起伏
矢晴の感情の起伏が激しいのはやっぱり病ゆえってところもありそうではあるけども、多少、気性が荒いところはありそうな気はしつつ、内なる情熱を作品に昇華してたから表向きの性格は穏やかだったのかしらん? とか思ったりもする。
12月11日の夜、純の寝室で、という数時間だけでも、純の寝室で純のベッドで一緒に寝る、という状況に落ち込みつつ、粗相したらどうしようという不安を抱えつつ。純に気になることを質問したけど、自分の聞きたかったこととはズレてしまっていてズレた質問にはズレた答えしか返ってこないから、矢晴はがっかりするけど。
純も矢晴の質問が、何度同じものだったり答えにくいものだったりしても、『何度も聞くと少し苦しい』なんて言わずに、何度でも同じ答えを返してやったらいいんじゃないの……? と思ったりもする。純にとって苦行になるけど。
その後、矢晴の“湯冷め”で純は初めて見る矢晴の異様な“湯冷め”に驚いて、矢晴の体温を取り戻そうと肌にまで触らせるのは、純の献身でしかないけど、矢晴の劣情を煽ってて。まあ献身なんてのは言い過ぎだけど、だいたい目の前で好きな人が辛そうだったら誰でもしちゃうようなことじゃないかな? とは思う。
こんな献身に対して、矢晴が純に背を向けて『……襲われるのかと思った……』って、ひどい言い草なんですけどー! 矢晴ー! とか思うけど、矢晴って、純とそうなりたいのかそうなりたくないのかわかんないわよね。矢晴の本心的には「純が無防備に肌を晒して触らせるから襲いたくなりそうでイヤ」とかだったりするぅ?
純がそれを受けて『生まれてから今まで2次元でしか抜いたことがないオタクだから!』と朗らかに言いよるけども、それを聞いた矢晴の顔よ……。
「3次元(矢晴込み)は対象外」って言われて超絶がっかりしたということでいいのかな。「純は童貞」って知ってがっかりしたとか? そこはがっかりポイントにはならない気がするけど。リードして欲しい気持ちなら童貞には期待できないからそうなるかも?
『けど』『矢晴が望めばなんでもするよ』を聞き間違いかと思ったのは、矢晴に対して真摯に接してくれる純が、そんな「できもしないことを言う」ことが疑問だったのか、自分の欲望だけを反映したような言葉だったから純が言う訳がないとでも思ったのか。聞き間違いだと思って振り向いたら、エロカッコイイ顔して煽ってきやがる。
純はここで『ドヤ顔して気持ち良くなってた』らしいわね。矢晴のためになんでもする自分、というのに酔ってたのかしらね? エロカッコイイ顔というよりも、自分に酔ってる顔なのかしらね。自分に自信がある顔はそれなりにエロいと思うから、やっぱりエロカッコイイ顔になってたんだろうかな。
ここで純が“約束”の話とお父さんと友達の友情の話を持ち出して“慈愛”がどうのと言い出さなければ、矢晴はそのまま純を押し倒していたんじゃないかな、欲望のままに。ぐるぐるしてるし。
純の話しぶりからはやっぱり憧れとか幸せそうとか羨ましいという感情が感じられないんだけど……? 死ぬまで仲良くしてくれる人、死んだ後の約束までして仲良くしてくれる人、という生涯の友、というのは得難く大事なものかなあ、とは思えども。でもやっぱり、純の話しぶりからは「友達に騙された可哀想なお父さん」とか「あんな約束を守らない人を拠り所にしてた可哀想なお父さん」にしか聞こえんのだが。「死にかけの心の弱ってる人間は嘘でも安心する」とかいう成功体験みたいなもんだったりするんか……?
矢晴に純の話がどう聞こえてたのか、知りたい。話聞いて飛び起きちゃうくらいに純に対しての不信感が爆発した感じはするけども。怒りのほうが先に立ってて、ちょっと論理が破綻してた感じはしてしまう。
そんでもって、純の想定外の反応。『古印先生』『私』『それがいいな』にびっくりしてまた怒りを募らせての非力なパンチに『違うなら違うって言えよ!』からの、純の話に対しての絶望みたいな表情。
矢晴が受け取った純の『それがいいな』は「支配欲と執着心で性欲」なのか「汚い欲望を蓮華座に乗せてる」あたりになりそうだけど、純にとっては「お前の気持ちと行動は性欲だ」と言われて嬉しくなっちゃった感じかな? とは思う。「それがいいなって何がいいんだよ!?」って混乱はものすごくする。
純はやっぱり古印葵に狂い過ぎだし、『私はあなたの言葉を着たい』には、矢晴の言葉の通じなさ、をすごく感じてしまうのだけども。
ここらへんが、矢晴が『壊れる前にお互いにぶちまけて』『殴り合わなきゃいけないって思ったんだ』という瞬間であるのかどうか……。でも、ここらへんでふたりの関係を、というか矢晴が純をどう見てるのかとか、純自身の考え方とかを整理しようとしてた感じはあるのかな? 純が明後日に能天気で、矢晴の激情を刺激したけども。
純が自分自身の内面を直視しないことと自分の言葉で考えようとしないことを責めてる感じかなあ? 四階のことなんぞ引き合いに出さなくても『けど 矢晴には攻撃的にならないよ』に対して、「どうしてそう言い切れる? 未来はわからないだろう」みたいに切り込んでいってもよかったんじゃ……? と思ってしまうのは、引き合いに出された四階がボロクソ言われてて可哀想だからなんだけど。
でも、ここで四階のこと引き合いに出すから、純の明後日な能天気さが出てきて、古印先生やっぱりすごいが強化され、矢晴の激情に拍車がかかり、矢晴はパニックに……だから、矢晴が話の方向もうちょっと考えてたら、純の明後日さとか出てこなくて、もうちょいまともに話せたかも……? あれ? 矢晴が悪い……?
パニックになってる矢晴を見て純が薬の飲み忘れかと思い至り、とにかく薬を飲ませて思考に呑まれたパニックを落ち着かせようとして薬を持ってこようとしたけども。
『言ってくれてありがとう私はなにがあっても矢晴を攻撃しないって約束するよ』の『約束だ!? また弁護士通して契約書か!? 馬鹿にするな!』と、“約束”という言葉にキレられてんのに、後でまた『私は君の言うことを聞かないけど』『私は君を見捨てない』『約束する』の『約束するならあれやれよ』って、純は学習しねええーー! って気分にはなった。矢晴がキレてるポイントを純が把握してないってことになりそうだけど、純の“慈愛”の話聞いたら、純の“約束”は矢晴の望む“約束”じゃないもんな。
“約束”にキレてる矢晴を威圧して大人しくさせて、理性的に状況を分析して自分を反省して部屋を出ようとする純を矢晴が引き留めて。
やっぱりここの矢晴の泣き顔はかわいくてたまらん。
めちゃくちゃ泣いてて過呼吸になりながらも純に話をしようとする矢晴と、話を聞いてない純と。
それでも純は、矢晴が純にひどいことを言ってしまったことを気に病んでるかもしれないし、矢晴が『今日しゃべったことも全部後悔して眠れなくなって最悪の記憶になって死ぬまで忘れないんだ』と言っていたこともあり、矢晴の気を落ち着けるために『あのね』『私は傷ついてない』と話したのかな、と思うんだけど、言ったからいいってもんじゃねーんだよ、ってくらいさっさ立ち上がって行こうとするのが純、この野郎、って感じ。
矢晴の話してる内容からは頓珍漢な言葉にはなるけど、純にとっては現状分析した精一杯かなー? って気もする。それはそれで、矢晴にかける言葉としていいことだったろうけども、だから、そうやって話してくれるんなら、矢晴が泣き止むまでじっくりそばにいてくれよ、もう。適当にあしらってんじゃねえ! お前のベッド横の引き出しのハイチュウは全部矢晴に食わせちゃったのかよ、他に飴ちゃん入れてねーのかよ、こんちくしょうめー。
矢晴は純のズボン脱がさんばかりの勢いで掴んで引き留めて、薬は飲んだと言うけれど。本当に飲んだのかどうかは定かではないが。
矢晴に『殺してくれ』って言われて、理路整然と考えているようでいてパニックになってる感じの純がけっこう好きだけど。過呼吸で苦しそうだから、なのか矢晴を支えて歩かせるという方向に思考が全く向いてないのがちょっとおもしろい。「一緒に1階に行こう」って一切言わないもんな。抱きかかえて連れて行くのは無理、置いていくのも後悔しそう、どうしよう、からのとっちらかった脳内会議がいいわあ。ここらへんの純の思考と脳内会議は矢晴の知らんことだけど。
実際、ここらで矢晴が直接言ってるのは『骨を拾う て言った』『約束守れよ』『この口先だけ薄っぺらが』『本物になってみろよ』『殺せ』『殺せ』『今すぐくびっ』『を絞めろ』『お前のせいで私は』『気持ち悪くなった』『なんでもする て言った は誰 だ』になるのかなー?
うずくまった矢晴の『たのむ』『なにも見たくない』『いやだ』『見たくない』『こんなにバカになった』『私を見たくない』からの『だから』が蛸足の向こうからのびる矢晴の手で、合流するけども。
ここで純は、聞き取れた矢晴の言葉と矢晴の行動から分析して矢晴の気持ちをわかった気になってるけど、わかってるのかどうか……と思うくらいにはしゃいでて、蛸足握ってたかと思ったら、自分の両手が矢晴に掴まれてた。ここのシーンすごい好き。うまい。
美人な矢晴に手を掴まれて『約束を』『果たせよ』って言われて『現実逃避してる場合じゃない。』って正気に戻る純はかわいい。ここらで矢晴は過呼吸も治まって、どうにでもなれって思いながら、「殺せ」と迫りつつ誘惑している、ということでいいんだろうかな?
妖艶な矢晴の誘惑に負けてるのかどうにか踏みとどまったのか、純が矢晴の関節キメて、純は矢晴に溺れなかった、ということにはなるけど。
部屋を出ようとした純を引き留めてからこっち、矢晴は純に「殺せ」と迫りながら誘惑してきた、ということになる。四階の話をして気持ち悪い自分を直視してパニックになり、どうにでもなれと思って「殺せ」と迫り誘惑する。純は矢晴に「殺せ」と言われてパニックになり、誘惑に乗りかけて自分の矢晴に対して良くない性格を直視したことにもなろうかな。
古印葵に狂ってる純とか好奇心や自分がはしゃぎたいだけの純とかは、矢晴にとってあんまり良くない感じはあれども、そこらも含めて純ではあるし、純の後に引きずらない性格はそれはそれで、引きずりすぎる矢晴には良いんじゃないかな? とは思える。純が気にしないから、矢晴もこれは気にしないでも大丈夫、と思えそう。
結局、矢晴の「殺してくれ」という望みを、純は「自由意志じゃないなら従わない」と『矢晴が望めばなんでもするよ』と自分で言ったことを撤回することになり、『私は君を見捨てない』『約束する』と言う。ダメ押し的に『約束するならあれやれよ』と矢晴に迫られ、この子たちは結局、印鑑捺せたのか、それ以上をしてしまったのか、とかなにもかもが謎のまま。
朝。
穏やかな朝にスズメ。湯気の立つカップ。ソウイウコトがあったんですね! と暗喩する定番すぎる朝チュンに夜明けのコーヒー(純が矢晴にコーヒーを用意するかどうかは置いといて)だと、やっぱりソウイウコトがあったんですかね……? それって結局純が矢晴の誘惑に陥落したということにはなりゃしませんかね……? とか思ったりもするけども。え? でも、純、デキルの?
夜の剣幕が嘘のように穏やかな矢晴が純に「シヴァ・アンバーの3巻冒頭が好きだ」と言い、昨夜の顛末を謝って、ふたりの関係を問われ答えず、純との今を寿ぐ矢晴が素敵よねえ。
夜は、がっかりして、激昂し、絶望して、落ち着いて、激情にかられ、パニックになり、純を引き留め、めっちゃ泣いて過呼吸になり、純にしがみついて、殺せと迫り、誘惑して、ダメ押ししながら満足した表情で。
翌朝は一転して穏やかで。
ここまで感情を上下させたの、純の家に来て初めてなのかなー。
これ以前に矢晴が激情にかられたのって【第4話】の『何様だよあんた!!』あたりだけど。純を説得して干渉をやめさせようとしてたけどだんだん心情の吐露になって泣き出しちゃったし。……ここの矢晴の涙で純が矢晴の“魔術にかかった”とか言っちゃったりする……? とちらっと思った。またって言うからにはそれ以前にもあるんだから、どこだよ? と気になってる。
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