回復

 純の家に来てからの矢晴は、純の献身的な世話、療養計画によって、ずいぶんと身体は回復したのかな? と思える。

まともに食事してなかったようなガリガリの身体は、まだまだ肉はつかないけども、小食とはいえちゃんと三食用意されて食べてるようで、頬の痩けたところはなくなって、多少なり血色もよくなったんだろうし。

ゴミ屋敷でカビだらけの布団に寝ていた状態から、清潔でふかふかのあたたかいベッドで寝ることができて、たった一晩でかなりの疲れがとれてはしゃげるほどに劇的に効いて。

身体の疲れが余計に妄想をひどくしていたとは思うから、純の家に来てからの妄想はなくなることはないけども、以前と比べて軽いのかもしれないし。ただ、それまではアルコールに溺れることで妄想に苛まれる状況を回避していたのが、純の家に来てから断酒しているおかげで、ダイレクトに苛まれるようにはなってしまったなと思うので、「体調はよくなるけども、精神状態は悪化した」といえるかもしれない。

純の療養計画によって規則正しい生活を送り、純とのふれあいによってホルモン分泌が促され、矢晴自身、生まれ変わるレベルで健康に近くはなってきているなあと思うのだけども。

そしてまた、同居を迫られた際にあれほど怯えた純に対して、依存なり恋なりなんでもいいけども、心を動かされるほどに安心して信頼を寄せられるようになったかなーという具合もかなり、精神的に良い兆候なのかもなあと思う。

純が「祈り」として口にした『世界は変わらないけど』『世界が綺麗に見える時間はこれから増えていくよ』というのは、確かに矢晴の身に、心に「世界が綺麗に見える時」が訪れるのだろうと思う。

けども。なんだか私にはその言葉に良い雰囲気・明るい未来を感じられないのは、「純が矢晴を“これから一人で大丈夫”と突き放したように思えてしまう」からなのだなあと、考えていた。

ここまで懐かせておいて、放逐するなんてそりゃないぜ……みたいな気分。

あと、矢晴が精神やっちゃう前は、世界は綺麗に見えていたはずだから、「これから増える」よりも「取り戻せる」になるのかなーとも思う。できれば「一緒に綺麗な世界を感じよう」とか、「矢晴に見えた綺麗な世界を一緒に見たい」とか、なんか、こう……。まあ、違うか。

ただこれは、私が勝手にそう思ってしまうだけだから、純はこれからも矢晴の世話をして、一緒に暮らして生活して、ともに人生を歩んでくれるだろうと思ってるし、そういう物語のはずだから、矢晴と純が幸せになってくれるその日を楽しみにしてる。


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