生来の福田矢晴と古印葵

 純が惚れ込んでいるのは、古印葵の漫画ではあるけども、それを生み出す古印葵=福田矢晴にも相当惚れ込んでいると思う。

純が、矢晴のことを『古印葵福田矢晴は』『思っていたより饒舌だ』『あんなに饒舌なのに』『言葉を削って画で伝える漫画を描くのはそういう性格だからか』と【第13話】で語り、『古印先生の作品ってセリフが洗練されてて必要最小限で全部がちゃんと話にハマってて空気ができあがってて…』と【第3話】で褒めている。

だから、純が惚れ込んでいる古印葵の漫画の言葉部分は、矢晴が煮詰めて固めて厳選した矢晴の言葉のエッセンスになっているかと思う。

漫画のなかに描かれない言葉は画に込められていて。

そして、たぶん、普段から矢晴はかなり言葉を選んでしゃべる人でもあるかと思う。ただただ思うままに言葉を垂れ流すのではなくて。

そして純は『創作者のフィルターを通って濾過されたものが作品のこだわりとして表れる』『私は矢晴のフィルターが好きだよ』と、矢晴のフィルターを通して古印葵として出力されるものが好き、と言っている。

純は、【第15話】で寝室に向かった時には、「矢晴は薬を飲んでいて症状がマイナス20くらいにはおさまっている状態」と思っていただろうから、矢晴が純に対して言ったことを、「ある程度まともな矢晴=古印葵の言葉」として受け取ってしまったし、自分が一番求めている言葉が飛び出してきて、嬉しくて舞い上がってしまったし、という状態だろうかな。

矢晴が薬を飲んでいないことを思い出して、今の矢晴が「症状がマイナス100の状態かもっとマイナス」と気づき、「矢晴のフィルターを通って濾過されたものでない原液の言葉を古印葵の言葉として受け取り喜んでしまった」という感じで反省モードに入っているかな、と思う。

もともと矢晴のなかにはかなりいろいろなものが氾濫していると思う。それを、矢晴自身が出力する時に言葉を選んで表現できている状態が、生来の福田矢晴になるかと思う。そこからさらに言葉を削って表現したものが古印葵なのだから、純が惚れ込んでいる古印葵はあの寝室にいなかった、ということになるかな。

えい、もう、純のおバカ! でも気づけてえらいぞ!



コメント