望海可純への感情

 古印葵こと福田矢晴が、漫画家である望海可純に対してどのような感情を持っていたのかは、いまいちはっきりとしない。

望海可純のデビュー時。『その年はA誌に載った望海可純のデビュー作を読んだ』『漫画うま……! しかも2個下…』『すご……末恐ろしいな……』と言っている。矢晴自身は、2冊めのコミックスで賞を受けたところ。

望海可純の連載開始時。『A誌では望海可純が連載を開始した』『こないだ読切載せてからそんなに経ってないのに』『さらにめちゃくちゃ漫画うまくなってる…』と考えているが、この時点ですでに矢晴はB誌との打合せを開始している。連載が順調な望海可純と企画が通らない自身とを比べているが、望海可純の連載開始をきっかけにA誌から去ったわけではない。

受賞をきっかけに他誌からの誘いがあり、幅を広げるために移る、というのは普通にありそうな話だが、本心では「才能のある望海可純と同じ雑誌に載り、差を見せつけられるのが嫌だ」と思っていて、他誌からの誘いに乗った、という可能性はある。とはいえ、そこまではっきりとは言っていないので、わからない。

その後。『A誌も積んでばかりで読まなくなったから買わなくなった』『望海可純の連載は3話目から読んだ記憶がない』

漫画を描くことをやめる直前。『そのころ望海可純の連載は10巻を超えていた』『そのころ私は10回目の〇〇をしていた』

と、自身と望海可純のこととを並べて語るが、構成上、「売れっ子漫画家=望海可純=上薗純」と「うつ病漫画家=古印葵=福田矢晴」の物語だから、という程度であって、矢晴が純のデビュー作によって、漫画の才能に嫉妬しただの、劣等感を抱いただのということは明言されていない。「漫画がうまい」とは言っているので、望海可純の漫画の才能を認めていることだけはわかる。


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