矢晴を潰してしまった内訳
『採用される20ページを生むのに毎回ネームを100ページ描いてて』
そりゃあ、潰れる。遅筆という自覚のある作家に月産400ページレベルの試行錯誤のネーム生み出させるとか、編集が新人だからっつっても、わかってなさすぎて。
『冒頭から6ページまでのシーンはなくていいですね』
掲載用の20ページ中6ページも削ったら、その6ページで表現してたことを含めて新たに6ページ入れなきゃいけない。そしたら全体の構成が変わる。
睡眠時間を半分削って、さらに週に2回は徹夜して、睡眠不足で思考力すら低下してるのに毎回100ページのネームと20ページの下描きとペン入れ、さらに打合せの時間も捻出してなんて、これが純だったとしても絶対潰れるレベルの過酷さ。
もともと矢晴自体が多少無理しても漫画を描くのが楽しいから描く、って状態だったけども、「生活費を稼ぐために漫画を描かなくちゃならない。掲載してもらえなければ原稿料が出ない。掲載してもらうためには編集の言うとおりにしなきゃいけない」って、漫画を描く楽しさが完全にどっか行っちゃってて、生活費を稼ぐ手段の漫画を描くためには無理をしすぎて、生存に必要な睡眠と食事を疎かにせざるをえなくなり……って負のループ。
編集との漫画の作り方も、ちょっとそれはどうなの? という感じがしないでもないけども、そこらへんは描写されていないだけかもしれないけど、「3巻分の予定の連載」であるなら、まずはざっくり3巻分のプロットをつくって、結末まで決めておいて、それを20ページの1話分ずつ詳細な話を作っていく。ネームにする前段階で方向性やらセリフやら決めて、ネームに起こして、漫画としての見え方を確認・修正して、原稿にする、くらいの手順かと思うのだけども。打ち切りにするまでの4話の間にネーム400枚って、単行本2冊分よ? むしろもう、この時点で3巻分結末までのネーム出してからのブラッシュアップのほうが効率的なんじゃないの? くらいに思える。最初は辛いけど、話かたまっちゃえばあとは作画作業だけになるし。
純の『下描きを兼ねたネームは5時間でできるし』というのに恐れおののいてたけども、矢晴も健康な状態で、自分の考えるままの20ページ分の下描きを兼ねたネームなら、1日もあればできると思う。純は『担当にはこれ以上先のネームを渡してくるなと言われてるし』って言うから、すでに1ヶ月分(4〜5話分・100ページ前後)くらいは先行してネームができてそうだし、担当は大きく口出ししなさそうな雰囲気。
矢晴みたいに毎回100ページのネームを描いて、あまりわかってない編集にざくざく切り刻まれて、やっとこ掲載用の20ページを描いてるわけじゃないんだよ、純は。と矢晴に言い聞かせたくなる。
大衆受けを狙って描ける純と違って、自分の感性でしか描けない矢晴に大衆受けするものを描かせようとしたって出てくるものが違いすぎて、大衆向けに寄せるためには矢晴の感性の部分を削っていくっていう編集のやり方は合ってるけども、それ以前に、矢晴の感性を大事にした漫画を描かせてあげてよおぉおお、って思う。
『そんなことひとつもできない』
やる必要もないんだよ。健康な状態だったらやれることもあるけども。純は下描き兼ネームに5時間、矢晴は下描き兼ネームに1〜2日、とかで十分なんだから。
他人の漫画の手法を再現できるってのも、実際のところ、誰でも、無意識でできてしまっているところもあるし意識的に取り入れたりもしてることだから、気にすることじゃない。
純は矢晴の漫画で表現されてる矢晴の感性に惚れ込んでるだけだから、なんでも分析できちゃう・できちゃってる気になってる純に分析できないと言わしめるほどの自分の感性を、矢晴には誇ってほしいと思う。
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