6話の純の過去話
【第6話 上薗純、曰く その(2)】に挿入されている、純の過去(高校時代?)のエピソードが、いまいち好きになれない。
純の内面を知る上では必要な挿話だったのかもしれないけども、純本人から見ても希薄な関係すぎて、その挿話後、突然第4の壁を突破してくるような問いかけ部分に拒絶反応を感じてしまうような感じで。
『絶望してる時に自分を優先順位の一位にしてくれない人間しか周りにいなかったら どうなるか知ってるか?』『存在を忘れられて 「たかが」金もなくてどこへも行けなくて選択肢もろくになくて「たかが」がないだけでどんなに惨い身体になるのか知ってるか?』と言われても……。言っている純本人が、なにも知らないくせに、という気分になってしまう。
この第5話、第6話自体が、「純の話したことをもとにして純の視点で物語を構築しているけども、第4の壁を突破してくる問いかけだけは、物語の描き手である矢晴の言葉である」ならば、ぎりぎり許容できるかなーという気にもなる。矢晴の言葉であるならば、「知っている」わけだから。
もしも、自殺してしまったのだろう同級生が、実は純の初恋の相手であったなら。
淡い恋心を抱いていたものの、親しい存在になりにいくほどの勇気もなくて。心の内を話してもらえるほどの存在にもなれなくて。自殺を踏みとどませられるほどの存在にもなれなくて。そんな存在になりたかったという後悔が、矢晴への援助、劣悪な環境からの救済の原動力になっている、というようなエピソードであったら、純の行動の動機が明確になった気がする。
以前に、《純の現在の行動が、「高校時代に助けられなかったクラスメートの代替品として古印葵を助けることによって罪滅ぼしをしようとしてる」みたいに見えてしまって。》と書いたけども、このクラスメートが、純の想い人であったなら、話が違ってくる、という話。「過去に助けられなかった好きな人への後悔が、今助けられるかもしれない好きな人への行動の原動力」というのなら、純の矢晴への想いが強化されるエピソードだなと思えるので。
高校時代は無力だったけども、売れっ子漫画家になっている今は、救済に必要な「金」という力も潤沢にあるし、行動力もあるから。
『私はあなたの前では「たかが」を渡さず口だけ出す偽物なんかにならない』と矢晴に膝枕しているシーンが好きだけども、さらに好きになると思う。
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