価値
純も矢晴もそれぞれの価値基準でなんだかんだとはかっているとは思うんだけども。
矢晴は自分自身を無価値だと思ってるから、純からいろいろされるのを「身分不相応」と思って、苛まれてて。
純にとっては矢晴は古印葵だから『他じゃ替えが利かないんです』ってくらいに、価値がある、ということにはなる。唯一無二、というのは価値の高低ではかれないくらいのものだけども。
でも、矢晴にとっては、「純にとって価値があるのは古印葵」と思ってるから、福田矢晴は無価値のままで、誰からも見捨てられてて、あんなになっちゃって……という感じではあるんだろうかな、とは思う。
とはいえ、矢晴ったらそれなりにちゃんとバイト続けてて、店長も無断欠勤4回まではかばってくれたりしてたけど、矢晴にとっては「クビにされた」から「自分は無価値」を強化するだけの材料にしかならないのかな? という気はする。5回目で、って店長が相当我慢強いのか人がいいのか、って気がするんだけども。ただ、その無断欠勤になっちゃった原因は純が怖がらせたから、なんだけどもさ。
ここのクビが人生5度目というけれど、バイトが5つめなのか、バイト自体はいろいろやってきたけどクビにされたのは5回ということなのかは、はっきりしないな、と思いつつ。A誌での連載打ち切りにしてからの期間で、ここで5回目のクビで無断欠勤5回もしてて、だと、数ヶ月も経たずに無断欠勤数回からのクビを続けてるのかもなあ、と思うと、「ちゃんとバイト続けてて」というのも続いてないんだわ……という気にはなる。予約した病院も行かなくて予約しなくなって、雇ってもらったバイトも無断欠勤数回でクビになって、と矢晴自身が自分を無価値へと追い込んでいるとも言える。
そんな感じで無価値な自分が、純に助けられて贅沢な住まいで快適に過ごしてってのが、身分不相応なんだから、純の側のなにかしらの欲望によるものだと思いたいのが「支配欲と執着は性欲」みたいなところなのか……? とも思う。
結局、矢晴は本気でそう思ってて純にぶつけたのか、純から本当のところを引き出したくてふっかけたのかはわからないけど、純からは「純にとって古印葵が至高」くらいの情報しか得られなかったような気がする。
【第16話】では、矢晴は純に『だって漫画家じゃない私のことは幼児や病人として見てるからな!』と言ってるけども【第17話】で純のなかの浜辺の純も『こいつの貧相な手!!』『身体は老人並み! 欲求は子供並み!』『子供のような老人のような生き物を虐めて』『楽しいわけがあるか!』と言っていて、矢晴が言ったとおりに純は矢晴のことを矢晴として見てない、感じが明示されてるかな、と思ったりする。
【第17話】では、純は、矢晴からの『力強いタックル』とかも全部、猫にたとえて想像してたりして、矢晴自身にちゃんと向き合おうとしてなかった感じはある。パニクっててそうなってるというよりも、最初から矢晴のことはそうやって扱ってたのかも? と思うと、それは確かに『モノ扱いかペット扱いか』ということになるし、『人権』がどうこうよりも「尊厳」では……? という気もしてしまうが、もとより『人間らしく振る舞わなくていいですよ!』と迎えていたりするのも、問題だったか……? とか考えてしまう。
それはそれとして、猫にたとえていたところは猫成分のサービスかしら? とも思ったりする。
この夜を過ぎて、純は矢晴をちゃんと福田矢晴として見るようになったのかな? とは思うんだけど、続きを見ないと判断つかない。
矢晴はこの夜を経て、自分自身への価値評価になにかしら変化があったんだろうか……? と考えてみても、続きを見ないとわからないな、と思う。
ただ、やっぱり矢晴は、自分に価値があるかどうかとか、社会的に価値があるか、みたいな価値基準が変わっていくほうがいいんじゃないかな? とは思う。
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