支配
矢晴は「純に支配されている」と思っている。
だから、それに合致するようにあらゆる事象や純の言動を組み立てて、論理展開しているように思うのだけど。
私は過分に純に感情移入しているから、純のやっていることが“支配”には見えていないのだけども、矢晴から見れば“支配”なのかな? と、“支配”寄りに考えてみる。
今の矢晴は、純に生活の全てを賄われている状態に依存して生かされている、と思っている。だから【第14話】で『好きでもない作家に依存しなければならない現実に私の心が耐えられなくなるだろう』と考えている。
『なにをしても怒られない』〜『いずれ思考も放棄するだろう』と、純の行動が矢晴の思考を奪っていくと考えているように思える。純が矢晴を甘やかし『逃げられないように堕落させ』、自立思考のない状態に陥らされて、純の意のままに動かされる、生かされる、というのは、確かに“支配”なのかもしれない。
『赤子のように世話された』り、『えらい』と褒められたり『ハグしに来なよ』と言われたり、純が矢晴を子供扱いしているように思えるから『なあ……私のこと幼児だと思っているのか? お母さんごっこか?』と問う。そこから【第15話】の『お前はこっちの要求次第でどう操るか考えて』『母性ぶって支配しようとしているんだよ』に至るのかな? “慈愛”という語も「親が子を慈しむような愛」という意味だし。
純の話す父親とその友人の話、純が『心底私は……う』と言い淀み、『幸せそうで』『憧れたんだ』と、父親とその友人の関係に「憧れた」と言うのは、「父親とその友人のような関係に、矢晴となりたい、理想の関係」という受け取られ方をしたのか、矢晴は『相手を思い通りに……理想の一部にしたかったって素直に言えよ』と言う。
ここは急に論理が跳ねたな、という印象だったけども、まあこねくり回せば納得できんこともない、と思い始める。
純の理想が『死ぬまで孤独じゃなくなる約束』をできる父とその友人のような関係、としても、純と矢晴の出会いからこれまでの期間を考えても、馴れ初めを考えても、「若い時分から意気投合し長い年月で育まれたであろう友情」には到底なり得ない。ただたんに、その約束をしたからといって、理想は叶えられないが、純は矢晴と『約束』をすることで、「理想の関係になっている」と思い込んでいるフシはある。
純の理想に合致するように、矢晴を束縛し、思考を放棄させて『思い通りに』『理想の一部にしたかった』、になるかなあ。
『自分と相手を動けないほど縛らなきゃ成立しないって』『分からないのか?』が、若干、私には分からなくて。いや、なんとなくわかるような……? でも、わからないな……。いやまあ、確かに、お互いべったりじゃないと、相手の望みを叶えることも出来ないし、相手になにされてもいいと身を捧げることもできないだろうけど。
純が矢晴を支配している、というのに違和感を持つのは、純が矢晴に支配されたがっている・すでに支配されている、と思うからだけども、矢晴に支配してもらうためには、矢晴が純を支配してくれるように純に縛り付ける必要があるのか……と、思い至る。
純が矢晴を支配するために縛り付ける、でなくて、純を矢晴が支配してくれるようにするために縛り付ける。だから、まず、矢晴を支配して、純から逃げられないようにする。
といったところになるのかなあ?
と思っても、それが純の行動に顕れているとしても、純自身は無自覚なんだろうなと思うけども。純の無邪気で無自覚な“支配”を矢晴が純に突きつけたとして、
やっぱり『もうそれ性欲だろ』は飛躍し過ぎよー? 矢晴ぅー。って気分にはなる。
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