカメラで撮るのが日課で/漫画も/忘れたくないと思ったモノや感情を取り込んで形にしてます』と話している。また【第6話】では、純との散歩中に見かけた「ミント色が錆びた鉄柵の配色の珍しさ」に立ち止まり心を動...

続きが読みたいので、予想してみる

 ついこの間、第10話が更新されたところで、まだまだ次の話は先だろうに、はやく続きが知りたくて、次が待ちきれない、待ち遠しいので、そんな気持ちを紛らわせるため、続きを予想してみる。きっと、こんな予想なんかは軽々超えていくようなストーリーが来るだろうから、楽しみ。 はてさて。 第10話が、転居5日目の夕方(たぶん南西方向のリビングにさす外の日差しの具合でああいう影のできる絵面になったんだろうと思うので)かなという感じなので、その続き。 自室に戻った矢晴が、純に話したことを反芻して身悶えて、『夜の隅から魍魎のように』が再来するかなー。(この『夜の隅から魍魎のように』という表現がとても好き。こんな文章書きたいと思う。) 転居6日目。ぼちぼち純が週1の編集部に行く頃合いではないかと思うので、純が留守の間になにかありそう。勝手に家から出て、どうにか酒を買ってしまうとか。アルコールの禁断症状から薬の過剰摂取とか。なにか。なにかないと、第1話の転居1週間目の自力で動けない矢晴にならない。だって今、わりと元気に動き回ってる。な…なにが起きるんだろう……ドキドキする。 でも、純の留守に勝手に出かけちゃったとしても、事故にあったとかなら入院してそうだから事故はないと思う。 第11話のストーリーとしては、転居6日目のなにか、があって、お互いを呼び捨て、タメ語になるはず、という期待がある。なにがあるのよー。どうしたら、そうなるのよー。と気になって気になって。 なんか、喧嘩でもしちゃうのかなー? 「お前なんか!」「矢晴だって!」みたいなやりとり? これはあんまり想像できない。 第1話でサプリの飲み合わせの副作用とか調べてるから、6日目のなにかは薬絡みかな? とも思えるけども。薬とアルコールの組み合わせのほうがヤバそうだから、矢晴のもとの生活のほうがヤバそうなんだけども。 うーん。うーん。 14話までほのぼのライフでしょー? どうなるんだろう。続きが楽しみすぎる。

コマ割りとリズム

 【第10話】の古印先生の漫画講座に感銘を受けた人はかなり多い印象。 漫画におけるコマ割りはものすごく重要で、コマ割りによって物語の受け取り方が変わる。コマとコマの間の空白の大きさですら、漫画の表現なんだよなあ、というところにも注目して、【売れうつ】を読んでみてほしい(他の漫画でも、注目してみてほしい)。 セリフのリズムや、画面配置のリズム。いろんなところにリズムがあって、それが狂っていると読み手にものすごく負荷がかかる。結果、読むのに疲れて読まなくなる。 これは漫画に限らず、小説や実写ドラマ、映画、アニメなどなど多岐に渡って、読者や視聴者に「いかに負担をかけずに物語世界に没頭させるか」というのは重要になってくると思う。 私は文字書きなので、小説表現に寄ってしまうが、文章のリズムのために、読点をどこに打つのか、語順をどうするか、はかなり考えていると思う。空き行を入れることですら、文章表現、時間経過、間のとり方としてかなり重要なので。 このブログでの文章は小説ではないから、かなりトンチキな場所に読点を打っているなと自分でも感じているが、小説ではないからいい。こういう文章で語りたいだけだから。 漫画だと、絵のリズムに合わせてセリフやモノローグの文章量も調節されていると思う。文章量が多いと文章を読むのに疲れてしまって絵をまったく見ていない、ということにもなりかねず、また短すぎれば、なにを伝えたいのかわからない、ということにもなりかねず。ちょうどいい塩梅を模索する日々だろうなと、思う。 コマ割りと、ページ単位の画面の見え方と、見開きでの画面の見え方と、左ページにあたる1枚の下部の次のページへのヒキと、ページをめくったときの右ページの画面と、漫画ってすごいたくさんのことを詰め込んでて、ほんとにすごい。 【売れうつ】はそこらへんも、かなり秀逸なんですよ。 ごくたまーに、誤字があって、それを直すと画面全体のバランスを崩しかねん……と思えるところがあったりして、もったいないなあ、と思ったりもするのだけど、それはそれとして。

比較と優劣と同列

 編集部で、純が古印葵の漫画を褒めて、ついでに自分の漫画と比較して、矢晴が静かな怒りを溜め込んでるシーンが好きなのだけど。 純の家で、矢晴が人の感性に対して優劣はないと語るシーンも好きで。 また同じシーンで、矢晴が純と自分をひとくくりに同列に語ってくれたのも好き。 比較は、自分もよくやってしまうのだけども(反省)。純がまだいいところは、「古印葵の作品と自分の作品」を比較したところ。とはいえ、矢晴にとっては、各巻100万部レベルの人気の作品と自分の作品比べられたらたまったもんじゃない、とは思う。 「こことここが違う」という比較はいいと思うのだけど、「ここがいい。あれと違って数段いい。あれはダメだ」みたいな言い方は、どちらにとってもいいことがない。なにかを下げることでしか持ち上げられないなら、それは褒めたことにはならないと思う。褒められた方の価値も下がる。 余談だが、よく天才を描くために周囲を無能にするという表現があるが、描かれた天才が凡人に見えるので(探偵ものに顕著な表現ではあるが、無能よりも凡人のほうが比較的有能に見えるわな……という諦め)、もうちょっと考えてほしいと思うことはよくある。(今回、ちょっと古印先生を際立たせるためということでもないだろうが、純がちょっとバカっぽく見えてて、むむ…?という気分にはなった) 純が古印葵の作品をほめて、比較して自分の作品を貶しちゃう癖は、ずっと直らんだろうけども。同居1年後も、健在だから。 人の感性や特性に優劣はない。それは当然のことなのだけど、「誰かが・みんなが、褒めている作品に何も感じないのは自分が劣っているから」と考える人は多いのだろう。「この作品が理解できないなんて人としておかしい」とまで言う人もいるし。 この話は、【第5話 上薗純、曰く その(1)】での純の気持ち『きれいな花を見つけたのにどうしてみんな無視するんだ? みんな他の人が言ってることしか喋りたくないんだ』に対するアンサーにもなるのかなー? と少し思う。純がきれいな花だと思う古印葵の作品を理解できる人は少なく、理解できず・触れもせずに無視することだって、個々人の特性由来のものだから。 矢晴が純と自分のことを、『純さんや私みたいな人間が評価するのは映画的な…言葉であまり説明しないタイプの作品だと思いますが』『絵で理解する特性をもつ私達は』と、同列にして...

望海可純の漫画

 望海可純が理想とする漫画が古印葵の漫画である。望海可純としては古印葵の世界観やテクニックが再現できず、自身の漫画に不満がある。 漫画家としては、理想の漫画に近づくことすらできず、自身が不満を感じている漫画が人気が出ていて、継続することを強いられているという状況を考えると、望海可純も潰れてしまった古印葵と同レベルで病んでいてもおかしくないのかもしれない、と思える。 【第5話】での、アシスタントとの会話で『ご自身であのシーンを思いついた時は感動しなかったんですか?』『自分の漫画ではまずないかなあ』『私は漫画のルーブ・ゴールドバーグ・マシンを考えてるだけ』というのも、人気になってしまったがために惰性で描き続け、なまじ分析力に長けて人気になる技法・展開を再現できるばかりにレベルの高い、うまい漫画を継続できてしまうという悲しい才能なのかもな、という気がする。 【第1話】(同居から1年)『矢晴の漫画を読んでるとこう描けばいいのかぁってシーンが多くて打ちのめされるんだよな』『自分の作品思い出したら組み立てダサすぎて恥ずかしくなってきた』 【第3話】(出会った日)『私が描くとどうしてもセリフ長いし理屈っぽいし古臭いし野暮ったくてダサくなるし画面のセンスもいまいちで言語化できない部分の惹き込みが弱いんですよね』 【第10話】(同居から5日目)『長編って設定が複雑になる分説明も多くなるし』『ゲームのチュートリアルみたいなキャラが多くなればなるほど雰囲気が野暮ったくなるじゃないですか』『そこをどれだけ削れるかを勉強してるんですよ』『矢晴さんの漫画で』 と、古印葵の漫画への羨望と、劣等感が溢れている。望海可純は「15巻発売時点で累計1400万部の大人気王道バトル漫画家」ではあるが、描きたい漫画(理想とする漫画)と描ける漫画が違いすぎているようだ。そこらへんが、「望海可純=上薗純の闇」といえるのかもしれない。

【感想】第3話 攻撃性・マインド

 第3話は編集部で純と矢晴が出会ったところから。 矢晴が四階に罵詈雑言浴びせられているところに割って入って、優しい笑顔で頬を染めつつ挨拶する望海可純が登場したところ。矢晴の『のぞみ…かじゅ…ってあの…』という反応に、矢晴が望海可純のことを認識しているのは確認できる。 四階の態度がガラッと変わり、体育会系の後輩のようなお辞儀と挨拶。からの、『王道バトル漫画家から見てどうです? これ』という四階としては自分と同じように「古印葵の作品を貶す方向」を期待しての問いかけだろうが、特大の地雷を踏んだ。 望海可純のターン。古印葵に向けた優しい笑顔はすっかり消え失せ、物凄い冷気が漂う。『なんで笑ってるんですか?』と言う望海可純への四階の『へ………………………』という反応が、ヤバさを物語っている。純が怖いよー。 『ずっと聞いてました』と打合せブースの影で佇んでいる純の映像がこれまた、怖い。どんだけ古印葵を貶す四階への憎悪をたぎらせていたのか。 純が四階への反論を述べ、菊池の意見を求めたときの四階と菊池のにらみ合いもなかなか怖いが、純の怖さの前には霞む。菊池が『私は古印先生の漫画好きなので…』と言ったときの矢晴の表情が、「初めて知った」衝撃の表情に見える。 望海可純のターンはまだまだ続く。『四階さんの早口でまくし立てるしゃべり方』『真似してみたんですけどどうでした?』という1ページまるっと使った笑顔がこわいー。純がこわいー。 第3話では「望海可純はヤベえ奴」というのが前半で印象付けられる。 先輩編集者から謝れと言われて蒼白になりながらも、四階がちゃんと古印葵に謝ったのは好印象だった。ここで望海可純に対して謝ってたら、もっとヤバかっただろうなと思う。純は謝ってる四階を頭下げさせたまま放置して矢晴に4年前の受賞の話を四階にも聞かせるように始めてるのが、やっぱり怖いんだけども。 純が矢晴の肩に手を回した時の矢晴の視線が肩に置かれた手に向いている顔とか、極力純の方を見ないようにする矢晴の視線の動きとかが、笑顔の純と対照的。 矢晴が菊池に連載を投げ出したことを謝って編集部を出ようとするところを純に引き止められる。純が能天気な雰囲気を出しているところ、矢晴が表向きも内心もかなり真っ当なことを言っていて、矢晴の知性と理性が見える。 純が頬を染めながら早口で古印葵の作品を褒めるところ、まではい...

半纏とフランスと

 純の家に住むようになった矢晴は部屋着に半纏を着てる。最初からその予定だったのか、純と矢晴によく似た女子コンビの読切漫画へのオマージュなのかと疑惑を持ったりもするが、半纏着てる矢晴はかわいいから、理由はわからなくてもいいや。第1話で『アウター着た方がいいよ』と羽織らされている上着はトーンははられていないが半纏っぽくは見える。 同居2日目。1日目の夜(というか深夜)に睡眠薬を多めに飲んだと不穏だったわりに、かなり快調な目覚め。その後、ダイニングで純と昼食。矢晴の前には茶碗とカップだけ。純の前にはいくつかの皿。この食べる量の差も愛おしい。この食事の際に、矢晴は純に財布を預けているのだが、その時に着ている半纏の下の服が初日夜に着ていたおそろいパジャマではないのが気になる。襟の形が違ってて。ただの作画ミスであるのか、着替えているのか。純はジャージだから、矢晴もちゃんとパジャマから服に着替えてきてたのかもしれない。 同居3日目の矢晴はスウェットだけど、半纏は着てない。アルコールを探すためかもしれないが、2階まで上がる元気がある。 同居4日目はスウェットに半纏。4日目はリビングで映画を観ながら寝てるけども、純に布団を乾燥機にかけるからと言われてリビングで過ごしてたのかなーと、自室に戻ったときの『乾燥機から出したばかりの殺人的な気持ち良さの布団があった』というところから想像できる。 同居5日目もスウェットに半纏。おそろいパジャマ、初日以外着てくれてない!? と思えたりもするけども、昼間は部屋着に着替える生活をして、夜にはおそろいパジャマかもしれない。ネームを読む間、アドバイスをする間、純に語る間、ずっと立っていられるだけの元気がある。 編集部へもちゃんと歩いていけてたし、時々は純を置いていくように早足になれたんだから、そこまでの筋力低下はなさそう。無断欠勤何度かしちゃうくらいだったけど、一応バイトはできてたから、まだ起き上がれないほどの状態でもなかったのが、純が間に合ったところかな。 4日目にリビングで観てる映画が、凱旋門が映ってるっぽい感じだからフランス映画かなー? と安直に考えて、矢晴はフランスのコミック賞の部門賞もらってたなーと思い出して、もしかして、居酒屋で純に話してた映画の話ってフランス映画なのかなー? と思った。矢晴の話してた映画がなんの映画なのか皆目見当もつ...

読者だけが知る情報

 漫画論、創作論にもなる気がするが、漫画・小説など物語の創作物は、作者が読んでもらいたいように情報操作がされている。「この時点ではこのキャラクターは知らない(読者も知らない)が、別の視点から見るとこういうことがあったと読者は知る(キャラクターは依然としてそれを知らない)」といった感じで。 たとえば、【第2話 後悔・プライド】にて、矢晴が編集部に呼ばれるきっかけとなった小説の挿絵の仕事。担当編集の菊池は嬉しそうに『この小説の作家さんに古印先生の絵を見せたら好感触でして!/センスが好きって言ってましたよ!』と言っているが、矢晴は断ってしまう。 さらに、矢晴はその打合せ中に四階に罵詈雑言を浴びせられ、『今回も私の何を見て仕事を頼んだんだろう/別に私じゃなくてもいい仕事だった/私じゃない方がいい仕事だった/よく分かった』と考えているが、この挿絵の仕事について、【第5話 上薗純、曰く その(1)】にて、情報が読者に明かされる。 【第5話 上薗純、曰く その(1)】にて『菊池が担当しててC出版と合同で小説出すんだけど挿絵とコミカライズ作家探してるんですよ』『色々探してるんだけど 小説家さんのこだわり強くて厳しくて…望海さんのアシさんや知り合いでこういう系統のイラスト描く人いないです?』と純が担当から尋ねられ、資料を見た上で『古印先生なら透明感と光のカラー得意ですし/こういう生活の一部の切り取り方のセンスいいし雰囲気の方もあってるでしょ?』と、古印葵をすすめる。それに菊池が『私もそう思います! 休業中かもしれませんけど頼んでみます!』と同意し、話が進み、純と矢晴が編集部で出会うこととなる。 『色々探してるんだけど小説家さんのこだわり強くて厳しくて…』と作家探しに難航している案件であったが、『古印先生なら透明感と光のカラー得意ですし/こういう生活の一部の切り取り方のセンスいいし雰囲気の方もあってる』と望海可純に評される『古印先生の絵を見せたら好感触でして!/センスが好きって言ってましたよ!』と「こだわりのある小説家に、古印葵が選ばれた」ことを読者は知る。 【第5話】を読んだ後、【第2話】を読み返すと、矢晴の『私じゃない方がいい仕事だった』という思いに対し、読者は「古印葵が選ばれたんだよ!」などと上薗純サイドの話を知らない矢晴に対して感情が動く。【第2話】での打合せの時点で、...

古印葵は死んでない

 【第10話 経験・アンデッド】のラストページが、本当に良くて。何度も何度も読んでしまう。純がキラキラしてるのも好きだけども、やはり『まだ古印葵は死んでない』という言葉が見たい。 【第4話 荼毘・アルコール】で矢晴が涙ながらに訴えた『古印葵は死んだと思ってください』という言葉を受けて、純は『古印葵が死んだとしても』と古印葵の亡骸である福田矢晴を助けようとする。たぶん「古印葵だった人」というだけで十分だったのかな? とも思うし、【第6話 上薗純、曰く その(2)】で描かれた「ミント色が錆びた柵」のエピソードから、古印葵がまだ残っていることを感じていて、「自分なら古印葵を復活させられる」とでも思っていたかもしれない。 矢晴が古印葵でなくなっても、純は助けてくれたと思う。福田矢晴が古印葵の亡骸だから。とはいえ、純は矢晴のなかに古印葵を見てるから、戻ってくれるものなら、戻ってきてほしいと思っている、はず。 同居5日目。古印葵を真似したネームを、矢晴に見てもらうときの純がとてもかわいい。炬燵に潜り込まんばかりに埋もれてドキドキしてる感じが、ほんの小さなコマから伝わる。自分の描いたネームに矢晴=古印葵からアドバイスをもらっているときの純はなんだか純粋な少年のようで、悪い言い方をすれば知能指数が下がってる。同居から数日間、矢晴がアルコールを求めてあれやこれややってるのを止めてたりしてた怖い純(矢晴から見た純の印象)との落差が激しい。そしてかわいい。 『今度から古印先生にネーム見てもらおっかなあ!』 『いやいやないない無理無理作風がダメになりますよ…』 矢晴自身は、望海可純の漫画はデビュー作と連載を2話までしか読んでない。編集部で純が矢晴を褒めながら、自身の作品を卑下していたことしか聞いていない。そしてここで、「古印葵の真似をしたネーム」を読んだだけ。 それなのに、ネームを見た後に純にした話はとても的確に純の作品をとらえていて、純の作品が変容しないように、「望海可純の作品」を楽しみにしている読者のことまで考えて話してくれた。 矢晴は話した後にすぐに部屋に戻っているから、もしかしたら「余計なことを言ってしまった」とか「漫画描けないくせにえらそうに何言ってんだ」とか自己嫌悪にのたうちまわってるかもしれないけども。 残された純の、矢晴が扉を出ていくのを見送る純のキラキラした瞳と『...

トレンドの波

 5月初旬、第4話まで公開中のあたりでトレンドの第一波。最初にバズった紹介ツイートの翌日夜、別の方の紹介ツイートがさらにバズり、またたく間に広がって、トレンド入り。 けっこう多くの方が、【売れうつ】を読んだ模様。「トレンドにあったので」という言葉が頻出。作家さんの正体について「〇〇先生だよね?」的なツイートもよく見かけ、また、「別名義でやってる意味を考えて、正体追及しないように」というツイートもあわせて見かけた。トレンドに乗るタイプのニュースサイトでは、その日のうちに「正体は〇〇先生で確定!?」的な記事も乱立した。 7月下旬。第10話の更新がトレンド入りして、トレンドの第二波。「更新待ってた!」「トレンドにあったから久しぶりに読みに行ったら続きたくさんあった」「トレンドにあったから初めて読んだ」「〇〇先生だよね?」といったツイートがあふれる。「プロだよね? 誰だろう?」というのも見かける。 今回は、数日前に公開されたプロ作家さんの読切作品と並べてツイートする方も多く、トレンドと拡散に拍車をかけた模様。 前回のトレンド入りから、2ヶ月半経過しているのもあるが、「トレンドに入らないと見に行くことをしない・忘れている層」がかなり多い印象。 更新はまだかと日参している人も少なからずいるが、すっかり忘れて日常に戻っていく人が圧倒的に多い印象。所詮、娯楽だし。 私自身は、「トレンドに入っていたから知った」わけではないが、5月初旬に沸いた時からの読者である。自身でトレンドを見ていないが、トレンドを見た人が話題にしているのを見た、という形になるだろうか。pixiv自体はアカウントを持ってはいるが、ここ数年、そんなに利用していない(読むこともなく、二次創作を発表することもなく)状態であった。世の中で話題にならなければ、気づきもせず、読みに行くこともしなかっただろうと思う。 「トレンド入りすごい!」という言葉もよく見かけるが、奇しくも【第5話 上薗純、曰く その(1)】での『みんな他の人が言ってることしか喋りたくないんだ』という純の嘆きのシーンが現実でも起こっているような。「その作品が本当に良い」から話題になっているのか、「話題になっている」から話題になっているのか。 トレンド入りの当日は検索結果を追うのにも、数時間かかるほど、いろんな人が話題にしている。翌日には、昨日の勢いが...

短編と長編

 『よく…長い話を思いつけますね』 『0から1を何個も作る人の方がすごいと思いますけどね』 矢晴と純の、意識の違いというか、お互いに、ないものねだりな感じというか。ここのシーンで重要なことは、「矢晴が、漫画の話をした」ってことだとは思うけども、矢晴も純も、「相手こそがすごいと思っている」んだなと。 矢晴は初の連載で失敗してて、純がデビュー間もなく連載持って、まだ続けてることに対して、「自分にはできない」という劣等感を抱いている、かな。 純は、デビューできるまでは何本か短編(投稿作や同人誌)を描いているはずだけど、すぐ連載持って、それが「なぜか」人気が出て、「なぜか」いまだに続いている。世界をいくつも創造できる矢晴のほうがすごいと思っている、かな。 矢晴にとっては、純の連載は、最初から長い壮大な世界を創っているように見えてるんじゃないかなー? 純にとっては、長く続いているから、世界を広げ続けてる感じで。 矢晴は、B誌での2年半がなければ、短編集もう2冊は出てただろうし、いい感じの連載も持てたかもしれないけども。 編集にアレコレ言われず、思うままに描ければ、矢晴も長編を描けるとは思うんだけども。長編向きの人、短編向きの人、というのは、ある。 私は、文字書きなので、小説に寄ってしまうのだけど。短いものを書くのが好きで、「いかに短く、簡潔に、世界を表現するか」ということに執心していた。長編が書けないから短いの、というわけではなく、小説のなかでもショートショートが好きだから、長編はもとより書く気がない、とも思っている。 矢晴の表現が、どちらを志向しているのかはわからないが、純にとっては、矢晴は「短いページ数で豊かな世界をいくつも構築できる天才」なのだろうなと思う。

純の家

 けっこうな広さの一軒家。出版社には近いらしいので、わりと都心に近いのか、編集部には車で行くからそんなに距離を感じてないのか。どこらへんにあるんだろう? とは思うけども。 キッチン、ダイニング、リビングがひと続きで、西側にビーズクッションを置いてある小上がりの和室もある。ダイニングテーブルは4人掛け。大きなソファーとガラステーブル、大きなテレビのリビング部分。その隣に和室。和室からダイニングテーブルが見える。ソファーの後ろには大きな炬燵。 あと、ガラステーブルを前に置いたL字型のソファーがあるはずだけど、どこだろう。 同居して1年後だと向かい合わせに置いたソファーと、一人がけのソファーもあって。一人がけのソファーは矢晴用に新調したかも? とは思える。 キッチンからダイニング、リビングが広すぎなのもあるけども、座れる場所が多すぎない? みたいな気分にもなり。大勢が来ることを想定しての、この椅子・テーブル量なのか、自分ひとりでもどこでも自由に過ごせるようにの量なのか。 温室にもけっこう大きなソファーがある。 床で寝てたらピアスを吸われるってことも考えると、どこでも寝れるように、ソファーをバカスカ置いているようにも思える。あとロボット掃除機の可動域と人間の生息域との棲み分けか。 お風呂も、広い。脱衣所・洗濯室もそこそこ広くて、洗面所は更に隣。 トイレはどれくらいかわからないけども、あと1階には矢晴の部屋になった客室がある。 純の家、広すぎんか? 2階は純の仕事場がある。広めの廊下。仕事部屋のドアは鍵がついてて玄関みたいな扉。仕事用の机の座った背後は、ほぼ壁一面の本棚。 寝室はまた別だろうけど、1階の広さを考えると、仕事部屋以外に2〜3部屋くらいは確実にありそうで。空き部屋は1階・2階ともにあるって言ってたから、部屋数も豊富そう。 ただ、1階が、広くひと部屋状態で、2階の仕事部屋があの本の量……ってところに、床が抜けそう……、とドキドキしてしまう。 デジアシしか雇ってなくてアシスタントは家に来ることはないけども、仕事部屋には鍵があって、扉は重そう。というあたりに、ちょっとなにか不穏な性格を感じ取ってしまうのだけど、それがなにかはちょっとわからない。 1階の広さは、どこにいても全てが見渡せる、とも思えるし。 矢晴の部屋になった客室は、もともと物置のように使っていたとい...

古印葵の凄さの片鱗

 【第10話 経験・アンデッド】にて、初めて、古印葵の漫画家としての凄さを垣間見ることができた。これまで純の下手なプレゼンと、純の過去での話少々だったので、古印葵がどれほどの漫画家なのか、というのはいまいち見えず、「なぜ、望海可純はこんなにも古印葵に心酔しているのか」という疑問はあったので。 これだけ心酔されるんだから、すごい作家さんなんだろうなあ、とは思ってたけど。 純は「漫画を分析してその手法を再現できる」と言い、矢晴は「そんなことできない」と劣等感に苛まれているわけだけど、いや、これは、古印葵は望海可純よりも高いレベルで作品(に限らず、人間特性まで)分析できてるし、言語化して自分のモノにしちゃってるから、再現でなく内から出るものレベルで作品に投影できてるんだな!? という驚愕があった。 もとより聡明で分析力に長けている(純の攻撃性がいつか自分に向くかも、とか)描写はあったけども、ここまでとは…! とひれ伏す。 そしてまた、物事に優劣をつけないところと、話す時に「これが絶対無二の正解」的なことは言わずに『私なら』『私だったら』と言うところ。とても素敵な人だなあと、これは純惚れちゃうわ〜と、思った。 純の漫画について話したときの、感じ方の特性について、『純さんや私みたいな人間が』『私達が』とまとめてくれたのも、なんだか、嬉しかった。純も嬉しいだろうなあ、と思う。今まで「望海可純と古印葵、上薗純と福田矢晴は違いすぎて」みたいなところから、「感性や評価するものは同じ」って認識になったのが。 あと、純が自分の漫画と古印葵の漫画を比較して、自分の漫画を卑下して貶めてたのを、さらっとすくいあげて、良いところだと説明しているところも、とても好き。『純さんの漫画を言葉で理解して楽しめてる層にとって そんな望海可純の漫画が変わるのは』『大好きな娯楽を失うのと同じことなんじゃないかな』という言葉が、「大好きな古印葵を失った」経験がある純自身にかなり突き刺さる気がする。編集に潰された矢晴だからこそ、自分が口出ししたことで望海可純が変容してしまうことも危惧したのかもしれないし。 この言葉を受けて、矢晴の真似をしたネームをやめて、望海可純のネーム切って、でも矢晴にアドバイスをもらった大ゴマのページは取り入れて、漫画描いてほしいなあと思う。その後、アシスタントにそのページが絶賛され...

純の喜び

 『まだ古印葵は死んでない』 このセリフが本当に、素敵で。絵も、部屋を出ていくのを見守る純から、矢晴=古印葵の、ペンを持つほうの右手、というところが、たまりませんね!! 第5話で、純がアシスタントに言った『私は漫画のルーブ・ゴールドバーグ・マシンを考えてるだけ』『だから正直なんで売れてるのかよく分かんない 私って運がいいからなあ!』というシーン。純が評価するのは「古印葵の漫画」だから、そうじゃない自分の漫画が『なんで売れてるのか』疑問であるってのは本音だろうし、古印葵の作品を崇拝するあまりに、自分の漫画を下に見ているフシがありありと見えるわけだけども。 今回の第10話で、矢晴から『優劣はない』と言われて、純の漫画が大衆に支持されている理由を言語化してもらったことは、かなり嬉しいことだったんじゃないかなあ? と思う。 同居5日目で、まだまだ新生活は短くて、矢晴も浮き沈みが激しい(1年以上かけて培ってきてしまったうつ状態が数日で治るかー!と矢晴に言いたくなる)けども、アルコールが抜けて、十分な食事と睡眠をとって、生来の聡明さを取り戻しつつある矢晴と漫画の話ができた、ネームを見てもらえた、褒められた、古印葵がここにいる、っていうのは、純にとってどれほどの喜びだろうかと。 第10話(同居5日目)の続きも第1話(同居1週間後)になるので、また何周もしてしまうだろうなあ。 そういえば、今回の表紙がカラーで純のアップだけども、たぶんこの顔は矢晴の被害妄想のなかの純かな? という感じの青い顔なのが怖いよーって思うんだけども、純ってわりと歯並び悪いのかな? と前からちょっと思ってたことが、視覚化された気がした。犬歯はわりとはっきり描かれてることがあるように思うのだけど、わりと他の歯もガチャッとしてるような気がして。

ネズミと仔ネズミ

 矢晴が酒を求めて味醂を飲んでるときの、純のセリフが、よい。 『仔ネズミ』と表現するところも、かわいい。 純は矢晴を責めないなあと思ってるんだけど、あからさまに責められたほうがいいのか、この状態がいいのかは、わからない。矢晴は純が責めなくても、勝手に自分で自分のこと責めまくるから、純が責めないのはちょうどいいんだろうなと思う。 矢晴自身、断酒を決意するのがはやすぎた、というのはあるし。昼に起きて気分は良かったからって「今なら」って思ったところまでは良かったけど、その日の午後3時半(財布預けてから3時間も経ってないんじゃ…? の、おやつ時)には酒を探して徘徊してるあたり。さすがアル中。 時間的に純が休憩しようと降りてくる頃合いだし、おやつにしようって台所に準備に来ててもおかしくないし、という、タイミングがよかった。 これ直接純にバレてなくても減りの速さから気づくだろうけど、直接だったのが、矢晴にとってはいいことじゃないかなーとは思う。 ネズミといえば。矢晴の部屋(アパートのゴミ屋敷)でのエピソードの感想で、よく「ねずみがかわいい」というのがあって、私の記憶の中では、そのエピソード中、最初に出てくるネズミは、ちりとりにとられている死んだネズミ(ゴミに埋もれて死んでいたかもしれない矢晴にも見え)のほうだから、数テンポ遅れてから、壁の穴から顔を出してる生きてるネズミか、ってなってたな、というのをさっきちらっと思い出した。

だい10わ!

 更新きてたー! しかもカラー表紙ー!! と、大喜びでとりあえず2周。 予想を超えて、ほのぼのライフで、かわいいし。矢晴がついうっかり舞い上がって断酒するって言い出しちゃって、そりゃーそうなる展開と。たまたま来た純が矢晴の捨てようとしたゴミをキャッチして手に戻したシーンの矢晴の恐怖ときたらまあ。 そして後半の。純のネームを見る矢晴。見てもらってるときの純の表情がむっちゃかわいい! 矢晴にも見てほしいくらいかわいいのに、矢晴の視線は純のネームに集中してるから見てくれない。くすん。 純のネームについてや、漫画について、いろいろ言葉で説明してくれて、ここまで理知的に考えて漫画描いてる人だったんだ! という衝撃を受けつつ、ラストページの真ん中のコマの純の表情がとてもとても綺麗でかわいい。 『まだ古印葵は死んでない』 この感動! はやくも次の更新が待ち遠しい。ここまでで転居5日目で、次の話で転居から1週間、温室で朝ごはんになるけど、6日目になにがあったんだ! 気になる!

【感想】第2話 後悔・プライド

 第2話は、純と矢晴の入浴シーンから始まる、というと語弊があるが、前回粗相して『一緒に風呂に入ろう』からの続きである。 お風呂で洗われている矢晴と、洗っている純のシーン。純が躊躇いなく矢晴の汚した服を洗っているところを見る矢晴はかなり落ち込んでいるが、そこで純がかける言葉がかなり好き。『体の外側のことはいくらでも見せてよ』『内側はいくらでも隠せるんだし』内心では、心の内を語ってもらえるまでになりたいだろうに……と、後の話を読んでから舞い戻ると、見え方が変わるシーンかと思う。初見時から好きなシーンではある。 その後、ソファーに横になりテーブルに置かれている純の単行本を見つめて、矢晴が過去を思い出す。デビューから漫画を描かなくなるまでの数年間。記憶をたどりながら自然な流れで、過去(現在)と話が進み、純と矢晴が出会うきっかけとなる編集部からの連絡となる。 矢晴が編集部へと向かう道すがら、商店の窓に映った全身に、どす黒い感情が芽生え、そして素の感情へと戻っていくところ、矢晴は『それで全部終わりにしよう』と考えているが、漫画への未練を捨てて筆を折るだけではなく、命を断つことまで考えているのではないかと思えてしまう。 そして編集部。担当菊池のふくよかさも、菊池との無言の時間もなかなかに厳しいのだが、四階の登場が矢晴に大ダメージを与える。 そこに登場するのが、望海可純。 矢晴が望海可純を見た時、かなり冷静に観察しているところが、けっこう好き。観察されている純は、古印葵に会えた高揚からか、耳まで紅潮させているのが、かわいい。純の影にある矢晴のコマとその隣の純の顔のコマとで並んでふたりの様子が見えるのがいいなあ、と思う。 最終ページ、大ゴマで、純が『望海可純です』と自己紹介する笑顔は、矢晴に『優しい顔…』と思わせる。この笑顔、ほんとかわいい。純の古印葵への気持ちが溢れてて、とてもかわいい。 純の登場シーンからの3ページ、どこをとっても純がかわいい。この純のかわいさからの第3話の展開の、その落差が激しすぎて、純の怖さが一層引き立つのが、漫画がうますぎてこわい。 第1話ラストからの続き。同居1ヶ月。 過去回想、デビューから漫画を描くのをやめるまでの経緯。 現在に流れて、担当から連絡をもらい編集部へ出かける。 編集部で四階と遭遇。 望海可純と出会う。 第2話で、矢晴の過去がさらに細...

関係ないけど関係ある話

 公開されてまたたく間に話題になった読切漫画。 登場するふたりのキャラクターが、どうにも、純で矢晴で、矢晴で純で、という感じに、【売れうつ】のガールズバージョンとしてありえたかもしれない世界に見えてしまう。 こういう感じ方をするのが、この読切漫画にとっていいことなのかわるいことなのかはわからないし、どちらの作家さんも同世代の天才漫画家だから、「あの人のあの作品に似てるよね」的な感想をもつのはどちらの作家さんにも失礼なのではないか…? という気持ちも芽生えてしまう。 とはいえ、似ている。 細部をいちいち取り上げれば、どこも違う、まったく違うと言えなくもないが、細部を比較するのはまた別の話だから、そんなことを論じる必要はない。 今回、数時間分ではあるが、この読切漫画に対する感想を眺めていたが、「〇〇先生は天才!」という感想が多く見受けられ、この読切漫画の印象とつなげると「メジャーな古印葵」という印象を受けた。古印葵もこんなふうに大衆からたたえられていたらまた違っただろうなあ、という気はする。とはいえ、この読切漫画の作家さん自体は、連載作がアニメ化もする望海可純タイプでもあるかと思うので、結局のところ、よくわからない。 でもみんな、すごい漫画を読むと「〇〇先生は天才!」しか言わなくなるのだな、純、かわいいな、という結論に落ち着いてしまった。

望海可純への感情

 古印葵こと福田矢晴が、漫画家である望海可純に対してどのような感情を持っていたのかは、いまいちはっきりとしない。 望海可純のデビュー時。『その年はA誌に載った望海可純のデビュー作を読んだ』『漫画うま……! しかも2個下…』『すご……末恐ろしいな……』と言っている。矢晴自身は、2冊めのコミックスで賞を受けたところ。 望海可純の連載開始時。『A誌では望海可純が連載を開始した』『こないだ読切載せてからそんなに経ってないのに』『さらにめちゃくちゃ漫画うまくなってる…』と考えているが、この時点ですでに矢晴はB誌との打合せを開始している。連載が順調な望海可純と企画が通らない自身とを比べているが、望海可純の連載開始をきっかけにA誌から去ったわけではない。 受賞をきっかけに他誌からの誘いがあり、幅を広げるために移る、というのは普通にありそうな話だが、本心では「才能のある望海可純と同じ雑誌に載り、差を見せつけられるのが嫌だ」と思っていて、他誌からの誘いに乗った、という可能性はある。とはいえ、そこまではっきりとは言っていないので、わからない。 その後。『A誌も積んでばかりで読まなくなったから買わなくなった』『望海可純の連載は3話目から読んだ記憶がない』 漫画を描くことをやめる直前。『そのころ望海可純の連載は10巻を超えていた』『そのころ私は10回目の〇〇をしていた』 と、自身と望海可純のこととを並べて語るが、構成上、「売れっ子漫画家=望海可純=上薗純」と「うつ病漫画家=古印葵=福田矢晴」の物語だから、という程度であって、矢晴が純のデビュー作によって、漫画の才能に嫉妬しただの、劣等感を抱いただのということは明言されていない。「漫画がうまい」とは言っているので、望海可純の漫画の才能を認めていることだけはわかる。

BL的妄想

 銭湯が通常営業していた場合。矢晴がお風呂に行くのにむりくりついて行って、憧れの古印先生と一緒のお風呂入って、ちょっとやべーことになっちゃってる純。 矢晴を自宅のお風呂に入れて、自分のジャージを着せた純。矢晴が自分の服を着て帰った後、憧れの古印先生が着てたジャージ着て、ベッドでゴロゴロきゃーきゃー悶えてる純。 とか、なんとか、ちょっと妄想して、かわいくて。 そういえば、編集部で会った翌日は徹夜状態で帰っていって、その翌日に差し入れにお弁当持ってきてた(矢晴は純の家でピザも食べたけど、お弁当も食べてる)っぽいけども、買ってきたお弁当なのか手作りのお弁当なのか。会って間もない間柄だから、さすがに手作り弁当は引かれる可能性のが高いから買ってきたのかな。 矢晴が純の家に引っ越すことに決めたことを話したのは、純の家に行った当日なのかな。いつだろう。夕食中かな。帰るときの車の中で「純さんの家に…引っ越します」とか言ってたら、純は思わず事故りかねん……みたいにも思っちゃうんだけど、どうなんだろう。 矢晴はたぶん、貧乏生活中にお金のためにパソコンとか売っぱらっちゃってると思うんだけど、漫画の道具とか過去に描いてた短編の生原稿とかはどうしたんだろう? 持ってきてるのかな。引っ越し荷物むっちゃ少なかったけど、ダンボールのなかには、なにが入ってたんだろう。生原稿持ってきてたら、純むっちゃ大喜びしそうな気がして。 矢晴が純の家に引っ越すって決まってから、純はむっちゃウキウキで同居の準備してたんだろうなあ、と考えるとかわいくて。ウキウキでおそろいのパジャマ選んで買ってる純とか、ちょっと見たい。

売れうつの続きを求めてしまう。早く読みたい

話数 タイトル ページ数 投稿日 投稿時間 前回投稿からの日数 第1話 虚・プライド 33 2021/4/24 22:38 第2話 後悔・プライド 30 2021/4/26 23:35 2 第3話 攻撃性・マインド 30 2021/4/29 0:36 3 第4話 荼毘・アルコール 34 2021/5/1 0:34 2 第5話 上薗純、曰く その① 33 2021/5/8 16:19 7 第6話 上薗純、曰く その② 38 2021/5/15 18:36 7 第7話 誘惑・ユートピア 31 2021/5/24 21:00 9 第8話 零・クッション 18 2021/5/24 21:01 0 第9話 再現・クリエイト 31 2021/6/8 22:09 15 カラーイラスト 2021/6/18 12:27 10 2021/07/17 29   とりあえず、各回の投稿日と投稿間隔を一覧にしてあるわけだけど、第9話から1ヶ月はとうに過ぎ去り、カラーイラストの投稿日からまもなく1ヶ月といったところ。 続きが、読みたい! という気持ちから、Twitterで作家名を検索して、初出まで遡ろうとまだ途中なんだけども。昨日の夕方くらいから始めて、ずっとずっとで数時間寝てちょっと外出しての、今もまだ読み終わってないから人気のほどがうかがえる。 単行本(200ページ前後として)換算で、2冊目の半分弱くらいまでの分量があるけども、序盤、ハイスピードの更新によって単行本1冊分くらいのボリュームで、読者の心を鷲掴み、というのは強いなと思う。 この作品自体は構成がうまいから第1話の時点で、かなり鷲掴みできる感じではあるのだけど、数話まとめて、単行本1冊分とか分量あると、設定も世界観もキャラクターもしっかりわかるから、余計にファンになりやすい。と、思う。 しかしながら、ハイスピードの更新に慣れてしまったところからの次の話まで1ヶ月以上待ち、というのは、想像以上に長い気分になってしまっている。 予定では40〜45話の1000ページくらい予定(計算してみると1300ページくらい行きそうなんだけど)、単行本換算で5〜7巻分? というところだろうか。エピソードによってページ数にばらつきがあって、だいたい平均で30ページぐらい、第8話が短くて(短い割に満足度が高い。週刊誌ならこれくらいのページ数がふつ...

矢晴を潰してしまった内訳

 『採用される20ページを生むのに毎回ネームを100ページ描いてて』 そりゃあ、潰れる。遅筆という自覚のある作家に月産400ページレベルの試行錯誤のネーム生み出させるとか、編集が新人だからっつっても、わかってなさすぎて。 『冒頭から6ページまでのシーンはなくていいですね』 掲載用の20ページ中6ページも削ったら、その6ページで表現してたことを含めて新たに6ページ入れなきゃいけない。そしたら全体の構成が変わる。 睡眠時間を半分削って、さらに週に2回は徹夜して、睡眠不足で思考力すら低下してるのに毎回100ページのネームと20ページの下描きとペン入れ、さらに打合せの時間も捻出してなんて、これが純だったとしても絶対潰れるレベルの過酷さ。 もともと矢晴自体が多少無理しても漫画を描くのが楽しいから描く、って状態だったけども、「生活費を稼ぐために漫画を描かなくちゃならない。掲載してもらえなければ原稿料が出ない。掲載してもらうためには編集の言うとおりにしなきゃいけない」って、漫画を描く楽しさが完全にどっか行っちゃってて、生活費を稼ぐ手段の漫画を描くためには無理をしすぎて、生存に必要な睡眠と食事を疎かにせざるをえなくなり……って負のループ。 編集との漫画の作り方も、ちょっとそれはどうなの? という感じがしないでもないけども、そこらへんは描写されていないだけかもしれないけど、「3巻分の予定の連載」であるなら、まずはざっくり3巻分のプロットをつくって、結末まで決めておいて、それを20ページの1話分ずつ詳細な話を作っていく。ネームにする前段階で方向性やらセリフやら決めて、ネームに起こして、漫画としての見え方を確認・修正して、原稿にする、くらいの手順かと思うのだけども。打ち切りにするまでの4話の間にネーム400枚って、単行本2冊分よ? むしろもう、この時点で3巻分結末までのネーム出してからのブラッシュアップのほうが効率的なんじゃないの? くらいに思える。最初は辛いけど、話かたまっちゃえばあとは作画作業だけになるし。 純の『下描きを兼ねたネームは5時間でできるし』というのに恐れおののいてたけども、矢晴も健康な状態で、自分の考えるままの20ページ分の下描きを兼ねたネームなら、1日もあればできると思う。純は『担当にはこれ以上先のネームを渡してくるなと言われてるし』って言うから、すでに1ヶ月...

6話の純の過去話

 【第6話 上薗純、曰く その(2)】に挿入されている、純の過去(高校時代?)のエピソードが、いまいち好きになれない。 純の内面を知る上では必要な挿話だったのかもしれないけども、純本人から見ても希薄な関係すぎて、その挿話後、突然第4の壁を突破してくるような問いかけ部分に拒絶反応を感じてしまうような感じで。 『絶望してる時に自分を優先順位の一位にしてくれない人間しか周りにいなかったら どうなるか知ってるか?』『存在を忘れられて 「たかが」金もなくてどこへも行けなくて選択肢もろくになくて「たかが」がないだけでどんなに惨い身体になるのか知ってるか?』と言われても……。言っている純本人が、なにも知らないくせに、という気分になってしまう。 この第5話、第6話自体が、「純の話したことをもとにして純の視点で物語を構築しているけども、第4の壁を突破してくる問いかけだけは、物語の描き手である矢晴の言葉である」ならば、ぎりぎり許容できるかなーという気にもなる。矢晴の言葉であるならば、「知っている」わけだから。 もしも、自殺してしまったのだろう同級生が、実は純の初恋の相手であったなら。 淡い恋心を抱いていたものの、親しい存在になりにいくほどの勇気もなくて。心の内を話してもらえるほどの存在にもなれなくて。自殺を踏みとどませられるほどの存在にもなれなくて。そんな存在になりたかったという後悔が、矢晴への援助、劣悪な環境からの救済の原動力になっている、というようなエピソードであったら、純の行動の動機が明確になった気がする。 以前に、《純の現在の行動が、「高校時代に助けられなかったクラスメートの代替品として古印葵を助けることによって罪滅ぼしをしようとしてる」みたいに見えてしまって。》と書いたけども、このクラスメートが、純の想い人であったなら、話が違ってくる、という話。「過去に助けられなかった好きな人への後悔が、今助けられるかもしれない好きな人への行動の原動力」というのなら、純の矢晴への想いが強化されるエピソードだなと思えるので。 高校時代は無力だったけども、売れっ子漫画家になっている今は、救済に必要な「金」という力も潤沢にあるし、行動力もあるから。 『私はあなたの前では「たかが」を渡さず口だけ出す偽物なんかにならない』と矢晴に膝枕しているシーンが好きだけども、さらに好きになると思う。

純の異常性

 純の行動や思考が、怖いというか、常軌を逸しているというか、異常というか。 攻撃性の高さは、アシスタントのライングループ望海組を退会してしまうところや、編集部での四階への意趣返しが顕著なんだけども、『きれいな花を見つけたのにどうしてみんな無視するんだ?』と考えているシーンでの、きれいな花を見つけてきたイメージが、野に咲く花を愛でるではなく、きれいな花を手折ってきて握りしめてるところも、かなり怖い。 その手の中で枯れちゃって、きれいな花じゃなくなっちゃう……と思うと、矢晴のこれからがとても心配になってしまう。 ブックワインのインタビューや、アシとの会話、四階が古印先生の作品を『これ』と言った時とかの、逆鱗に触れたふうの一瞬の絶対零度を感じさせる表情とかも、純の異常性が垣間見える感じのシーンかなと。 アシとの会話では、その後すぐに切り替えてたけども。編集部での四階の一件では、廊下まで聞こえてきた四階の古印先生への罵詈雑言を打合せスペースの影で聞き続け、むっちゃ心落ち着けてから割り込んで、優しい笑顔で古印先生に挨拶できたのに、四階がまた余計なこと言うからキレちゃった、って感じはある。 四階への意趣返しは、純が生来持ってる分析・再現能力が自然と発揮されたことだろうなと、第9話での分析・再現の話聞いたときに、あーってなった。 純の感情の切り替えがすごいのか、心に渦巻く感情を表に出さないことに長けているのか、そこらへんがサイコパスとかいわれちゃうところなのかなーと思う。 あと矢晴を同居に誘うためにいろいろ考えて言葉を尽くしてたけども、矢晴の立場から見ても、読者の立場から見ても、『あなたの亡骸は私が拾いたいんです』『死ぬまで孤独じゃなくなる約束しませんか?』っていう言い方は、ふつーに怖い。口説き文句としてはけっこうキュンときそうな気もするんだけど、純が怖い。 矢晴が死にかけてる感じがするとか、もうじき死んじゃうとか、心配して「とにかく生きていてほしい」ってよりも、「私の知らないところで死なないで。私の目の前で死んでほしい」っていう気持ちが強すぎるのかなー。(そういう演出といえば演出なのかもしれないけども) 攻撃性とあいまって、純が矢晴を殺してしまいそうな気がしてしまうけども、未来は幸せで確定してるからそこらへんの心配はいらないはず。 純の「古印葵への執着」もけっこう異常な...

純の家事能力

 かなり合理的に省力化してる家事全般。 一番時間がかかる食事については、おかずの宅配、家事代行での作り置きによって日々の負担はなく、栄養面も特に自分で考えることなくバランスのいい食事をとれるようにしている。純がやるのはご飯を炊くのと、食べたいおかずをレンチンするくらいのこと。あと使った食器の片付け程度。毎日3食考えたり作ったりしなくていいのは、1日が30時間にでもなったくらいの省力化。自炊が気分転換にもなってそうで、かなり良い状態を構築していてすごい。 掃除については、常時動いているロボット掃除機によって床はきれいに保たれている。掃除・片付けの手際はいいから、汚した都度でさっさと片付けていて、清潔な状態を保っている。全体的に汚れが気になり始めたら、ハウスクリーニング入れそうな感じ。 洗濯については、古印葵に会いに行ったときに着ていたジャケット以外は特におしゃれすぎるおしゃれ着は着てなさそうで、洗濯機で洗って、隣の乾燥機に放り込めば終わり、って感じの。脱衣所の棚に並べられたバスタオル類とかの整理のされ方、脱衣所にある少し大きめのチェストとか考えると、その場でさっさと片付けてしまえる合理的な配置で、洗濯のための移動距離や労働力はほぼない。 こう並べると、合理化・省力化・手際のよさから、家事に割く時間というのは1日のうち1時間あるかないか……ではないかという気がする。 帳簿付け、家庭菜園の手入れ、筋トレなどもしているとしても、家事と合わせても2時間かかるのかどうか…? という気がするから、徹夜などせずともじゅうぶんに漫画を描くことに充てる時間を確保できる。 『下描きを兼ねたネームは5時間でできる』くらい筆が速いのなら、下描きが済んだ原稿のペン入れも速いだろうし、オールデジタルで、アシスタントは外部の在宅アシを8人雇って、一人暮らしで雑事に追われず完全に自分のペースだけで仕事ができる環境を整えてしまっているところもすごい。 こんだけ合理化してるなら、週刊連載3本くらいあっても平気でやれそうな気がするけども、そこまで仕事に追われる生活はしたくないんだろうなって感じもする。今のままでも十分稼げてるし。稼げてるから設備整えたりアウトソーシングしたりで合理化・省力化できるし。金があるからできる生活ではある。 矢晴は、自分が漫画を描くときのペースや一人暮らしの家事経験と比べて...

粗相した日

 同居開始して、同居当日の夜の睡眠薬の過剰摂取で動けなくなっちゃったっぽい矢晴を朝起こして歯磨きして台車で運んで食事や薬を飲ませてなどなど、献身的に世話をしている純が、矢晴が粗相した日は、『おっそよ〜矢晴〜昼飯…』と部屋に入ってくるのだから、けっこう遅めの時間。 1ヶ月経ってもほぼ自力で動けない矢晴が朝起こしてもらえずトイレに連れてってもらえずなら、粗相しちゃっても仕方ないよなーって思える。 純は献身的に矢晴の世話をしているけど、矢晴に合わせてるって感じじゃなくてけっこう自分のペースで動いてて、矢晴はむしろ振り回されてる感じかな?とも思える。 粗相した日、純は自分の行動(遅く起きたこと)を詫びたりしないのが、いいなと思った。矢晴のことも責めたりしないし。とはいえ、なんだかそのセリフは、矢晴にはちょっとキツイんじゃ…?って感じではあるけども、まあ純の言葉選びが下手なのはいつものこと。 洗濯にクエン酸を使っているあたり、「純、やるな」って感じだけども、掃除洗濯もろもろ、家事万能すぎて恐ろしい子。 バスルームでの『体の外側のことはいくらでも見せてよ』『内側はいくらでも隠せるんだし』と言う純の表情と、それを聞いている矢晴の表情が、とても好きだな、と思っている。

【感想】第1話 虚・プライド

 手法として、未来(現在)を見せておいて、過去(現在)を語る というのは、興味を引くことにおいて、かなり有効。 漫画がうまい。さすがプロ、としか言いようがない。 何周も読んでしまって初見の感想を忘れてしまったのと、ついでに1話読むと次の話に進んでしまうので、この話の感想を書こう、と読み返しても次の話に行ってしまって、なかなか難しい。純粋な感想ではなくなってしまう。 第1話は、かなりざっくりとした、いかにも下描き然としたラフな筆致だけれども、漫画がうまいからか、気にならない。きれいにペン入れされた画も見てみたい気がするけども、このラフな筆致の勢いもかなり好き。 第1話として、キャラクターの紹介とここに至るまでの顛末が描かれていて、すぐに物語世界に惹き込まれる。 同居から1年後、2年ぶりに漫画を描いた現在。 2年前、漫画を描くのをやめるまでの6年間と経緯。 漫画家復帰の1年前、同居開始の1週間後。 同居開始から1ヶ月後。 この第1話で、ズタボロの矢晴と世話をする純の、どちらも好きになった。 『漫画への思いは漫画で描いて返す』と純が言うシーンで、純のことが怖くなる。 『動けない 動けない やっちまったのに』と泣いている矢晴の顔がとても可憐でかわいい。 ―――― なんだか感想になってないなと思って、後からまた感想を書いた。 【感想】第1話 虚・プライド(再)

もしかして…?

 実は、純と矢晴は授賞式のときに会ってなかったり…? という疑惑を少々。 矢晴が自分のファンについての記憶を語らないのが気になって。純は、あんだけのサイズ(身長)あるんだから、「授賞式でサインもらいに来た大きくて若い熱心なファンがいた」くらいの記憶はあってもいいのでは…?って思うのと、その面影と今の純とが重ならんかなー?って思うのと。 編集部で純が『初めまして』って挨拶してるのは、「漫画家の望海可純として会うのは初めてだから」とも思ってたけど、ほんとに初対面の可能性もあるんだな、と。授賞式でサインもらうのに直接行けなかったとかなんとか。誰かに頼んでサインはもらったけど、古印葵と対面してない可能性が高そうな気がしてきた。 純のデビュー前の顔は漫画のなかで出てないから、授賞式で会ったときとはがらっと印象が変わってるのかなーとも思うんだけど、この身長くらいは覚えててもいいんじゃ…? って思っちゃう。 今後語られたらいいな。

分岐点

 矢晴の人生の分岐点はいくつかあるんだけども、ドツボにハマった今の状態じゃないと純と始まらないから、「矢晴と純が幸せになるには分岐点を間違え続けなければならなかった」って感じがする。間違え続けたからドツボにハマった今がある、ってことだけども。 【受賞後、B誌に移るか否か】→A誌に残っていたら、それなりに順調に漫画家として活動できたと思える。謝恩会で純と会ってなつかれる。 【B誌で行き詰まっている間のバイト先】→漫画アシの道を選んでいれば、B誌の待遇の悪さに早く気づけて、B誌に見切りをつけるのがはやまった。A誌に戻って、それなりに順調に漫画家として活動できたと思える。謝恩会で純と会ってなつかれる。 【A誌に戻ってからの連載中】→自分の意見を言えていたら、それなりに順調に連載を続けれたと思う。謝恩会で純と会ってなつかれる。 【A誌の編集部で純に会えなかったら】→担当編集の菊池に連載を投げ出したことを謝って、漫画家をやめる。  →漫画と関係のない仕事に就いて、それなりになんとか生きていく。  →漫画をなくしたことで、未練がなくなり、この世を去る。 【純の家に引っ越さなかったら】→純が通って世話をする。なんとか立ち直っていくか、自殺未遂でむりやり純の家に引き取られるか。 純が古印葵のファンとして、ファンレターを送り続けるとか、デビュー当時から古印葵の布教活動をし続けるとかしてたら、自分のファンが居るってことが目に見えてて、分岐点すら発生せずに矢晴はA誌で漫画家として活動し続けて、謝恩会で純になつかれてたかもなあーとも思えるんだけども。 そもそも授賞式で純がサインをもらいに行ってるんだから、矢晴は「古印葵の熱心なファン」を見てるわけで、それが「A誌に残る理由」にはならなかったんだから、純がどんな活動してたとしても「B誌に移る」っていう分岐点は発生しちゃったのかな。 矢晴は器用じゃないから「2誌でそれぞれ読切を載せる」みたいなことはできなかったのかもしれないけど、もし掛け持ちできてたら、一向に掲載されないB誌に見切りをつけるのもはやまっただろうになーとは思う。

人間らしくありたい矢晴

 矢晴自身は、かなり病んでるとはいえ、持ち前の聡明さと感受性の高さは損なわれてなくて、世間一般に認められるような人間らしい状態でいられないことが病みを加速させてるのかなと。 矢晴がアパートをゴミ屋敷にしちゃったのは、『ゴミ屋敷作るほど性格が怠惰』なわけではなくて、睡眠不足やらなんやらからゴミ出しの時間に起きれなくなって、ゴミが溜まっていってしまった結果がゴミ屋敷ってだけで、ゴミをまとめる(ゴミ袋に入れてゴミ出しできる状態にしておく)ことはできてるわけで。 溜まってしまったゴミを一気に処理できるような気力も体力もなくなっちゃった結果だから、そこを「性格が怠惰」と言われると辛いなーという気がする。矢晴のゴミ屋敷は外界からの防御壁としてのゴミ屋敷ではないだろうなと。 防御壁だったとしたら、純がさくさく掃除しちゃったのは最大の悪手にはなるんだけども。 【第8話 零・クッション】での『ダメにする…というより人をゼロにするクッションだと思えば』『矢晴さんにとっては今より良くなるクッションじゃあないですか?』と純が言ったのは、現状の矢晴の「ダメ人間=マイナス」を「人=ゼロ」にするってことで、矢晴にとってはかなり救いのある言葉で、その後の『…おかえり』『ただいま』から『こんな日がずっと続いたらいいですね』の流れが、緩やかな幸せに満ちててとても良い。 この話のラストでの『人間らしく振る舞わなくていいですよ!』に応えた矢晴の笑顔は、私には読み切れないのだけど。人間らしくありたいはずの矢晴にとって救いの言葉であるのかどうか、わからないなあと思う。このときの矢晴の笑顔はとても綺麗だなとは思うから、純の言葉が矢晴の救いであったならいいなとは思う。 【第9話 再現・クリエイト】の後半では、純の天才性に触れて、自分が何もできないことを嘆いてるけども、純はちょっと常軌を逸してる感じだからそこを比べちゃなんねえよ、と背中をさすってあげたくなる。漫画家・望海可純に対して、漫画家・古印葵は『そんなことひとつもできない』って考えちゃうってことは、矢晴自身が「人間でありたくて、漫画家でありたい」って思ってる証左かな? とは思える。 編集部に行ったときに『仕事を投げ出したことをちゃんと面と向かって謝ろう……』『それで全部終わりにしよう』って思ってたのに、結局、純によって古印葵が留められちゃったのもある...

天才×天才の物語

 【売れうつ】自体は、系統の違う天才同士の物語。 矢晴は芸術家タイプだから、人間らしい生活とか労働と対価がどうこうとかをよそにやって感じるままに世界を捉えて表現できたら一番輝けるんだろうなと思うから、純は『人間らしく振る舞わなくていいですよ』って無邪気に言うんだろうけども、矢晴は「世の中の認める人間でないと価値がない」みたいに思い込んでるから、そこらへんをほぐすところから純はがんばれ。 純は職人タイプ(といえばいいのか、純を表すには言葉の選択がよくわからない)で、メソッドの分析・再現ができて、理論的に組み立てて考えたとおりの読者の反応を引き出すことができる天才。だからたぶん、菊池さんが古印葵の連載でやりたかった『ここで〇〇〇〇〇ってセリフを入れると乙女心が掴めるんですよ』みたいなことを毎回やれてしまっているんだろうなと。 対極にある天才同士だから、お互いに相手に自分にないものを見てて、それがうまいことお互いを補う形ではまれば幸せになれる気はするんだけど、一番難しそう。 純が考えに考え抜いた「言葉」は矢晴には響かずに恐怖しか与えないし、あまり考えずに話した言葉は矢晴を追い詰めてて、どっちにしろ詰んでるんじゃ…? という雰囲気。純が矢晴を説得(籠絡)するのにあの手この手で言葉を変えるから、どうにも純自体が信用できない雰囲気が強まるんだよねえ。

担当編集

 矢晴の最初の担当は、矢晴とかなり相性がよくて、一緒に喜んでくれて、かなり良い人だったんだなあと思える。 矢晴は6年で2冊しか単行本を出せなかった、と言っているけども、実際のところはデビューから3年くらいで短編集を2冊なのだから、『遅筆だし』というのを差し引いても、ボツも少なく、コンスタントに読切を載せて、いい感じにまとめれた上に、賞までとれてるってのは、けっこうな成果という気がする。 賞がとれて、そこから連載でもできてたら、漫画家としてはけっこう充実な人生になったかなー(安定して彼女と結婚まで考えれるくらいにはなっただろうなー。純とは始まりようがないけど、純は古印葵の漫画が読めれば幸せだろうからそれはそれで)。 やっぱりここでB誌に移っちゃったのが、ダメだったよなーって。担当さんが強く引き止めてくれてたら、って思わないでもないけども、引き止められたのをぶっちぎったのかどうかは語られてないからわからない。 B誌の担当は、明らかにハズレって感じなんだけども。どんだけネタ出ししても企画が通らない、やっと通った企画も4月の掲載目指して修正2ヶ月続けても土壇場で企画変更の全ボツ、さらに上のひどい編集から原稿料減額言われて、流行りジャンル以外載せたくないとか、まーほんと、B誌ひどすぎんよ。だったらなんで古印葵に声かけたよ? B誌で2年半も我慢したのは長すぎたし、古巣のA誌に戻って担当が変わっちゃったのも辛かった。A誌の新担当の菊池さんはいい人ではあるけども、新人だからか編集としてはまだ未熟っぽかったし、古印葵がB誌で変に鍛えられちゃった「編集の言うとおりにしないと載せてもらえない」意識と「自分を殺してでも生活するお金のために漫画を描かないといけない」意識とが、矢晴の繊細な部分を病ませるには十分すぎて。 3年間もなにやってたかわかんないような出戻り作家に3巻分の連載枠とってくるってのは、菊池さん相当がんばったんじゃないかなあ? というところから、菊池が古印葵を買っているってのはわかる気がするんだけども。 古印葵と担当の菊池福子の相性が噛み合わないってのと、古印葵がもっと主張できてれば、菊池さんも受け入れて、二人三脚でいい感じの連載できたよなー、と思う。 矢晴が心のなかで思ってたこと全部菊池さんに言えてたら、ってのと、菊池さんが張り切りすぎちゃってて若干作家置いてけぼりの...

コメント類を

 第10話を待って、1ヶ月経過してしまい、かなりの禁断症状が……といった依存体質をどうにかしたほうがいいような気がする今日このごろ。 作家さんの息抜きのはずなので、ちゃんと息抜きできてます? って心配するふりで本心は、続きを…はやく……、みたいになってるなと猛省。 他の方の感想も大量に摂取したいのでコメント類を読むことも常態化している。支部の各話につくコメントもざくざく読んで、Twitterでも各種用語や組み合わせを用いて検索しまくって、検索用のタブが20にもなろうかというのに、まだ取りこぼしがあるような。そのものズバリの用語を使わないで感想を言うタイプ(私は特にこれ)の感想はこの検索方法では浮上してこない。そのうえ、検索自体も完全に網羅されているわけではないようで、けっこう前の読んだことないコメントがふわっと上がってくることもあり。 Twitterで専用のアカウントを作り、【売れうつ】の読者を全員フォローしたい気持ちに駆られるが、気持ち悪がられてブロックされては本末転倒だから、それはできない。ただ感想やコメントが読みたいだけだから。 コメント類は、「完全に読み違えてて何言ってんだろう?」ってなるものから「そこは気づかなかった! 読み込みすげえ!」ってなるものまでいろいろあって、視野が広がる。面白い。

褒め方が下手な純が好き

 この子ったらすーぐ自分の作品と比較して自分の作品卑下するからー。 編集部で出会ってから1年経っても矢晴への褒め方変わんないとこが、けっこう好き。編集部で矢晴が比較されてむっちゃ静かな怒りを溜め込んでたとこ『?』ってなってた純かわいい。 「古印葵の作品に比べたら望海可純の作品はまだまだ全然」とか思ってるのは本心なんだろうけども、それこそ、「古印葵が世の中で爆発的に売れてないのに、望海可純の漫画がもてはやされてる現在の世の中はおかしい」とか思ってそうなところが、純の可愛いところ。 褒める時に自分の作品を引き合いに出さなかったら、もうちょっと矢晴の純への印象もマシだったろうに、とは思う。第一印象は『優しい顔…』だし。 編集部での一件で矢晴の純に対する印象は『こいつとは関わらない方がいい』『その攻撃性がいずれどこかでこちらにも向く』『その前に離れよう』ってなったのに、同居しちゃって、この先、矢晴が感じた純の攻撃性がどうなるのかが、とても気になる。

夢のエンディング

 第10話が来るのを今か今かと待ち焦がれている最中でありつつ、とても良い夢を見た。 純と矢晴がふたりしてスーツでドレスアップしていて、「結婚か!?」とときめいたが、結婚ではなくマンガ大賞の授賞式で。 賞を受けた矢晴が「純の支えがあったから」とスピーチしてて、純が最高の笑顔で矢晴に駆け寄る。 そんな夢。 そんなシーンが本編で見たいものだと思うし、その幸せへの道筋として、本編の地獄巡りが楽しみだったりするので、次の話が待ち遠しい。

感想と二次創作

 第9話からのループを繰り返し、何十周としてしまったため、初読の感想はもはや覚えていないくらいに記憶が上書きされてしまっているが、第10話の更新がまだまだのようだから、ぼちぼち第1話から各話の感想をしたためたい。 二次創作を嗜む文字書き系の人間だから、ついつい、こうだったらああだったら、と想像しつつ、頭のなかで文章を組み立てていたりする。本編に沿う形での二次創作は難しいなと思うのだけど、「その時、純は」といったパターンはちょいちょい頭に浮かぶ。編集部で四階がしゃべっているのを聞いているシーンなんかは、純の内心を知りたくて、想像してしまう。あと、「もしあの時こうだったら」といったもの。 とはいえ、感想や考察は書きたいなと、このブログを始めたものの、二次創作は書かないかなーと。頭のなかではいろんなシーンや物語を考えるけど、アウトプットは考えてない。 二次創作とは別に、この作品をノベライズしてみたいという気持ちもあったりする。私の文章ではまったく追いつかないのはわかりきっているのだけれど。書きたくなる。書かないけど。

純が仕掛けた萌えポイント

・さらっと矢晴をお家に連れ込んで風呂に入れ、勝手に服を洗濯することである程度の時間足止めに成功し、着替えとして自分のジャージを着せることで彼シャツを演出。 ・無理矢理お風呂に入れることで有無を言わさず、新調したペアパジャマを矢晴に着せることに成功。 かわいいな、純。 もうひとつ、挙げたいシーンがあったはずなのだけど、忘れてしまった。思い出したら書く。

矢晴の泣き顔はかわいい

 【第1話 虚・プライド】の同居1ヶ月後の矢晴の泣き顔がかわいくて! 矢晴を好きになったのはそこからかなあ? という気がする。同居1週間後の温室でグズグズに泣いてる矢晴もかわいい。 【第4話 荼毘・アルコール】の矢晴の泣き顔もかわいいのと、純が『一人ぼっちで死なないでください』って矢晴を至近距離から見つめてる時に純の瞳も潤んでるところ。純が矢晴の涙をすくってるところが、とても良い。その次のページの純がむっちゃコワイけども。 矢晴の泣き顔じゃないけど、【第8話 零・クッション】の『……おかえり』『ただいま』のシーンの矢晴のやわらかい笑顔とそれに応える純の瞳が潤んでる感じで、ふたりともかわいいー! と悶える。

キャプションは

キャプションは、読まないことが多い。 この作品のキャプションを読み始めたのも、第6話更新後あたりからだったと思う。なので、第5話の追記〜の一連は、見てなかったし、状況も不明で、後で読んでから「へ〜」ってなった。 第5話のコメント(など)で、「ある一定のラインまで、誰もキャプションに書かれた作家さんに触れてなくて、それがまるで作中に描かれていることと同じだ」ってな意のことを言われてるのがあるけども、キャプションに作家さんの名前が書かれた(自己ツイを追記した)のが、作品の更新とタイムラグが発生しているんでは…? としか思えず。 追記の日時が明記されてれば、判断しやすかったかな? という気はするけども、別段そこまで細かくする必要もなく。また、私のように「キャプションを読まない人間」もいるかと思うので、そんな非難するような口調で詰らんでも……とは思った。 【売れうつ】は、キャプションで、先の見通しとか、予定とか、状況とか、しっかり書いてくれるのが、かなり安心できる要素だなと思っているところ。 と、そろそろ更新する…? する…? とソワソワしてきて落ち着かないから、ふんわり思っていることを記述しておいた。(ソワソワしてきてる人増えてきたなーと勝手に仲間意識をもちつつ)

純と矢晴の力関係

 純は攻め、矢晴は受け。 というのは、もともとタイトルからしてこの物語の根底にあるものなんだけども。 ズタボロの矢晴を、純がスパダリして療養させて幸せにするってことで、純が積極的に働きかけて包容する感じだけども。 かといって、純のほうが優位なのかというと、力関係としては、矢晴のほうが強そう……というか、私の好みとしては、「受けが強い」というのがあったりして、そこにピッタリはまってくるから、受け(矢晴)が強い というのは、確定ではないかと思っている。 矢晴が病んでなくて(彼女いなくて)、普通に漫画家として独り立ちしつつも、純と出会って、なんだかんだで同居して、いい仲になって――としても、純のワンコ攻めって感じで、主導権は矢晴にありそうだし。 そもそも、矢晴は純にとって「神にも等しい推し」って感じだから、純はなにをおいても矢晴のことを最優先にしそうなわけで。一途な純を受け入れてくれる矢晴のが、強いな……と思う。 矢晴が病んでいなければ、という前提でふたりの関係を考えると、わりと 矢晴×純 にもなってしまいそうなくらいに、矢晴のが強い。そして、私は強い受けが好きだから 純×矢晴 になる。 同居当日は『矢晴さん』『純さん』って呼び合って敬語で話してるのが、同居1週間で『矢晴』『純』って呼び合って敬語もとれてて、その1週間になにがあったの!? はやく知りたい! という気持ちがあるわけだけども。 睡眠薬の過剰摂取で動けなくなって、発話もきびしくなってる矢晴を気遣った結果かなーとか、想像している。

純の性指向

 矢晴の性指向は異性愛だってのは『7年付き合った彼女』がいるってことで明かされてるけど、純ってどうなんだ? という疑問を持った瞬間に、「そういえばこの作品、BLだったわ」ってことで、たぶんゲイってことで確定なのかな? と思った。 これまでの恋愛遍歴が明かされてないからどうなんだろうっていうのはあるんだけども、純がゲイだったとしても、頭のなかだけで完結できそうなタイプに思えるから、誰かと恋愛をして肉体的接触をしてっていうのはなさそうな…? 気がする。 それこそ、古印葵の漫画に惚れ込んで、授賞式で矢晴を見て、実物の古印葵にも恋をして、彼女と一緒に帰る矢晴を見て、失恋して……ということはありそうだけども。 初めて古印葵の漫画を読んで心掴まれてから6〜7年、ずっと古印葵に恋してるのかなと。一途でかわいい。 ボディタッチの多い純だけども、私が気に入ってるシーンは、【第8話 零・クッション】で『おかえり』って言われた後のクッションの上で再度眠りに落ちる矢晴の頭を撫でてるところと、【第9話 再現・クリエイト】の矢晴の部屋で『幸せになってほしい』って頬染めながら肩を抱くところ。 純の矢晴への愛情が見えて、萌える。 BL漫画だから、性的にどうこうまでいっちゃうのかなー? どうかなー? と先の展開に慄いてはいるのだけど、このふたりにそこまでの関係は……あってもいいし、なくてもいい……かな? カラーイラストを見てからは、あってもいい、に寄ってる気がする。 その営みを見せろーってほうにはいかないけど、なんだかふたりの距離感が…? まさか、した…? みたいな雰囲気は見たいかなー。

矢晴の虫と純の愛

 純の愛情によって生まれた矢晴の虫。 純に抱きしめられた背中の感触に芽生えて、純の差し伸べた手(釣り針)に縋るように生まれて、純の愛情を貪って成長してる。はらぺこあおむし みたいだなあと思ってる。 だから、これからの生活で、純の愛情を一身に受けてズタボロになった自尊心修復して育んで自信をつけて、漫画家として復帰する矢晴のなかで、虫がどんどこ成長して蛹になって、蝶へと羽化するのを期待してる。 第1話で、矢晴が2年ぶりに描いた漫画に、純が『漫画への思いは漫画で描いて返す』って言ってたけども、そこで描かれた漫画に自分との差をまざまざ感じて打ちのめされそうでも、その純の漫画は矢晴の漫画がなければ生まれなかったってことをちゃんと認識して、自信をもってほしいなあ、と思う。矢晴が再度漫画を描き始めた頃には、虫も蛹になっててほしい。 蝶になったときに、矢晴が純のもとを飛び立ってしまうのでは…? という不安はあれど、純と矢晴は幸せなカップルになっててくれるはず(期待するハッピーエンド)だから、あと30話強、楽しみにしている。

純の順風人生

上薗純 望海可純 19歳 ※大学生、旅行中に古印葵の漫画(春眠の底)を読む 20歳 ※コミケに参加している(台車が必要なほど大手) ※牧野先生に師事・アシスタントをしている 21歳 22歳 E・B大賞の授賞式で古印葵のサインをもらう A誌でデビュー(鬼弾児)する(担当:飯田?) 23歳 A誌で連載開始(シヴァ・アンバー)する 24歳 25歳 連載は10巻を超えていた 古印葵の連載に喜ぶも、古印葵らしさのない漫画に愕然とする 古印葵の布教活動を始める(2020年7月13日ブックワインインタビュー)(担当:桜木) 26歳 秋頃15巻が発行。アニメ化。累計1400万部 菊池担当の小説の挿絵に古印葵を提案する 秋の終わり、古印葵と出会う・手帳にサインをもらう 古印葵と同居を開始する 27歳 古印葵と同居 古印葵の漫画の最初の読者になる 28歳 29歳 幸せにする  純の実力的には、わりと遅咲き? とも思えるのだけど。けっこうな大御所先生に師事してたり、コミケに参加するのに台車が必要なほどだったり、というエピソードからは、もっと早くにデビューしててもおかしくなさげ。古印葵と同じ雑誌にってのにこだわっちゃった結果かな。 最初の連載が人気出て、連載が15巻まで続いててアニメ化もして、戸建てのお家も持ってて、純の人生、順風満帆と言いたいところだけども、古印葵関連では不遇。 がんばって同じ雑誌でデビューしたのに、古印葵はA誌を去ってしまい、消息不明。3年ぶりに戻ってきての連載も古印葵らしさのない作品になっていた。その落胆たるや。 『もっと布教してこの世の基準を私寄りにするしかない』っていう思考も怖いんだけども、やり方と状況がマズイなあと。プレゼン下手ってのもあるけども、古印葵の3年ぶりに掲載された漫画が、純自身『どうしてこうなった?』って思える代物になっちゃってたから、純がどんだけ「古印葵はいいよー」ってふれて回っても、世間は最後の連載だけ見て「古印葵はダメ」って判断しちゃうだろうし、すでに古印葵は病んじゃってる。 アシスタントとのライングループを古印葵絡みの発言を最後に退会しちゃった後で、アシスタントとの通話で『エモーショナル系の感動なら古印葵作品おすすめだよ』って言ったって、アシスタントの中じゃ「古印葵の話はうかつな返事するとヤバイ」って認識されてるだろうから、そりゃあ静...