同居を迫る純

 純が矢晴に同居を持ちかけて、説得するシーンは矢晴視点の【第4話】と【第7話】、純視点の【第6話】と【第13話・前編】で。

『あなたの亡骸は私が拾いたいんです』『死ぬまで孤独じゃなくなる約束しませんか?』と純が言って、矢晴が死ぬほど怯えたのは、両者の記憶に相違ない感じ。

純としては「愛を伝えて、安心させるための一番の言葉」を差し出したつもりなのに、矢晴には恐怖感しか与えていないのが、純が不憫かわいいけど、ふつうに純が怖い。

翌日昼の純の再訪時は、両者の記憶がかなり異なることになる。

矢晴が【第13話・後編】で『自覚はあるんです』『その時はそこまで思ってないのに時間が経つと』『徐々に感情が蝕まれて記憶が変形していってるって』『嫌なことを何度も反芻しているとどんどん怖い記憶になるんです』と語っているように、矢晴は、純の再訪時から同居4日目までの間に、【第13話・前編】の真摯に説得する純を【第7話】の胡散臭い純へと記憶を変形させてしまっていたということになる。

純に説得されたの、そんなに嫌だったのかしら……? というのは、またそのうち考えるとして。

【第13話・前編】の真摯に説得する純を、矢晴はまともに見ていない。両者同一のシーンは『あなたの目的はなんですか?』『助けるのが目的です』だけになるのかな。矢晴の記憶では、なんだかすぐそばにいたけど、純の記憶ではもうちょい距離がある。とはいえ、矢晴が掛け布団かぶって窓際に逃げてて、純は矢晴の布団に乗ってるという構図は同じ。

矢晴の記憶と純の記憶との差異は【第13話・前編】で比較されてるけども。説得の話の流れとか、【第7話】と【第13話・前編】を引き較べてもいまいち正解が見えてこない。見えてこなくても問題はないんだけど。

純が差し入れ持ってきて、矢晴は純が来たから扉側にしてた頭を窓側にするように布団のなかで向きを変えた。『進行方向変わった』。【第13話】では部屋の様子が変わってなくて食事をした形跡もないことに純が愕然としてて、矢晴の状態に思いを馳せて劣悪な環境から連れ出さなければ、と駆り立てられてる。

純から『ここ風呂もないんでしょ? うちに引っ越しましょうよ』って言われて『金ない全部無理』と言いながら、矢晴は掛け布団をまとって丸くなって防御姿勢。

純が部屋の話とかして『勝手に話すすめないで…』と布団かぶって座る矢晴。布団に乗り上げてくる純。

『その居場所を純さんは奪おうとしてるの分かってますか?』に対しての純が【第7話】では『難しいことはあとで考えればいいじゃないですかぁ(にゃは)』【第13話】では『今は休める場所に行くのを優先してください細かいことは元気になった時確認すればいいです』

【第13話】『とにかく今すぐ回復できるような場所で療養しないといけません』

から、【第7話】【第13話】共通の『あなたの目的はなんですか?』『助けるのが目的です』

の後、【第13話】純の記憶では、矢晴はその場で倒れ込んでる感じで純は背中をさすりながら、説得してる。【第7話】矢晴の記憶では座ったままB誌でのトラウマ的な記憶に囚われて、『やっとこっち見てくれた』という純の笑顔から、純に抱きしめられて『作りましょ作りましょ』って純がはしゃいでて。

このまま、矢晴が同居に同意したのかなー? と思いきや、【第8話】では『新しい我が家はどうですか?』『住む気ないですってば…』というやりとりがあるから、純は矢晴のアパートでがんばって説得してたけど同意は得られてなくて。矢晴ったらすげー頑固ちゃん。

矢晴の記憶は相当歪んじゃってるんだなあとは思うんだけども。純はそこまで軽薄で胡散臭い感じの子ではないし。かといって、純の記憶がその場で起こった事実通りか……というと、それなりに美化しちゃってるような気もするなあ。


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