殴り合い

 果たして、あれは殴り合いだったのかどうか、甚だ疑問ではある。

純が矢晴の地雷をどんどこどんと踏んでいって、矢晴が恐ろしく激昂した、とは思う。関係を再構築するために、お互いぶちまけて殴り合いをしなければならなかった、という矢晴の言葉は後出しジャンケンにも似て。

なんでも、なんて不可能なのに「なんでもする」と言った純。

約束に恐ろしい拒否感があるっぽい矢晴に「死ぬまで孤独じゃなくなる約束」の話を持ち出した純。

その約束の元となる純の父親と友人のエピソードでは、純自身が「約束」に対して「実際に履行されなくても約束をした心のつながりが大事」かのように自分をごまかしているっぽいこと。そしてその約束が“慈愛”だと言った純。

それがおかしいと、わからせるために矢晴が純を言葉で殴りつけていた、という感じはある。

約束自体は、矢晴は「口約束は信用できない」を筆頭に、そもそも「果たされないかもしれない約束」自体を拒絶している感じはある。約束が果たされる日への期待とか、果たされない日への恐怖とか、そんなのをいだき続けたくない感じがあるかなー。ってか、B社での約束破られ続けて期待を裏切られ続けての経験があるからね。

第1ラウンドは、矢晴が純に『もうそれ性欲だろ』とふっかけた感じで、純の予想外の『それがいいな』と『私はあなたの言葉を着たい』で膠着。

第2ラウンドは、四階の話で、純が理解する前に矢晴が妄想に囚われて脱線。

第3ラウンドは、純の「なんでもする」に対して、絶対にできないだろう要求「殺せ」を突きつけて、純から撤回させた。矢晴の勝利。

第4ラウンドは、再度「約束する」と言い出した純に、純が言った『矢晴が契約書になる?』を逆手に取って『証明しろ』『約束と一緒に私達の醜さも認めろ』と、純ができてもできなくても、矢晴の勝利。

という感じにまとめてみる。あまりにも簡単にまとめすぎだけども。

軽くまとめるためにちょっと見直してて、【第17話】の純の背中に触れる蛸足が『仲良くなろう』って言ったのって、もしかして【第15話】の『死んだ後の約束までして仲良くしてくれるってさ』『死ぬまで孤独じゃなくなる約束だろ?』の「仲良く」だったりするんかな? と思ったりした。

そしてまた【第15話】の矢晴の言った『お前の本性気付かせてやる』は、果たされたのかな?


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