心を開く
現在の矢晴は、「心を開く」まで行ってない気がするし、「心を開こう」ともしてない気はする。むしろ、純への感情をしまい込もうとしてて、「心を閉ざす」方向に行ってる気はする。
とはいえ、純は、わりと順当に矢晴の心を開いて行ってる気はする。
矢晴に与えた第一印象は『優しい顔…』だし。その後の四階への対応で恐ろしさを植え付けてはいるけども。
居酒屋では『上薗純は馴れ馴れしい身体接触こそあれ』『身の上話とかつっこんでこなくてすごく気が楽だった』『後半は全然覚えてないので確信は持てないが』と、「すごく気が楽」と思っているあたり、かなり心を開いている雰囲気。酒飲んでるせいもあるかと思うけど。
純はニコニコ話聞いてくれるしで、矢晴もいろいろ饒舌に話してた。
でも居酒屋では矢晴が酒飲みすぎてて記憶が定かではない状態だから、何話したかも覚えてないし、その時の純のこともほとんど覚えてないんだろうなあ、と思うと、けっこう残念な気分にはなる。
矢晴が純の誘いに乗って同居することを決めたのは純のどこらへんの言葉が矢晴の心を動かしたんだろう……? というのは描かれてないなあ、と思うのだけども。言葉というよりも、純の家でゼロクッションで西日で眠った心地よさが決め手みたいには描かれてる。よっぽど気持ちよかったんね、矢晴。『ここで死ぬならいいかもな』って思って引っ越してきたけども、純の働きかけと療養によって、「死」は遠のいた気がする。
ゴミ屋敷掃除されたりしたあたりからもう取り繕う必要もないから、純の家に引っ越した矢晴はけっこうやりたい放題で素を見せてるとは思うのだけども、心を開いているか、というとやっぱり頑なよねえ、とは思う。
純も矢晴が心を開いているわけじゃないってのわかってて『体の外側のことはいくらでも見せてよ』『内側はいくらでも隠せるんだし』と言ってる気がするなあと思うし、心を開けと無理やり踏み込んで蹂躙するみたいなことは、純はしなさそうで、ほんと、純はいい子だなあと思うわけで。
純自身に矢晴が心を寄せ始めたのは『あなたの亡骸は私が拾いたいんです』『死ぬまで孤独じゃなくなる約束しませんか?』に込められた純の真心が矢晴の心に響いていたからだろうか……? むっちゃ怖がってたけど。その後、ずっと考え続けちゃってたわけだし。
同居してからのあれこれで、ふれあい多くなって、純に衣食住すべて依存しないと生きていけないけど矢晴が寄生してるわけじゃなくて純が矢晴を生かすために勝手にしてることだから気にする必要もないはずだけど。矢晴の世界には純しかいないから純に心寄せるのは当然かなあと思うけども、ただ単に同じ家に住んで世話してくるから身近にいる人間に情がわく、ってだけなのか、どうかというと、そこらへん逸脱してきてる感情だから矢晴は逃げ出したわけで。とかとか。ぐるぐる考えながら。
矢晴が「心を開く」には純への恋愛感情を自覚して打ち明けて、からになるのかなあ? と思ったりもするけども。純に拒絶されたくないだろうから、打ち明けるってできるのか……? と激しく疑問。
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