換骨奪胎

 純が「シヴァ・アンバー3巻」で矢晴の作品を取り入れて、自作として昇華していたのは、「古印葵への返歌」であり「換骨奪胎」ということでいいんかな? と思いながら、この文字列に含まれる、「骨」「胎」が作中に描かれていたなあと思い出す。

記事タイトルと関係ない話になる。

【第14話】では、矢晴が生まれ直した、生き直すことを暗示してるのかなー? と思うのだけど、純が『人間ってみんなもともと子供だろ?』『子供の性質は人間の持って生まれた性質だよ』と語るシーンで「胎児」が描かれる。

この作品のなかで初めて、「骨」が出てきたのは、【第5話】で、純が古印葵の漫画を初めて読んで『今まで触れられたことのない場所を触られたような』と考えているシーン。複数の手に触られている「骨」が表現される。

純も空っぽの子だったんだよねえ〜と、思い返したりしてるのだけど、ふと、もしかして、これまで矢晴のことだと思ってた【第7話】からの「骨」って、実は純だったりした……? とか思ったりしたけども、【第7話】のは、明らかに矢晴だった。

【第7話】では矢晴が『この病気にとって蠱惑的すぎる』と背骨に蟲が取り憑いた感じで。『あいつはそれを分かってて言ってる』とまだ生まれてない蟲がアップになる。「蟲」=「あいつ」……? ってことは、やっぱり純……? 純の釣り針にかかりに飛び出したから、矢晴の気持ちだと思うんだけども……どっちだ? と混乱し始め。でも「骨」は矢晴かな。血肉もなく、「死者」を表現してる感じがする。

【第8話】では引っ越してきた矢晴を後ろから見たような「骨」と少し大きくなった「蟲」。その前に『ここで死ぬならいいかもな』と骨壷が描かれてて。ゴミ屋敷でひとり溶けて腐るような死に方よりも純の家で暖かく死ぬ方が断然いいよね、でも死なないでーとか思ってたけど、ここの骨壷にもなにかしらの意味が……わからんけど……と思い始めたところ。

【第9話】では、間接照明にした矢晴の部屋で純が『心の…誰も触ってくれないところを』『触ってくれるから』と複数の手に触られている「骨」が表現されてて、「蟲」は単体で背をなぞられてのけぞっている。セクシー。

【第10話】では、これまでの「骨」とは趣が違うので入れていいのかどうかと悩むけども、『死にたい』という矢晴の思いと縄、その次のコマで、王冠や豪華なマント、財宝をまとう白骨死体。これは単純に「死」の象徴かな。と思うと、【第10話】には「骨」も「蟲」も出てないことに。

【第11話】は、ラストページ。笑顔の矢晴の次のコマで、さめざめと泣くようなポーズの「骨」に「蟲」が飛び込んで爆ぜているというか、満たしているというか。今見ると、ここで「蟲が骨を満たして、心臓ができた」ようには思えるので、当初感じてた不穏さはかなり薄れる。

【第12話】では、矢晴の体内いっぱいになるほど大きくなった「蟲」がいて、矢晴を内側からかきむしる。「蟲」が純への気持ちなのなら、膨れ上がって矢晴の体内だけに収まりきれなくなったということで。そういうことで? 朧気な気持ちが形を持とうとし始めた、蟲が蛹になったかと思いきや、だけども。ここの蟲は矢晴の妄想っぽい感じもあり……?

【第14話】では、よだれを垂らして貪欲そうな、矢晴の身体よりも大きくなったような「蟲」が骨でなく矢晴の身体から飛び出してきているような。これは矢晴の妄想の図かなとも思えるけれど。そしてラストページ、心臓を喰むような「蟲」。心臓をリアルサイズで考えるとしたら、蟲のサイズもそこまで大きくないな(蟲にしてはむっちゃでかいけど)。

矢晴の空っぽの「骨」を「蟲」が満たして、「心臓」が出来て、これから胎児から生まれ直して生き直す、という感じになるのかなあ、と思う。純の加護のもとに。


【第13話】でいろいろなことがわからなくて、わからないことが不安だからと先行きの不安と不穏しか感じてなかったけど、【第14話】のラストページには、これからの純と矢晴のすれ違ったりぶつかったりしながらも幸せなイチャラブ生活への期待しかなくてワクワクしてしまっている。


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