【感想】第13話 上薗純、曰く その(3)前編
【第12話】から2ヶ月近く経過して、待ち焦がれていた更新。【第13話】、しかも【上薗純、曰く】で嬉しい。
今までの【上薗純、曰く】では純のシリアスな顔が表紙を飾っていたけれど、今回の【第13話】では、1コマ漫画の純の奇行。いつもこんなことやってるのか、かわいいな、純。タイトル文字は、歪んでもなく、ひび割れてもなく。
純視点の話になるので、【第12話】の続きではなく、【第6話】の続き。矢晴視点の【第7話】同居開始の【第9話】【第10話】の途中まで。(でも、過去回想してる起点は【第12話】あたりの純)
無声の回想。純が見てきた矢晴の姿。編集部、居酒屋、膝枕で眠る矢晴、布団をかぶって怯えている矢晴、クッションで眠る矢晴、引っ越してきた矢晴。
次のページからは、居酒屋で酔っ払って、ペンネームの由来を話す矢晴と、同居3週間が過ぎた頃に病気の話をする矢晴の姿が映り、純のモノローグが重なる。『古印葵 福田矢晴は』『思っていたより饒舌だ』『思慮深いが故に』『言葉に憑りつかれて言葉に苦しんで言葉を厭う人なのだろう』という、言葉選びが、とても素敵で好き。
純の回想の中での矢晴は、したたかに酔っ払って、自身のペンネームの由来について話し、『ダサくなりたくないからもう二度と漫画描きたくないんですよぅ』とこぼす。ここの矢晴はかなりチクチク言葉を使っていて、この矢晴の話しぶりから純は『チクチク言葉は使わない方がいいって実感して反省した』のかな? 矢晴を追い詰めちゃうから反省したのかな? どっちだろ。
回想終わって、同居1日目。引越し当日。矢晴が食事を残して夜に食べてもいいか聞いてるから昼ごはんっぽいかな。矢晴は小食。酒ならいくらでもという矢晴に『絶対だめです』と純が言うから【第9話】で家の説明を聞いてる矢晴が『酒が入れられてないかチェックするってことか』と思っていたシーンにちょっと納得がいく。ここで純にダメって言われてるからね〜。
ご飯食べるのにポン酢とかドレッシングがあれば味変で〜と出してもらったポン酢をご飯になみなみと注ぐ矢晴に『ヒッ』と怯える純がかわいい。矢晴よりもリアルチックな描写なのもおもしろいんだけども。衝撃受けて震えてる純とかめったに見れるもんじゃないレアって感じがする。
同居1日目の夜は、私が一番好きな恍惚とする純のシーンがあるのだけど、純視点ではかなりはしょられ、かなり軽くて、ちょっとさみしい。
同居2日目。次の通院予定を聞く純。矢晴が通院をやめてしまっていて、薬をネットで買っているという現状にショックを受けている感じ。純のこういうショック受けてる顔を見ると、恵まれた環境で育ってきて、今は売れっ子になってさらに恵まれてて、温室育ちみたいな子なのかなーって気分になる。どん底味わってきた矢晴が心開けなさそうって思えちゃうんだよなあ。
同居3日目。夜更ししないはずの純が夜更しして勉強してる感じ。本積み上げてノートにびっしりまとめて、ネットで調べて。すごい努力家だし、さすがの分析力だし、と、久しぶりに頭のいい感じの純が見れて嬉しいという明後日な感想を持ってしまう。もうほんと、矢晴のためにいろいろ勉強して考えて実践してくれてたんだなあと、【第4話】で『いくらでも世話します』って言ってたのをちゃんと実行してくれる純が頼もしい。
同居4日目。矢晴がマウスウォッシュを飲んだ日。『矢晴さんの中では私はどんな顔をしてるんですか?』という純の問いに『にゃはって言って私を嘲笑ってる』『ずーっと見下した目をして私で遊んでる』と矢晴が答えて、【第7話】にあたるエピソードの純の回想、そして矢晴視点との比較に。いやはや、ほんと、ここの描き方がすごいのなんの。矢晴視点では、軽薄で胡散臭くて、騙して丸め込もうとしてるような感じだった純が、純視点ではすごい真剣に真摯に説得してるというこの対比が。
なんで純がこんな胡散臭いんだ? と思っていたら、矢晴がそう見てそう聞いていただけで事実は違ったという構成がうますぎて、ますますこの作品が好きになった。
矢晴が妄想に囚われてるシーンでは、蜘蛛が登場して暗に示しているから、鋭い人はそれでわかったらしい。私は純が変だとは思っていたけど、そこまで気付けなかった。
純の回想では矢晴の部屋を再訪し、食事すらとっていない現状に、『この人の惨状を分かっているのはこの世で私だけ?』『私がここから去ったら――干渉しなくなったら――』『この事実が存在しないことになる?』とすごいショックを受けてて、もうほんと純ったら、大変だわ。
こんだけ真摯に矢晴を助け出そうとしてるのに、当の矢晴にはあんなふうに思われてるしと。
回想から戻って。『私はあなたを嘲笑ったりしない』『あなたの背中に目はついてない』の悲痛な表情の純がかっこいい、切ない。
『私の顔を見て確かめてください』『あなたが背中で見ている不安は存在しないことを』という純の訴えに矢晴が起き上がって振り向いて――瞳のアップで、後編に続く……気になるー矢晴がなにを見たのか気になるー!
- 純視点。過去回想と矢晴の分析
- 矢晴が語る古印葵のペンネームの由来
- 同居1日目。食事と酢酸。夜。
- 同居2日目。矢晴の通院予定と薬
- 同居3日目。夜。矢晴の病院の予約をとった、3週間後。矢晴の療養のための勉強、分析、計画。
- 同居4日目。矢晴に純がどのように見えているか聞く。
- 過去回想、矢晴のアパート再訪時。矢晴の生活の惨状に衝撃を受けて、助け出すために、矢晴を説得する。
- 過去回想、矢晴視点(第7話)と純視点の対比
- 『私の顔を見て確かめてください』『あなたが背中で見ている不安は存在しないことを』
久しぶりに頭のいい純が見れて嬉しい。純の言葉のセンスが良すぎてうっとりする。
やっぱり純がいい子でよかった。けど、あまりにも善人過ぎて大丈夫なのか不安になってきた。
たぶん、後編【第14話】で同居1ヶ月目くらいまで描かれるのかなあ? 【第11話】の部分で蜘蛛のところあるから、そこの純視点も気になる。
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