美しい世界
純に見えている古印葵の「美しい世界」というのはどんな感じなんだろか。
純はなんだか舞い上がっちゃって『私にも〈それ〉ができると』『あなた自身であなたの美しい世界で』『証明してくれるなら』『もう何も怖くない』となにをどう証明するのかすらわからん思考で恍惚としてるけども。
矢晴の世界の住人になりたい、古印葵の世界の住人になりたい、みたいなところはありそう。古印葵の描き出す世界はあんなに美しいのだから、矢晴の見ている世界もあんなに美しいのだろう、とか。矢晴が『――きれいだな忘れたくないなと思ったものをカメラで撮るのが日課で』『漫画も』『忘れたくないと思ったモノや感情を取り込んで形にしてます』と言うのだから、矢晴の見てきた美しい世界が古印葵として描き出された美しい世界なわけで。それが「筆先で見せてくれた忘れたくないもの」なわけで。
矢晴が激昂して言った『性欲を慈愛だとか清潔な言葉で飾りやがって』『きったねえ欲望を蓮華座に乗せてんじゃねーよ糞野郎』なんていうキレッキレの罵倒すら、純にとっては「古印葵の美しい世界」であるのか、「蓮華座」って言葉だけは辛うじて耳に届いていたものの、罵倒されていることにすら気付かない恍惚であったのか。
「逃したくない支配欲」についてはそうなのかどうなのか議論の余地がありまくるけども、矢晴に矢晴の言葉で「純は性欲でもって大好きな矢晴を家に住まわせて甘やかしている」と言われて、それは「矢晴の見ている世界」なのだから「矢晴の美しい世界」の中のことで。
純自身がどうであっても、矢晴の見ている世界の中の純には「性欲」がある、なら『私』『それがいいな』になるわね。そして、それを矢晴の世界で証明して欲しい……。うん。
しかしながら、どうやって証明したらいいんだ……?
『あなた自身であなたの美しい世界で』……「あなた自身で」……。やだもう、純ったら矢晴にメロメロじゃん……。最初から知ってるけど。
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