読み直し(第7話)

 【第7話】の読み直しは【第13話】と並べて。

順番は前後してしまうけども、【第7話】後半から。

【第13話】の純視点からでは、純の言葉は丁寧で、そして真摯に真剣に、矢晴を気遣い、助け出そうとしていて。

【第7話】の矢晴視点では、純の口調は軽薄で胡散臭く、詐欺師のように甘い言葉で籠絡しようとしているようで。

とはいえ、どちらも「矢晴をこの惨状から連れ出して、助けることを目的としている」。話している内容を要約すると、どちらもほぼ同じことを言っている。

「助けるよ」というメッセージだけは、矢晴の心に届いていたことにはなるから、釣り上げられたんね。藁をもつかむみたいな気分だったろうか。

【第7話】単体で読んでも、問題なくストーリーは進むのだけど、純への不信感、同居後の不穏が煽られる。それは矢晴が上薗純に対して抱いている印象と恐怖心がもたらす妄想なのだと【第13話】で明かされる。

【第5・6話】の純視点を読んでから【第7話】を読むと、直前に抱いた純への印象と異なる、あまりに軽薄で古印葵である福田矢晴を軽んじているような口調に違和感を抱いてしまい、「なんで? どうして? こんな子だった?」と混乱するわけだけども、そうして印象を撹乱することも、物語の演出だったのだなあと思うと、漫画のうまさにうなってしまう。

単話で感想を書こうと思っているのに、このシーンはここらへんも参照したい、あの話も……と次から次へと開いて、ついうっかり読み耽ってしまうなぁ。

改めて。

第4話、第6話からの続き。

純が真面目な顔してじっと見つめる先の、矢晴のものすごい恐怖に引きつった顔と防御反応が、純の威圧感をまざまざと感じさせる。だから、怖いんだってば、純。

矢晴に超絶怯えられてる純が内省するところは、ちょっと冷静さを取り戻し、自身の徹夜の異常なテンションすら反省したかなと思える。

ルームシェアの話は、同居を持ちかけた際の圧を和らげるための方便かと思ってはいるのだけど(第12話でも話題にしてるからちょっとわからなくはなってきている)、純が帰る直前の矢晴は、ちょっと警戒心を解いてる気はするから成功してるのかしら? ここの矢晴かわいいんだ。

背中に残る純の体温と感触と純の言葉が『この病気にとって蠱惑的すぎる』と蟲が芽生える。「魅力的」でなく「蠱惑的」であるところが重要なんだろうなあ。蠱毒の蠱に、「判断ができないでまよう、まどう、まどわす」の惑、と字義で考えても、矢晴の心情や精神状態が伝わるし。

ここで、すでに純への恋愛的な気持ちが芽生えてるんだろうか? それとも、やっぱり「呪い」なんだろうか? 考えすぎて余計にわからなくなってきたけど、ふつうにわからない、判断がつかない。ぐるぐるしてしまう。

眠れないまま蜘蛛に巻かれる想像をして、純の再訪。

もはやどこからどこまでが矢晴の妄想であるのかどうか。前日に純が帰った後、矢晴がそのまま布団に潜り込んでいたからドアの鍵かかってなくて、よかったよな、ほんとに、という感想しか出てこなくなっている。

もし、鍵がかかっていて矢晴が対応せずに純がドアノブにお弁当かけて帰ってたら、矢晴が起きれず動けずのまま、絶食3日とかなって死んでたかもしれないし。もし、そんな状態で純が翌々日にまた来て、回収されてないお弁当見つけてドア蹴破って第一発見者とかになってたら、純はどれほど悔やむことかと。

あんなに怯えられた翌日に差し入れ持ってくる純の行動力に大感謝しかない。

矢晴からはあんなに軽薄で胡散臭く見える裏側で、【第13話】で語られる純の心情が、切なすぎて。矢晴が生きてるうちに純が間に合ってよかった!


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