安心

 純が「安心」と何回言ったかな? とセリフを検索して抽出してみたけれど、そんなに多く言ってなかったな、と思った。

【第6話】『なにを言えば一番安心する?』と考えて差し出した言葉は矢晴を死ぬほど恐怖に怯えさせたけども。

【第7話】『誰かと一緒に暮らすと死体発見も早いし死んだ後も安心じゃないですか』と、嘘ではないだろうけども取り繕って。ここで「死体発見」と言っているのは編集から「数年前に亡くなったって人づてに訃報を聞くことがある」という話を聞かされた故かな、と思う。自分の知らないところですでに死んでいた、が純にとって恐怖というかショックというか、嫌なんだろうな、と思える。

『座敷牢に閉じ込めたり妾(めかけ)にしたりしませんので安心してくださいよ』こっちは純の本当の言葉ではないけども。矢晴にとっては純の言う「安心」は籠絡するための嘘のように聞こえていたのかな? と思える。【第13話】ではここのセリフは『いきなりこんなこと言うの怖いだろうと思いますが』『閉じ込めたりとか怖いこととか危害を加えるとか絶対しません』になっている。矢晴は「閉じ込める」に「座敷牢」を付け加え、「怖いこと・危害を加える」を「妾にする」と書き換えているのが興味深い。

【第9話】『本当に動けないときは大学時代にコミケで使った台車で運びますんで安心してくださ〜い』と、引きずって風呂まで運んだ矢晴に声をかけ。

【第15話】『どうしたら矢晴に安心してもらえるか考えてた』『私は矢晴を安心させたいだけなんだ』『私 本当に純粋に好きな人に安心してもらいたくて』と言うけれど、矢晴を怒らせただけだったり。

純は本当に、矢晴を安心させたいだけだと思うんだけど、矢晴にとっては人が言う「安心」という言葉も、人から提供される「安心できる場所」も信用できないものなんだろうかな、と思う。たぶん、欲望によって監禁とかされちゃうほうが、矢晴にとっては「安心」なのかもしれない。「やっぱりそうだった、善意なんか存在しない」って“安心”できる。

いやはや、それにしても、『あなたの亡骸は私が拾いたいんです』という純の要望と『死ぬまで孤独じゃなくなる約束しませんか?』という矢晴を死ぬほど怯えさせた純の提案が、「約束」として成立していることに驚いた……。もしかして、これが約束として成立していると思い込んでるのは純だけかもしれないな、とか思うけど。

エロカッコイイ純に蟲でぐるぐるしちゃったところに、「孤独じゃなくなる約束」が“慈愛”なんて全方位への善意の言葉にくるまれて飛び出してきたから、矢晴はあんな恐怖を感じた表情で飛び起きちゃったのかなー。初めてそれを聞いた時の死ぬほどの恐怖を思い出してしまった感じ。

怖いね、怖かったよね、矢晴。


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