矢晴の話の

 矢晴の話は長いし、長く話すことで「吐き出せている」らしいんだけども、心の中、思っていることは、全然話してないんだよなあーと。

この時点(同居1ヶ月)までで、矢晴が長く話したのは

同居4日目:記憶の変形について/自身の病症について

同居5日目:絵や文など理解の方法について

同居6日目:弱者の救済について

同居21日目:相互理解について

同居2〓日目:病気について

と、

同居前、初対面の日、居酒屋:映画の話/ペンネームの話

というところで。解説、知識や理論系統の話ばかりかな。矢晴が純が憧れるほど博識なのはわかる。本の受け売りじゃなく、自身のものにしているのもわかる。それを他人にわかりやすく言葉にできるのもわかる。

けれども、自身の内面についての話「忘れたくないと思ったモノや感情」に絡む話はシラフでは一切してない気がするわけで。

純に『全部お前にやる』とか言う割に、古印葵を形作るものを一切出してないという、この矛盾……みたいに思った。

実際のところ、自分の記憶が正しいかどうかもあやふやで、感情も表現しにくいと思う。変に話して記憶が固定化するのもきついしなぁ。

知識や理論、言葉を駆使して、持論を展開するのも「古印葵を構成する一部」ではあるけど、「福田矢晴/古印葵の本質」じゃないしなー。でも、純は、古印葵の本質を「暴きたい」とは思ってなさそうで、「瓶の中身が出てくるのを待ってる」と思う。


【第2話】【第13話 後編】の『体の外側のことはいくらでも見せてよ』『内側はいくらでも隠せるんだし』と矢晴に言っているのは、そういうことも含めてなのかなー? とぼんやり考えていたりする。

この時点での「矢晴の内側」……純はわかってるのか? わかってなさそーに思うんだけどなあ……。純視点で【第12話】の矢晴が逃げ出した裏側の純が見たかった……そしたら、わかってるかわかってないかわかるのに。


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