紡ぐ
「紡ぐ」という語にはふたつの意味があり、「綿や繭から繊維を撚り糸にする」のと「言葉をつないで文章をつくる。物語などをつくる」と。
純が矢晴に言った『私じゃ古印葵を紡げないのは私が一番知ってる』の「紡ぐ」は「古印葵の描き出す漫画(物語)をつくること」であろうかなと思う。
いかに純が分析力、再現力に優れていても、自身の心を震わせる「古印葵」の漫画はその手で生み出すことはできないわけで。そもそも、「古印葵の漫画だけは分析しきれない」ということなので、純の手に余る。
懇切丁寧に矢晴のすべてを伝授することができたなら、「古印葵風の漫画」を描けるようにはなるかもしれない。それは望海可純が理想としていて描きたい漫画にはなるだろうなと思う。とはいえ、「古印葵を紡いだ」ことにはならない。
古印葵は、福田矢晴しか紡げない。純は「福田矢晴の紡いだ古印葵の漫画が好き」。
さて、ここで「紡ぐ」の1つめの意味に着目してみる。
「繭から糸にする」。矢晴が自身の変容に関して【第12話】で『その幼虫がなにかになろうとしている』『この家が お前が』『大きな繭だ』と考えている。
この矢晴を守り育み再生を促す「繭」から糸を紡ぐことがあるのだろうか? とかも考えてみるけども、繭から糸を紡ぐためには成虫になる前に煮込むことになるので、変容途中の矢晴の息の根を止めることになり……。むむむ。
繭をつくる蝶もいるけども、やはり糸を取るための繭は蚕で、これは蛾で。
矢晴の蟲はいったいなにになるのだろうか。
繭も蟲も状況や心情の比喩なので、生物学的にどうこうとか考えるのはおかしいのではあるが。
「繭」「紡ぐ」というキーワードは押さえておきたく。また紡いだ糸が縄になるのか布になるのかも気になるところ。
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