命あっての物種

 純は、「命よりも重い漫画はこの世にない」と言うから、漫画と命の究極の選択、となったら命を優先させるということにはなるんだろうなと思う。

現に、古印葵の漫画<矢晴の命 という選択でもって、矢晴を療養させているわけだから、「漫画を描かせるために矢晴を養っている」ということではない、けど、矢晴は純の下心をそう勘繰ってるんじゃないのかな? という気はしてしまう。

同居21日目の『形にならないものに命はかけられない』『だからもう漫画家にはならない』と言った矢晴に対して、黒バックで顔を歪めていた純を考えるに、「漫画に命かけるなんて!」という思いがあっての顔なのかなあ? と思ったりもするけれど、ここも難しいね。

切れた縄は、純が矢晴の死をぶっ千切った、風には思える。なによりも生きていることが大事で、「漫画を描こうが描くまいがどうでもいいから生きていろ」と言っている。

矢晴が漫画に命をかけて、それで矢晴が命を落としてしまうのならば、純は古印葵の漫画は諦めるんだろうなあ、と思うけど、矢晴は漫画を描かないと自分の命を続けられない人のようでもあるから、漫画を描けなくなってこうなって……と思うと、漫画を描かせていいものかどうか……、純にとっても難しい選択になってしまうな。

と、考えると、矢晴は「漫画>命」で、純は「漫画<命」という致命的な価値観の相違がある気がする。

そこが、純が古印葵の漫画を分析できない所以だったりするかしら?

矢晴にとって「命がけで描く」であって「命よりも漫画が大事」ではないだろうから、最低限の命は守りそうだけど、けっこうな無茶してるからなあ……。矢晴が漫画に削り込んだ命を、純が実生活で支えて愛で満たしてくれたら、最強ね。


純はわりと最初から「生きててくれればそれだけでいい」みたいなところがあったもんねえ、と【第4話】【第6話】をちらっと読み返したんだけど、やっぱりこう「自分のそばで生きてて欲しい」って気持ちを伝えるに『一人ぼっちで死なないでください』『あなたの亡骸は私が拾いたいんです』『死ぬまで孤独じゃなくなる約束しませんか?』は、怖いわ〜〜〜〜。漫画よりも命が大事って純が言った今読み返しても、矢晴の命が危ない気がしてしまう……。



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