ニセモノと本物

 純は、自分が“ニセモノ”ということにコンプレックスを感じていたりするのかな? と思うと、純の漫画の作り方も、「他人の創作メソッドを寄せ集めて、ルーブ・ゴールドバーグ・マシンを構築しただけの“ニセモノ”」と考えているのかもしれないな、と思う。

【第6話】で『私はあなたの前では「たかが」を渡さず口だけ出す偽物なんかにならない』と考えているけど、【第17話】での矢晴から見た純は『この口先だけ薄っぺらが』『本物になってみろよ』と「口先だけの薄っぺらいニセモノ」と評価しているようで。

純の言った「なんでもする」は実際、「なんでも」はできないことで、純の言葉を借りて言えば「常套句の冗談」にもなるのかもしれない。本気で「なんでもする」なんてことはできないのに、「矢晴を安心させるために」「常套句で誤魔化した」とも言えて、それは、「守る気のない口約束でも、約束したら安心させることができる」と純が考えているということにもなるわけで。

そりゃあ、矢晴は怒るよね……。

純が『孤独じゃなくなる約束』にまつわる話をしたときに、矢晴は純に『自分で言ってておかしいと思わなかったのか…?』と切り込んでいくけど、純に理解させるには方向が違ったんだろうなあ、と思える。読んでて私も理解できなかったし。

本気で理解させようと思ったら、純が綺麗に包んだ思い出を解体して破壊することになるからかもな、とは思える。


純自身は“ニセモノ”じゃない“本物”になりたいと思っているかもしれないけど、純の言動がすべて“ニセモノ”になってしまうのは、純自身が自分のことを直視しないで誤魔化して生きてきたから、かもしれないなあ、とは思える。

とりあえず、子供時代の純に「骨を拾う(物理)じゃねえんだよ」と教えてあげたい。


純にとっては矢晴は“本物”なのかも? とは思うけど、矢晴自身はそう思ってはなさそうだし、むしろ自分こそが“本物”だなんて考えは傲慢だと拒否しそうではある気がする。けど、純には“本物”を求めちゃうのかな? それが矢晴の理想で、純が『私はあなたの理想じゃない』と言った理由なのかしらん? 純は“ニセモノ”だから矢晴の求める理想としての“本物”に成り得ないから、とか。

なにを基準に“ニセモノ”“本物”と判断できるのかはわからないけど。いつか、お互いがお互いにとっての“本物”になればいいんじゃないのかな。


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