読み直し(第9話)
一番好きなシーンのある【第9話】。
【第13話】の純視点と比較すると、【第9話】のあのうっとりする純の古印葵への思いを語るシーンがあまりにも軽かったことに毎度がっくりと倒れ込み膝をつく思いになるのだけども。でも【第9話】を読むたび、あのシーンはうっとりする。純がかわいい。とても好き。
【第13話】同居1日目(引越し当日)の食事シーンで『酒ならいくらでも飲めるんですけど…』『絶対だめです』の会話を読んだ後だと、【第9話】で『中身の管理をするってことは酒が入れられてないかチェックするってことか…』と矢晴が考えているシーンに納得がいく。
純の家の食事事情を純が説明してくれるけども、ほんとにこの「食事を考える・作る」をアウトソーシングしながらも縛られず自由度が高い食生活は良い。冷蔵おかずは10種類30個というのは、およそ3食10日分に相当するのだろうけども、常備菜に近いような気がするので、届いてから半月ぐらいで好みで消費する感じだろうか。月に数回の家事代行による作り置きの冷凍も、冷凍ゆえに急いで消費せねばならないということもなく、その日の気分で選べて良い。そんな食生活のわりに【第8話】で買い出しに行ってネギを買ってきていたのは、その日の夕食に腕をふるうためだったろうか。矢晴のために。かわいいな、純。
純一人分の食事だったのが、矢晴が来たことで消費が早くなって、純がふたり暮らしを実感しているところとか見たくなる。序盤、矢晴が小食だからとゆるやかな消費が、だんだんと消費スピードが上がっていって、矢晴に肉がついていって、というのに感動してる純が見たい。
それにしても、「矢晴が動けないこと」を想定して部屋に冷蔵庫(ゼリー飲料、水、スポドリ)を用意してくれる純の気配りは、【第13話】での純視点【第7話】の回想部分を読んでからだと、ただの気配りではないのだな、と。動けず食事が摂れずでもゼリー飲料で最低限の栄養が摂れるようにと。ただ、できればゼリー飲料でもスポドリでも、冷蔵庫に入れない常温のものも用意してあげてほしい気がする。
そんな純の気配りに矢晴ときたら『中身の管理をするってことは』と……。もう! もう!
そしてお風呂が沸いて。
『ズルルルル』と運ばれていく矢晴がかわいいし、運んでいく純がかわいい。すごいナチュラルに脱がそうとする純もいい。脱がされかかってるガリガリの矢晴の骨の浮き具合とほんのりトーンの乳首に注視してしまうけども。サービスシーンだね。
矢晴がけっこうしっかりお風呂入ってるのがいいなーと思ってて。用意されてたお揃いパジャマも良い。矢晴が上がる頃合いで歯磨きしてる純もいい。用意周到なのにさり気なさを装う純が好き。
そして矢晴の部屋で。【第13話】では満月がカットインするのだけど。1ヶ月後の矢晴が逃げ出した夜も満月だものね。うんうん。
この部屋でのシーン、矢晴が『落ち着かん…』と考えてるあたりが、純から見ると『まだ緊張してる感じだなぁ』と思うあたりで? 純が間接照明に切り替えたあたりで『夜は悪いこと考えやすいらしいしいっぱい褒めよっと!』という思考から『矢晴さんの漫画…』『心の…誰も触ってくれないところを』『触ってくれるから』『他じゃ替えが利かないんです』『こういう幸せを私にくれたのはあなただけ』と古印葵の漫画について褒めてて、『繰り返し読めば読むほど夢みたいに気持ちいい』と語るところで矢晴が自発的に肩を寄せたように純に思われてて『あらかわいい』と。『あなたの世界が好き』『けど描けとは言いません』『幸せになってほしい』と「寄りかかってきたから肩を抱いたら逃げられた」という形に純は思ってるけど、矢晴のほうでは、「肩を抱かれた上にボタンの掛け違いを直すふりして脱がされそうになった、から逃げた」という見解の相違が、合わせて読むと面白い。
純にとっては、表面的・技術的なあたりは編集部で褒めてるから、次は自身の内面に関わるあたりで褒めておこう、くらいの軽さだったのかもなあ、と想像するけど、やっぱり『こういう幸せを私にくれたのはあなただけ』とかどれだけ古印葵に狂っているのか……という感じはする。この言葉を聞いてると、純は絶対に矢晴を大事にしてくれるし捨てないなと思う。でも、言われてる矢晴は「古印葵に狂いすぎてるファンの上薗純」は「熱狂的ファンから転じたストーカー」レベルで怖いと思うの。純はそういう怖さを与えていると自覚してほしい。
その後、部屋を出ようとしている純に声をかけて質問してる矢晴は、なぜ自分からドツボに嵌りに行くのか……という感じがしてしまうけど、それが矢晴だからなあ……。
『脳も身体もクタクタだったのに今日あったどんなことよりも』と考えて想起してるシーンが全部「BL的サービスショット」なあたり、矢晴が純をどういう目で見ているのかがわかるような……わからないような……。貞操の危機というか身の危険を感じていることよりも純の『それが漫画でしょ?』が一番怖いというのが、矢晴が自分自身の漫画を見失っていて、だからここまで落ちぶれたと考えてしまっている思考の一端が見えているように思う。でも、純もたいがい規格外だからなあ……比べるようなものでなし……。矢晴が見失ってる自分自身の漫画が早く見つかるといいのにね。
と、考えたところで【第12話】の純の『けどさ本当に探してるものの代替品がアルコールなんでしょ?』という言葉を思い出す。けど『それって普通だよみんなそうだもの』という一言二言が余計なんじゃ! プンスカってなる。
コメント