一人っ子
今回の話、純がえらいこと「一人っ子」をおしてくるな……と思った。
『一人っ子で赤ちゃんも抱っこしたことのない私が成人男性を抱えてみろ』と腰をいわすことを不安視するのも、わかるけど。たぶん平坦なところや極短距離なら運べはするだろうかな、と思うのは、矢晴を台車に乗せる、台車からソファーに移す、なんてのはできてるから。階段、長距離はやっぱり難しいだろうな、とも思うけど。
献本10冊配れるほど親戚いるなら、いとこやはとこを抱っこしたりおんぶしたりとかの経験くらいあってもよさげだけど、そこらもないっぽい。
ただ、多少なり人間を抱っこする、とかの経験があったとしても、暴れるかもしれない情緒不安定な矢晴を2階から1階へ、は転落のリスクが高すぎるので、純の判断は正しい。でも、抱っこして運ぶところも見たい。お姫様でもお米様でもいいから、抱っこ。小脇に抱えてくれても良い。
『私一人っ子だからケンカしたことないんだよ』というのも、疑問が残る。ケンカ自体は兄弟がいなくても、できる。親とケンカすることもできるし、友達ともケンカできる。
「一人っ子だから」というのはあまり理由にならないんだけど、わざわざそれを言ってしまうのは、実は「兄弟を作ってくれなかった両親」に不満があるからなのかしら? 純の父親は純がまだちいさいうちになくなっていて、病気で、ということだから純がもっとちいさいうちから闘病生活だったかもしれない。純が生まれて、純の父親の闘病生活の世話も有り、では、さすがにもうひとりなんてできそうにない。
思春期くらいには母親とケンカしててもいいんじゃ……? と思うけども、純の母親がいない場合(父より早く亡くなっているとか)にはケンカできるわけもなく。また存命としても母子家庭で育ててくれて父と死別しその世話で苦労してきた母親……と思うとケンカできそうにもないかな、と思える。
【第5話】で『もしかして先生って感情がない?』なんて失礼極まりないことをアシスタントに言われても、ものすごい形相をしつつ切り替えて『そんなことないよ!』と言ったのは、怒ってケンカして、という状況を回避するようなものだったのかな? と思える。
友達とケンカしたことがない、というのなら、純はこれまで「腹を割って話せる相手」がいなかった、ということにもなり。【第15話】での父と友人の話で、『そんな状況でキツい洒落を言い合える仲って』『私は心底……う』と、やっぱりこれは「うらやましい」だったのだろうかな、と思う。
純から見て「キツい洒落を言い合う仲」としても、話を聞く分には「後は任せろと言えて託せる、信頼関係で結ばれた友情」って感じがするわけだし。純にはそんな関係の人はいないわけだし。
【第11話】で『私一人っ子なので』『毎日なんでも話せる弟がほしかったなあって今でも思ってるんですよね』というのも純の本心だったろうけど。言い方が軽いので、「腹を割って話せる相手」というよりは「ただ身近にいつもいる相手」という感じに受け取れる。でもやっぱり純の言う「なんでも話せる」は腹を割って、ということだったろうな、と思うし、今となってはかなり切実な願いだったのだな、と思える。
矢晴は今回、『壊れる前にお互いにぶちまけて殴り合わなきゃいけないって思ったんだ』とお互いが「何事も隠さず、すべてをさらけ出し、本心を打ち明ける」関係になれるようにとしたわけで。それは純が一番求めてた関係でもあるんだよなあ、と思う。ただ矢晴は自分が純を好きっていう本心を伝えたのかはわかんないけど。
ゆくゆくは、兄弟とか友人・親友とかじゃなく、もっと親密な、伴侶として家族になれたらいいよね、純。矢晴はきっとなってくれるよ〜。
コメント