関係の再構築

 矢晴は『……私達は』『お互いに嘘をつきあったままだった』から『壊れる前にお互いにぶちまけて』『殴り合わなきゃいけないって思ったんだ』と、言うけれど。

同居1ヶ月目の夜に、お互いがぶちまけて、歪な関係を正常な関係に再構築しようとした、と考えられるし、朝の様子を見るに、矢晴は純に対して、正直な気持ちを話せるようになっていたから、良い方向に進んだのだろうとは思える。

ただ、私には「お互いの嘘」がよくわからん。

純の嘘、はやっぱり自分自身を騙してた“慈愛”かなあ? とは思う。『少なくとも欲望があったよね』『一緒に生きる人が欲しい』『赤の他人をモノ扱いかペット扱いか』と、矢晴を助けたことが慈善や慈愛ではないと認識したように思う。

純に巻き付く怪物が『この口先だけ薄っぺらが』『本物になってみろよ』と言うのが矢晴の言葉かどうかもわからないけれど、【第6話】の『私はあなたの前では「たかが」を渡さず口だけ出す偽物にはならない』と呼応するような気はする。

なにをもって“本物”とするのかも、よくわからんけど。

ダメ押しみたいに、『お前は漫画みたいなセリフを言ってみたかっただけの中二病で未経験のニセモノ』と浜辺の純が言う。『彼は』に続く言葉はわかんないけど、純を中二病の童貞と揶揄しよるんなら「彼は大人だ」みたいに言っててもおかしくなさげ? みたいには思った。『身体は老人並み! 欲求は子供並み!』とか言ってたのとえらい違いじゃねーのよ、とか思うけど、純が「彼は大人だ」って思えたんだったら、正常な関係に進めるって感じはする。

“正常”ってなんなんだろうな。

あと、純は「人間に欲情しない」という自身の性質を矢晴には言ってない。これをごまかすために嘘をついてる、ということはありそう。あとあと、折々で、「嘘じゃないだろうけど本当のことも言ってない」ということはあったから、そういう、純が人に見せたくないこと、古印葵の前に出せないこと、を指しての「純の嘘」ということになるのかなー。

でも、ここらへん、純はこの夜にぶちまけられたのか……?

それを純が矢晴に言えたから、矢晴から純に触れることができるようになった、可能性はありそうだけど。

矢晴の攻撃性と衝動を考えると、純のそんな性質を矢晴が知ったら、ついうっかりそれを指して「欠陥品」とか言い出して、矢晴が壊れそうなんだが……。純も泣いちゃう。


でもなー、やっぱりなんかこう、「お互い」とか「私達」ってまとめてるところが、ちょっと矢晴が狡いよなー、とか思えてきた。矢晴が純に対して素直になるための儀式ではあったかと思うんだけど、当事者ふたりでないとできない儀式だけど、巻き込まれた純がちょっとかわいそう。


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