古印葵を紡げない

 【第13話・後編】のなかで、一番好きな言葉かな。

『私じゃ古印葵を紡げないことは私が一番知ってる』

純の真剣な、怒りをもたたえた表情も好き。

矢晴の『全部お前にやる』って言葉は、純が「分析できたものは手法を再現できる」から、自分が吐き出したものを純が漫画にするだろう、みたいなところからの自棄みたいな感じかなー。純は「古印葵が粗雑に扱われること」に人一倍敏感だから、「いくら古印葵本人でも、私の好きな古印葵を雑に扱うのは許さない」みたいな感じかな、どうも言葉にするのは難しいから、ちょっと違う感じだけども。

純は矢晴が「漫画を描きたくない」っていう気持ちは尊重してる感じがあるんだけど。このシーンの矢晴は、純が矢晴の話をうっとり聞いてるところに対して、えらいことしょっぱい反応で、『漫画を描かなくて済む』『形にならないものに命はかけられない』『だからもう漫画家にはならない』『全部お前にやる』という言い方も表情も、どうにも「古印葵という漫画家」も「上薗純という人」も侮辱してるみたいな雰囲気が出てて。

そりゃー、純は怒るよな……という気分になる。

『全部お前にやる』って言われたところで、純には『古印葵を紡げない』。

この、「紡げない」って言葉のチョイスがむっちゃ好き。純が古印葵の漫画をどう思ってるのか、どれだけ大事なのか。そして、純がどれだけ努力しても、古印葵にはなれないんだという悔しさとかあるかな。

ここの純の顔と、矢晴の顔と、矢晴のところで切れてる縄は、紡がれた古印葵を矢晴が断ち切ってしまっている、みたいなことなのかな? どうなのかな?

これまでのエピソードでは、縄は自殺の象徴みたいな感じで出てたけど、これがその縄なのかどうか……。わかんない。でも、このシーンで自殺の象徴みたいな縄が矢晴のところで切れてるなら、矢晴が自殺を選ばなくなったみたいなことにはなるけど、純視点で矢晴の内心がそんなふうに描写されるか……? と思うと、そんなことはなさそうだから、違うだろうなあとは思うけども。

それにしても、こんな風に純が矢晴に声を荒らげたのは、初めてではないだろうか。初めてだな……。真剣な表情で詰め寄ったことはあれども。矢晴もすごく驚いてるし。

矢晴の「固い瓶のフタ」はいつ、どんなふうに開くんだろうなあ。


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