読み直し(第4話)
第3話の続き、編集部を出て散歩。
純から離れたいんだろうなあ、という感じで早足でぐいぐい先に進む矢晴が、この頃はこんなに動けていたのに……という気分になってしまう。
所持金明かして帰ろうとする矢晴だけども、逆につけこむ隙を与えているように思うし、純が年下であることを確認して、酒が飲めるなら、と言っている矢晴は、かなりズルい。【第11話】で『正直で矮小なものでいたい』と言っているけど、端々でズルい感じが出てしまっていて、だから「情けない、死にたい」と落ち込んでしまうんだろうなあと思う。
カフェでのサインや居酒屋までの道中、居酒屋でのことは、矢晴視点では「なにをしゃべったか覚えていない」とモノローグが入るけど、ミント色の鉄柵はちゃんとあって、【第6話】の純視点でのエピソードにつながる。
『編集部を出てからは』『漫画家同士なのに不自然なくらい漫画の話題を一切しなかったのは覚えてる』と矢晴は語るけども【第13話】で居酒屋で「古印葵のペンネームの由来」を話しているから、酒飲んだ後半の出来事ではあるし、覚えていたくない話として記憶から完全に消去したのかな? と思える。ペンネームの話は「漫画の話題」ではないとも思えるけど。
ここまで矢晴がベロンベロンで覚えていないと言っても、純視点で矢晴が居酒屋で話したことがボロボロ出てくると、実は案外、普通に「漫画の話題」をしたのじゃないかと思えてくる。漫画を読まなくなる前の作品の話しかできないけど。もしかしたら、望海可純のデビュー作についての話もしたのか? とドキドキしてくる。
矢晴のアパートの自室を見た純の『掃除するんで』というシーンの純の顔が、かっこいい。男の顔してる。と、初見のときから思っている。矢晴に対しては人当たりのいい笑顔か乙女な顔ばっかり見せてた(四階に対しては冷酷な感じだったし)のが、怒りに燃えた効果とともに、男らしいんだ。好き。
一晩明けての朝。徹夜で掃除してた純。起きて純から水をもらった矢晴の白い靴下か足裏が黒くて、純の黒い靴下は白くなってる。初見時から黒いな、白いなとは思ってはいたけど、【第13話】の『白い靴下が黒くなって黒い靴下が白くなるような床』と言うのを聞いてからだと「黒いな! 白いな!」と改めて。
純はそのシーンの足の形が靴にも見えてたから、純は土足で掃除したのか? そりゃあなにが落ちてるかわからんし、場合によっては酒瓶なり割れたガラスもありそうだからそうだわな、みたいな気分ではいたけど。
純はやっぱりそれなりに常識人で、病気になったら救急車呼べるのか、とか冷静に話してるけど、一緒に暮らそうって話しだしてからの様子が怖い。矢晴が感じてる恐怖というよりも、純の本気が怖い『納得できない』って言ってるシーンが男の本気って感じで威圧感ありすぎる。
押しすぎて拒絶されて『それはやだなあ…』『ファンとして…』が本当に純が言ったことなのか矢晴フィルターかかってるのかは定かではないが、独善的に過ぎるなと思う。
ここからの数ページの矢晴の『古印葵は死んだと思ってください』までの言葉が、矢晴の本心の吐露だろうし、漫画家としてのプライドの裏返しの発露なんだろうなあと思う。辛い、切ない。
『古印葵が死んだとしても』からの純の言葉と行動が、とてもきれいで好きなんだけど、【第6話】でこのシーンの純は『これは慈愛』とか歪にひび割れた思考してるのが、怖い。
『あなたの亡骸は私が拾いたいんです』って言ってる純があまりにも怖すぎるのは、矢晴の恐怖心のあらわれだなと、あらためて思うけども、やっぱりこの台詞、常軌を逸して独善的で純が怖いぞと思う。
ここで超絶怯えられたから、【第13話】で再訪した時に矢晴を説得してる純は、ちょっと路線を変えてきた感じもあるし、ちゃんと寝てきてまともな思考ができるようになってから来た感じはする。対して、矢晴は眠れてないし空腹だし純は怖いし、と噛み合わないことこの上ないけど。
軽めに比較するだけの読み直し感想のつもりだったのに、なんだか日を置いたら、前までの読み直しと比べて重くなりすぎたな……と思う。まあそれはそれで。
コメント
記事の内容ひとつひとつに頷きすぎて首がもげそうです。
常軌を逸して独善的で〜について、そこまでの言葉を口にしたり、行動する純の思いが次回以降より明らかになるのでしょうか…。
中学の経験を繰り返さないように、というのはわかるのですが、そこまで古印葵が好きならもっと前に会う機会作りそうだよなあとも思ったり。
いつ純が矢晴に異常なほどの愛を抱いたのか、あるいは純への愛(依存)を自覚したのは矢晴だけで、純はまだBL的な愛は抱いていないのか?考え出すと止まりません。
乱文大変失礼しました。本編と同じくらいこちらのブログも楽しみにしております!(お返事不要です)