わがままとプライド

 純ったら、華麗に矢晴の地雷踏みよってからに……。そんなにズケズケと矢晴のことを解き明かしよったら矢晴が意固地になっちゃうじゃないか……。

純にとっては、プライドはいらないもの、みたいな。それがあるから自分を飾って本心が言えなくなる、という感じで。矢晴はどうにかプライドを保とうとしてるから、純の言葉が痛い。

純は“わがまま”と言うけれど、それは「自分優先」で他人がどう言おうとも自分を貫く、という強固な意志が必要な気がするわけで。そんな強固な意志は現状の矢晴は持ち合わせてないじゃない……。

純が書いたランキングも、「自分大好き」にあふれてるし。いやまあ、他の人間に欲情しない子だから、自分一番にしかならんけども。自分の好きなこと書き出したランキングだし。

矢晴はこれまでの人生で、そこまで「自分を貫く」ということは出来てないんだろうな、とは思える。『使命感から逃げたい人生だった』と言うくらいだし、自分を出せずに逃げ出して、自分の好きな漫画に没頭してどうにかこうにか細々やってたのが実を結んだものの、それを自ら投げ出してこんな状態に……。いやほんと、なんで矢晴、B誌に行っちゃったのよ……よよ。

いやでもなんだ、“わがまま”という言葉にすでに齟齬がある気がするんだが。

純はたぶん、「矢晴がしたいことを矢晴がしたいままにすればいい」ってことが言いたいんだと思うんだけどもね。ただそれも、純の財力が矢晴の生活を保証する必要があって、矢晴が自分の稼ぎだけで生活しなくちゃならないとなれば、生活を維持するのが第一になって、やりたいことがやれない状態になるだろうなあ、とは容易に想像できちゃうんだけど。

純は売れっ子で生活の心配が一切いらないから、そんなことが言えるんだよ、って時点でもう、ふたりの間の溝が深すぎ。

純は『わがままはその点見え方を問題にしない』『両想いになるためならなんだってする』『創作にだって人にだって同じだよ』と言うけれど、矢晴は自分の意見が言えなくなって描けなくなって、創作と相思相愛じゃなくなったという現状だから、すごいキツイこと言いよるな……としか思えんのだが。

ついでに、純のその言い方だと、人相手にして相手の気持ちを振り向かせるとかよりも、自分の欲望だけ満たしたいだけには思えるわけで。

はーーー……、そりゃもう、矢晴にあんなこと言われますわ……。


君たち、価値観のすり合わせより先に、頭の中の辞書をすり合わせしてこようよ。ね。

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