順番

 純はどうも順番がおかしいな、とか思う。

「人に欲情できる場合、他人のことが特別に見える。自分は人に欲情できないから、他人のことが特別に見えない」と考えているような。

ただ、純はこれまでに「恋愛的に好きな人」がいなかったんだろう、という気はする。好きだから、好きすぎて、欲情する、までに至らない。

眼鏡くんが初恋で、好きだという自覚もないうちに好きになった人がこの世からいなくなったというのが無意識レベルでトラウマになってて、人を好きにならないようにしている、というのはありそうなんだけど。

「人に欲情できないから、生涯孤独」というのもなんだかやっぱりおかしい気がするし。そもそもやっぱり純が『もう何も怖くない』と考えている純の怖いものがなにかわからないんだけども。

一生涯添い遂げる、となると、やっぱり友人では足りなくて、純は友人以上の関係や心の繋がりが欲しそうな感じはある。欲情したいという望みを持っているのだとしたら、肉体的な繋がりも欲しいのかな。「欲情できないから肉体的に繋がれない。だから、友人以上の関係性の相手をつくれない」と考えても、やっぱり順番がおかしいんよ、というところに着地する。

人間に欲情したことがない、ってのが、好きになって付き合った彼女はいるけど、いざ事に及ぼうとしたらうんともすんともで、彼女にフラレて、自分は人間に欲情できないんだと自覚した、というわけでもなさそうなのは、「好きになって付き合う」という段階からしてなさそうだなあ、という感じがするから。

純は「欲情するほど人を好きになったことがない」のかな、と思う。思いたい。

肉体的に健康で健全で、性欲はあるけど2次元にしか向かないから2次元で抜く。でも欲情するほど好きになった人間はいないから、人間に性欲を向けたことも欲情したこともない。機能的にとか性質的に、人間に対して欲情できる回路がない、のかどうかはまだ謎だよなあ、とは思う。


そういえば、純が『お互いの恥を晒し合ったんだ』という純のほうの恥は、純が「2次元でしか抜いたことがない童貞」ということでいいんだろうか。純がそれを恥だと思っていることのほうが不思議な気分になってしまうのだけども。


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