無償の愛
「見返りを求めることなく注ぐ愛情」ということだけども、愛情を注ぐ本人が見返りを求めないでいることはいいのだけども、愛情を注がれる側が「見返りを求めるな、対価を求めるおまえは卑しく浅ましい人間だ」と強要して他者を使役しているということが罷り通っているなあと思う昨今。
純が矢晴の世話をする、矢晴が幸せになれるように尽力するのは、純にとって矢晴への「無償の愛」かもしれない(個人的には、純はすでに十分な幸せを受け取っているがためにそれをわずかばかり矢晴本人へと還元している状態だと思ってはいる)。
矢晴自身は「無償の愛」などというものは信じていないようで、純がなぜ自分を助けるのかを不思議に思っているし、恐怖も感じているように思う。勝手にされたことなのに後から返せと言われるかもしれないし。
【第11話】で『純さんって私を働かせるつもりもないのに住まわせてるんですか?』と言っているあたり、ギブアンドテイクだとか等価交換が必要だと思っていて、一方的に注がれる、受け取るだけに抵抗がありそう。
【第13話】の純視点、終盤の、純が矢晴にどう思われているのか知って、自分の目で確かめて、と訴えるシーンは、とても切なくて好きなんだけど、反面、なんか違わない? という気分にはなってしまう。
矢晴の病気の症状としてある他者への不信や認識の歪みを土台にした妄想による事実(現実)の誤認みたいなものを、まっすぐに向き合ってもらって信頼を得て誤差修正をしようとする、みたいな試みはとても良いことのように思えるのだけども。
あそこまで切ない表情でされると、「純の誠意を受け取らない矢晴がひどい」みたいな雰囲気を感じてしまって、いやーーーーと叫びたくなる。純が情に訴えて強要している感じにも見えてしまったり。そう見えてしまう自分の問題ではあるんだけども。
あまりにも、このシーンは、なんだか純が矢晴に対して自分の感情押し付け過ぎじゃない? 矢晴のことならすべて受け止めるみたいな、どんだけ広大なんだ純の心は! と思ってしまうくらいのこれまでの印象から転換して、わりと狭い“人間”だということを押し出してくるなあ……と思う。やっぱり「慈愛」なんて嘘っぱちじゃん…?
そんな純も好きだけど! 好きだけどもなんだかぐるぐるしちゃうし、そんな“人間”押し付けられたら矢晴がよけいに病みそうな気分になってしまって、さあ大変。
心が苦しくなるからあんまり切ない表情見せないで欲しい、ドキドキする……。でもハァハァしたいから、いろんな表情をたくさん見せて欲しい……。
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